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page.73

『ちゃっちゃら〜〜〜ん♪さぁて皆様お待ちかね!やっちゃいましてよ《選択》タイム!!!アドベンチャーゲームブックと言えばこれ!選んだページで行き先が変わる!エイトの運命のショーターーーーーイムッ!!!』


「おい!頭の中で騒ぐなって、もう何度言ったら分かるんだよっっっ!!」


お嬢様たちの馬車を見送り、ついでにこのダンジョンの様子を見ておくか…と探索を始めたらこれだ。

さては出番を待っていたな。


『さてエイト、あなたはアドベンチャーゲームブックのページを選択し、先に進まなければなりません。どれを選びますか?』



空中にスクリーンが浮かび、選択肢が表示された。



―右の扉を開ける 90ページへすすむ→

―真ん中の扉を開ける 91ページへすすむ→

―左手の扉を開ける 92ページへすすむ→



「ちょっ!なんだこれ!?」


こんなページ並びってありなのかよ。むむむ。さては前回、アドの作戦を読まれたことの意趣返しだな。


「なあ、アド。選ぶ前に質問なんだけど、この選択肢ってダンジョンでしか出ないのな?それって何か理由があるのか?」


『本の仕様です』


「……身も蓋もなさすぎる説明をありがとうよ。」



さて、今回は扉を開けるタイプか。ってどれを選べばいいのか検討もつかない。もう鉛筆でも転がして決めるか。


「どれにするか決めるのに制限時間は無かったよな?」


『ないですが、罠にかかる恐怖を先延ばしにするだけでは?』


「ひとこと多いんだよ…って罠にかかる前提かよ!」



うー、こうなったらもう右からだ!


「アド、90ページだ。」


『畏まりました。ではエイトを90ページに転移します』


俺は右手方向に現れたドアのノブに手をかけ、ゆっくりと回した。


扉の向こうは酒場のようだ。でも…あれ?ここ見覚えあるような。それにあの茶色のポニーテールの女の子は……


「あ!エイトさん、夕食ですか?今日はポトフですよ。」


アンナ!?ということはここはムユツミなのか!?

いや、でもここはムユツミから遠く離れた世界の北部だ。


「あ……いや、また来る。」


ニコニコしている彼女にそう声をかけて、後ろ手に扉を閉めた。どういうことだ?


「なあ…アド。今のは間違いなくムユツミの宿だったよな?」


『はい。先程のは振り出しにもどる扉でしたね。入っちゃってれば面白かったのに』


「うぇぇ!?また始めからなんてお断りだから!!!」


ほんっと性格悪い!でもこれが今回の罠ってことでいいのかな。なら後は楽じゃないか。

俺は呼吸を落ち着かせて、次の扉について考えた。


「アド。次は91ページだ。」


『畏まりました。ではエイトを91ページに転移します』





その扉の向こうは窓も扉も閉ざされた密室。


その部屋の影が濃く落ちる場所から幼子(おさなご)が姿を現した。

彼女はとても愛らしく、花がほころぶような無垢な笑みを浮かべ、弾むような足取りで俺に近づいてきた。


彼女が俺を見上げて小首をかしげた瞬間、その瞳はキラキラと輝き、まるで大好きなおもちゃを見つけたように、甘やかに語りかけた。


「おにぃちゃ。ねんね、ねんねよ。」


「……っ、な……!?」


俺の膝が、がくりと折れた。抗いがたい睡魔。それは存在そのものを虚無の底へと引きずり込み、意識を強制的に塗り潰す。どろりとした闇の抱擁だ。


幼子はさらに一歩近づき、崩れ落ちた俺の頬にそっと手を添えた。その掌は驚くほど柔らかく、温かい。

彼女は慈しむように、とろけるような笑顔で繰り返した。


「おにぃちゃ、ねんね。……ずっと、ねんね。」


俺の意識は途切れ、そのまま深い闇の中に落ちていった…








〈終〉







「…ふぁっ!いや、なんかどこかで見たようなこの話!?」


『一体なんのことですか?それよりよく寝ていましたね、エイト』


俺はまたダンジョンで突っ伏していた。あー地面が冷たい。こんなところで寝てると風邪ひくわ。


「アド!罠がふたつ有るなんて聞いてない!」


『ひとつだと言ったことはありませんよ?』


確かにそうだ。アドは一度も罠はひとつだなんて言ったことはない。


起き上がった俺は地面にあぐらをかいて座り、仕方なくまた呼吸を落ち着かせるのであった。


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