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お昼には少し早い時間ですが、と言いながらターラントは俺を中央の塔にある食堂へ案内してくれた。
皆が一斉に来ると大混雑してしまうので、ここでは食事の時間は交代制だそうだ。
「我々の生活は、皆様のご寄附で成り立っておりますので、常に無駄の無いようにしているのですよ。なのでメニューは毎食1種類です。好き嫌いも言わせません。」
トレイを受け取って、ちらほら聖職者や聖女が座っている中、空いている席に座る。これ、なんか学食を思いだすな。
そして俺の目の前にはついに《餃子(正確にはソエキの包み焼き)定食》が!餃子にライス、野菜スープという理想的なメニューだ。
ターラントは俺のライスとスープを大盛りにしてくれていた。さすがは聖職者様々。
わーい、念願の餃子だ!しかも10個もある!
いっただきまーす!!
幸せそうに餃子を頬張る俺を、なんだかニコニコして見ているターラント。
「それで、聖女テレンツィアとの話はどうでしたか?」
「あ、そうですね…とても優しくて話しやすかったです!素晴らしい聖女様ですね。」
「そうですか。それは良かったです。彼女の加護を求める人はとても多いのですが、正直言うと、会わせるのをためらう相手もいましてね。」
お茶をひとくち含んでから、ターラントが言う。
「彼女の加護が半永久的に続くということは、加護を与えた人や場所との縁も続くということなのですよ。」
そうか。なら余計に、ただ彼女の加護が欲しいからと来る相手を、全員会わせている訳にはいかないよな。俺は幸い合格したってことだ。
「無事、加護も受けられたようですね。大きな危機が迫るのを感じた時、彼女の祈りは最も強く発動します。これで貴方の使命も安全に果たされることでしょう。」
「え?ターラント様もご存知だったのですか?」
「それはもちろん当然のことです。貴方のことについては、兄から全て報告を受けております。加護を求める理由も分からない方からのご依頼を受ける訳にはいきませんからね。」
さすが、この聖域の最高責任者。
特に聖女テレンツィアに会わせる相手は、自ら厳しくチェックしているんだろう。
「……エイトさん、それは何をされているのですか?」
「え?スープ餃子ですが……」
俺が餃子ことソエキの包み焼きをスープに入れているのを見て驚いたらしい。
「ターラント様。これはこうして食べても美味いんですよ。」
「そうなんですか……?本当だ、これはなかなか美味しいですね。今度から半分はスープに入れようかな…」
真剣な顔をして検討しているターラントに、俺は思わず吹き出した。これが彼の素なのか、それとも、客として来る誰に対してもこうして合わせているのか…まあどちらでもいいや。
ただ、俺はあの、全ての病やケガを治す奇跡の妙薬のことをターラントに教えるかどうか迷っていた。もしかすると、彼はそれを使ってテレンツィアを治したいと思うかもしれない。
でも…そうしたらきっと彼女は怒るな。
俺は頭を振って、その考えを追いやった。
「エイトさん?どうかされましたか?」
不思議そうなターラントに、なんでもありませんと答えておいた。
その後ターラントは、このクーリガルド正教国の施設―彼らの修行の間や自家栽培している野菜畑や薬草畑、他の教会の内部―などを見せてくれた。
「めったに来られるところではありませんからね。また加護のご依頼があれば別ですが。」
ふふ、と笑いながらウインクして言うターラント。聖職者のウインクなんてレアじゃね?
そして、最初の場所に戻り、魔法陣で転移しギルドの部屋へと戻ってきた。
「ターラント様、今日は本当にお世話になりました。聖女テレンツィアに会わせていただき、加護が受けられたこと、感謝します。貴重な体験もありがとうございました。」
俺は心からの感謝をこめて、深々と頭を下げた。
「こちらこそ。エイトさんとご一緒できて、とても楽しい時間を過ごせましたよ。包み焼きの新しい食べ方もご教示いただけましたし。」
爽やかに笑うターラント。本当に良い人だな。
魔法陣で帰る彼を見送って、俺はその部屋を出たのだった。




