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今日は聖女テレンツィアから授けられた加護の代金を支払う日だ。
ラーキンは俺が笑顔で積み上げた600ゴールドを確認もせずに、ソファにどっかりともたれかかったまま、何故か顔を伏せるようにしてうつむき、無言で腕組みをしている。
……長い沈黙が辛いんですけど……
やがてラーキンは、はあぁ…と深く長いため息をつき、顔を上げて、俺の張り付いたような作り笑いの顔を凝視してきた。
「ラーキン。約束どおり代金を持ってきたんだ。早く数えてくれないか。」
沈黙に耐えきれず彼に話しかける。
「……エイト。聖女テレンツィアは、確かに、事前の見積もりどおりの加護をお前に与えたんだよな?」
ゔっ……
いや、彼女は俺の持ち物を全部出させて、それ以上の加護を付与していた。それを言っていいものか…
いや!そんなことバレたら俺は破産だ!
口が避けても言えない!!
「あー…うん。そうだと思うけど……」
明後日の方向に目を逸らし、曖昧に返事をする俺。
ラーキンは更に俺のことを凝視してくる。
イヤー!怖いから怖いから!!!
「……まあ、テレンツィアがそれで合っていると言っていたようだから、そういうことにしておいてやる。」
そう言って、ラーキンは机の上のコインを数えだした。
「確かに600ゴールドを受領した。これは領収証だ。」
俺は領収証を受け取って、ふぅとため息をついた。
これで全て完了だ。
しかし、ラーキンはまだ何かを言いたそうだ。
「じゃあ、俺はもう帰ってもいいかな?」
「……エイト。」
その声は地を這うように低く響いた。
「ターラントが赤の下着を買ってきて欲しいと言ってきたのだが……お前、弟に何か言ったのか?」
ぎくぅっ!?
ターラント、あれをマジに受け取っていたのか。
「いや…なんか、赤が好きなんだけど、赤い帯は付けられないとかなんとか言ってたから……なんかすみませんごめんなさい!!!」
俺は逃げられないと見て、必殺技・平謝りを発動した!
「……フン、まあいい。弟が俺にお願いをしてくるのは随分と久しぶりでな。たぶん、お前が何か変なことを言ったんだろうと。」
心なしか、ラーキンの声色が和らいでいる。
「あいつは聖域の責任者として、あれで随分苦労している。お前と過ごした時間が息抜きくらいにはなったんだろう。」
俺はターラントの顔を思い出していた。
常に穏やかで、赤い下着の話には大笑いしていた。
聖女テレンツィアの面談の前の、真剣な面持ちも。
「それなら良かったよ。ターラント様によろしく伝えておいてくれ。」
「ああ。気をつけてな。」
俺たちは立ち上がり、がっちりと握手をした。
その時、ラーキンが俺に向かって初めて微笑んだ。
それは彼の弟、ターラントの微笑みにどことなく似ていた。




