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俺はチャーションの街道から森へ入り、南西の方角にある湖を目指して歩いていた。
ここから湖までは約20キロか。今は正午くらいだから、歩いても夕方には岸辺に着けるだろう。
しかし、俺にはハクがいる!
俺はエルフの王から貰った指輪を左手の中指にはめた。昨日と同じように、目の前の空間がぐにゃりと歪み、エルフのユニコーン、白い馬体のダイハクリョクが飛び出してきた。
「ハク、1日ぶり!」
俺は顔を押しつけすりすりしてくるハクに、少しよろめきながら声をかけた。さすがはばん馬サイズのユニコーンの力だ。体重は1トン近くはあるんだろう。
俺はさっそくマジックバッグからリンゴを取り出しハクにあげた。ぶるるといなないて、嬉しそうにひとくちでパクリだ。おー豪快豪快!
もうひとつあげてから、俺はハクに乗ってみることにした。
ハクの背中の上部は、俺の頭のてっぺんとほぼ同じ高さなので、よじ登るのはちょっと無理だ。
エルフのムルーアに言われたように、風魔法の高速移動の威力を抑えるようにして、その背中に軽くぽんっと飛び乗ってみた。
うわー、高いな!視点の高さが全然違う。
温かいハクの背中が心地いい。昨日は興奮して気が付かなかったけど、よく見ると、角とたてがみは銀色にキラキラ輝いている。
普通に乗るにはさすがに背中が広すぎて、かなり股を広げないとダメなんだな。1日1時間しか出てきてくれないけど、乗って移動ならそれぐらいが丁度いいかも。
あ、足元の草をもぐもぐし始めた。可愛い。
「ハク、悪いけど、この方向に真っ直ぐ歩いてくれるかな?湖に行きたいんだ。」
ハクは分かったというように鼻を鳴らしてから歩き始めた。
「おおっ、揺れる!」
パッカパッカと、大きな身体を揺らしながら、ゆっくりと歩いていくハク。これ楽しい!
俺は興奮しながらも気がついた。
結構高いところにいるのに、木々の枝が当たってこない…?
まるで白銀のエルフのファイエルがエルフの森の中を歩いていた時のように、周りの木々が俺たちの道を開けるように下がってゆく。さすがは植物に愛されるエルフのユニコーン、ってとこか。
しばらく歩くとまたハクは立ち止まり、足元の草をもっしゃもっしゃし始めた。俺はそのマイペースさに笑いながら、こんなのんびりしたのもいいなと思っていた。
遠くに聞こえる鳥の声、木々の葉擦れのさらさらという音、ハクの蹄の音。穏やかだな…癒される。
ハクの背中でたてがみに顔をうずめてもふもふしたり、首に抱きついて、顔をぺったりつけてみたり。はー落ち着く。背中でシャリーンのおにぎり食べてみたりして、ハクの歩く音をのんびり聞いていた。
しばらくしてハクがいなないた。そろそろ帰るよってことか。ハクといると1時間が早いなーと、ふと顔を上げると、森が開けてきたのか前方が明るくなってきていた。
え…これってまさか…もう森の出口が近い?
走るどころか時々止まっては、もぐもぐ草食べたりしてたのに!?
「ハクは凄いな!こんな早く着いたよ、ありがとう!」
ぴょいと飛び降りて、お礼にリンゴをもうふたつあげておいた。「また明日、会おうな。」とお腹をぽんぽんすると、ハクは嬉しげに顔をのばしてすりすりしてきた。
ハクを帰して、うーんと伸びをした。
さて、もう少し歩いたら湖だ。
俺は初めて見る、その湖の光景はどんなものだろうとワクワクするのだった。




