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『ちゃっちゃら〜〜〜ん♪さぁて皆様お待ちかね!やっちゃいましてよ《選択》タイム!!!アドベンチャーゲームブックと言えばこれ!選んだページで行き先が変わる!エイトの運命のショーターーーーーイムッ!!!』
「おい!頭の中で騒ぐなって、もう何度言ったら分かるんだよっっっ!!」
お嬢様たちの馬車を見送り、ついでにこのダンジョンの様子を見ておくか…と探索を始めたらこれだ。
さては出番を待っていたな。
『さてエイト、あなたはアドベンチャーゲームブックのページを選択し、先に進まなければなりません。どれを選びますか?』
空中にスクリーンが浮かび、選択肢が表示された。
―右の扉を開ける 90ページへすすむ→
―真ん中の扉を開ける 91ページへすすむ→
―左手の扉を開ける 92ページへすすむ→
「ちょっ!なんだこれ!?」
こんなページ並びってありなのかよ。むむむ。さては前回、アドの作戦を読まれたことの意趣返しだな。
「なあ、アド。選ぶ前に質問なんだけど、この選択肢ってダンジョンでしか出ないのな?それって何か理由があるのか?」
『本の仕様です』
「……身も蓋もなさすぎる説明をありがとうよ。」
さて、今回は扉を開けるタイプか。ってどれを選べばいいのか検討もつかない。もう鉛筆でも転がして決めるか。
「どれにするか決めるのに制限時間は無かったよな?」
『ないですが、罠にかかる恐怖を先延ばしにするだけでは?』
「ひとこと多いんだよ…って罠にかかる前提かよ!」
うー、こうなったらもう右からだ!
「アド、90ページだ。」
『畏まりました。ではエイトを90ページに転移します』
俺は右手方向に現れたドアのノブに手をかけ、ゆっくりと回した。
扉の向こうは酒場のようだ。でも…あれ?ここ見覚えあるような。それにあの茶色のポニーテールの女の子は……
「あ!エイトさん、夕食ですか?今日はポトフですよ。」
アンナ!?ということはここはムユツミなのか!?
いや、でもここはムユツミから遠く離れた世界の北部だ。
「あ……いや、また来る。」
ニコニコしている彼女にそう声をかけて、後ろ手に扉を閉めた。どういうことだ?
「なあ…アド。今のは間違いなくムユツミの宿だったよな?」
『はい。先程のは振り出しにもどる扉でしたね。入っちゃってれば面白かったのに』
「うぇぇ!?また始めからなんてお断りだから!!!」
ほんっと性格悪い!でもこれが今回の罠ってことでいいのかな。なら後は楽じゃないか。
俺は呼吸を落ち着かせて、次の扉について考えた。
「アド。次は91ページだ。」
『畏まりました。ではエイトを91ページに転移します』
その扉の向こうは窓も扉も閉ざされた密室。
その部屋の影が濃く落ちる場所から幼子が姿を現した。
彼女はとても愛らしく、花がほころぶような無垢な笑みを浮かべ、弾むような足取りで俺に近づいてきた。
彼女が俺を見上げて小首をかしげた瞬間、その瞳はキラキラと輝き、まるで大好きなおもちゃを見つけたように、甘やかに語りかけた。
「おにぃちゃ。ねんね、ねんねよ。」
「……っ、な……!?」
俺の膝が、がくりと折れた。抗いがたい睡魔。それは存在そのものを虚無の底へと引きずり込み、意識を強制的に塗り潰す。どろりとした闇の抱擁だ。
幼子はさらに一歩近づき、崩れ落ちた俺の頬にそっと手を添えた。その掌は驚くほど柔らかく、温かい。
彼女は慈しむように、とろけるような笑顔で繰り返した。
「おにぃちゃ、ねんね。……ずっと、ねんね。」
俺の意識は途切れ、そのまま深い闇の中に落ちていった…
〈終〉
「…ふぁっ!いや、なんかどこかで見たようなこの話!?」
『一体なんのことですか?それよりよく寝ていましたね、エイト』
俺はまたダンジョンで突っ伏していた。あー地面が冷たい。こんなところで寝てると風邪ひくわ。
「アド!罠がふたつ有るなんて聞いてない!」
『ひとつだと言ったことはありませんよ?』
確かにそうだ。アドは一度も罠はひとつだなんて言ったことはない。
起き上がった俺は地面にあぐらをかいて座り、仕方なくまた呼吸を落ち着かせるのであった。




