↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/180

page.68

「うぅーん!」


俺は起き上がり大きく伸びをした。

昨夜はアドに気持ちを吐き出せたことで、ちょっとすっきりしたかも。


よく考えたら、エルフの姫と聖女の加護の件を立て続けにやったんだし、そりゃ疲れも出るよな。

このギルド以外は何も無いようなチャーションに長居をしているから疲れているのかもしれない。ここでの用は終わったんだし、とっとと移動すれば良いんだよな。


よし!俺は両頬をぱちん!と叩いて気合いを入れた。

なんとか馬を手に入れて、湖にも行って、他の国に移動しよう!



ということで、とりあえず今日もギルドへ出向いた。もう経理局には用はないので、普通にギルドの窓口にだ。


「馬…ですか?そうですねぇ、この辺りでは難しいと思います。」


申し訳なさそうに言うマリーシェ。そう言うなら仕方がない、他を当たろう。と言っても、ここにはもうひとりしか知り合いがいない。


ということで、表通りのシャリーンの店に行ってみた。


「馬ですか?この都市は歩いてでもなんとか回れるので、街中で馬を使っている人はまず居ないし、クーリガルドに用があって馬で来た人はその馬で帰りますものね。」


こちらもハズレか。まあそうだろうな。


「そうか。じゃあやっぱり移動してから探すしかないか。悪い、じゃました。」


そう言って店を出ようとした時、シャリーンがいきなり叫んだ!


「あーーーーー!そうだ!!」


「うわっ!何いきなり大声出して!!」


驚く俺に、ずいっと顔を近づけるシャリーン。

近い、近すぎるってば!


「エイトさん、あれ出してください!この間の、白銀のエルフの王からいただいたというアイテム!」


その剣幕に驚きつつ、俺は先日王から貰ったアイテムを机の上に並べた。


指輪や腕輪が数個、短剣、鏡、スカーフみたいなものもあるな。帰り際にあれもこれもと渡してくれて、説明を聞く暇も無かったんだった。


シャリーンは彼女のエルフ語研究ノートを傍らに置き、それらをひとつひとつ確認し始めた。


「これだわ!」


彼女はひとつの指輪を取り上げた。

それは、俺には読めないエルフ語が周囲に刻まれた、なんだかゴツゴツして無骨な感じがするものだ。


「この指輪がどうしたんだ?」


シャリーンは興奮しながら話し始めた。


「エイトさん、この指輪をはめるとね。なんとユニコーンが呼べるのよ!」


「ユニコーン?…って、角が生えた馬のことか?なんかマンガで読んだことがある。」


「まんがって?いや、それはともかく、ユニコーンですよ、ユニコーン!エルフが乗る馬!!…ただし、この指輪に刻まれている説明によると、どうやら1日に1時間しか人間界に具現化できないみたいですけど。」


そのエルフ語ってトリセツなのかよ!?

それに、1日に1時間?何だそりゃ。まあでも居ないよりずっとマシだ。


それにしてもユニコーンか。

いかにもファンタジーで、なんだかドキドキしてきたな。


「よし、シャリーン。一緒に来てくれ!そのユニコーンを見てみようじゃないか!」




とりあえず、俺たちは街の外れにある森まで移動した。


ここは、先日俺を迎えに来たファイエルが、エルフの世界への入り口を開けていた場所に近い。なんだかそういう地点のほうが、この指輪を使うのに良い気がしたからだ。


「エイトさん。早く!早く!その指輪をはめてみてください!!」


興奮するシャリーンの目の前で、俺は恐る恐るそのゴツゴツした指輪をはめてみた。

すると目の前の空間がぐにゃりと歪み、その中から、何か白いものがぬうっと現れてくるのが見えた。


馬だ!ツノが生えている!


しかし…なんというか……デカい!足ぶっとい!


馬の背中までが、俺の身長くらいあるんだけど。

シャリーンもその大きさに、目を丸くして見つめている。


ユニコーンって、サラブレッド的なすらりと細い馬というイメージだったんだけど、この馬はなんというか……

これは、あの、あれだ!北海道にいるばん馬的な!



そのデカいユニコーンは、俺を見ると顔をすりすりして甘えてきた。顔がデカいから目も大きくて、たまらなく可愛げがある。シャリーンもそーっと手を伸ばして、反対側の顔をなでていた。


すると突然、ユニコーンの後ろ側からひとりのエルフが現れた。

あ!紅のエルフのムルーアじゃないか!ダンジョンで姫を探している時に、外の警備を担当していたやつだ。


「エイト殿。その指輪の波動に王が気づきまして。ちょっと説明に伺いました。」


にっこり笑うムルーア。それは助かるよ。普通の馬ならともかく、こんなサイズの馬は見るのも初めてで、さすがに扱い方が分からんからな。

エルフおたくのシャリーンは、彼(ムルーア)を見て、顔が真っ赤になったまま固まってるけど。


俺はとりあえずシャリーンをそのまま放置して、ムルーアの説明を聞くことにしたのだ。



「このユニコーンの名前は『ダイハクリョク』と言います。呼ぶ時は『ハク』で大丈夫です。」


大迫力かよ、見た目のまんまじゃん。


「あなたは風魔法が使えると聞いておりますので、それで乗り降りしてください。一応手綱は付けておりますが、おとなしく優しい馬なので振り落とすようなことは致しません。」


ムルーアはハクのお腹の辺りをぽんぽん叩きながら言った。


「1時間という制限があるのは、とにかくよく食べるからです。人間界の草花を食べ尽くすと困りますからね。帰す時は指輪を抜くだけです。」


あ、ほんとだ。いつのまにやら、足元の草をもっしゃもっしゃ食べてる。


「ムルーア、ハクは草以外も食べたりする?」


「果物も好きですよ。喜びます。」


よっしゃ、なんか買っちゃおう。

ムルーアは俺の嬉しそうな顔を見て頷いていた。


「先日、あのダンジョンから姫を救出してくださった時には、疲労困憊のご様子でしたが、お元気になられて良かった。」


……いや、俺を疲労困憊にしたのは、ダンジョンじゃなくて、あんたたちのお姫様だよ。


「では、私はこれにて失礼します。何かございましたら、ハクを通じてお呼びください。」


「ああ。ありがとう、ムルーア。」


去って行こうとする彼に、ようやく硬直が解けたシャリーンが声をかけた。


「待って!いえ、お待ちください!」


「どうしました、お嬢さん?」


怪訝そうな顔をするムルーア。


「あああ、あの!私シャリーンと言います!握手してください!!」


「は……?」


何を言われたのかよく分からないといった様子のムルーアだったが、なるほど、というようにぽんっと手を叩いた。


「もしかして、エルフ語を解読して、エイト殿を手助けした方ですか。その節はありがとうございました。」


ムルーアは優雅にお辞儀をし、極上の笑みで手を差し出した。彼もエルフだ。輝くルビーの髪にその笑顔はもう犯罪だろう。


「あ……ありがとうございますっっ!!」


泣きながら両手でその手を握りしめるシャリーン。良かったな、エルフおたく。今日から推し変か?


彼が去った後、くたりと座り込んで宙を見つめながら「もう死んでもいい…」とかなんとか呟いている。怖いんですけど。


なんかホースセラピーみたいになっちゃったけど、1日1時間の相棒ができた。


「よろしくな、ハク。」


顔をなでると、ハクは嬉しそうに小さくいなないていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。