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聖女テレンツィアの部屋は、この教会の一番奥なので少し遠いですが…と言うターラントの後を歩き続けた。
体感にして、30分以上歩いていた気がする。
やがてターラントは、精巧な細工が施された黒塗りの大きな扉の前で立ち止まった。ここだけ今まで見てきた扉とは雰囲気が違う。
そして、今まで穏やかだった彼の空気がピリリとしたものに変わった。
「エイトさん。ここに入る前にお伝えしておくことがあります。」
ターラントは真剣な表情で語り始めた。
「聖女テレンツィアは、目が見えず、耳も聞こえず、話すこともできません。会話は全て念話です。ですので、彼女の前で思ったことは、全て彼女には筒抜けとなります。」
ふぅ、と小さく息をついてから話続ける。
「会話は言葉に出しても構いませんが、その言葉と思念が一致していない場合は彼女に丸わかりです。いいですね?」
俺はゴクリと息を呑んだ。
「ご忠告ありがとうございます。気をつけます。」
ターラントはしばらく俺を見つめてから、聖女テレンツィアに声をかけた。
「聖女テレンツィア。勇者エイトをお連れしました。」
『……どうぞ、お入りください』
その言葉は直接頭の中にふわりと響いてきた。まるでアドと話している時のようだ。
ターラントはゆっくりと扉を開けた。その奥にはもうひとつ扉があり、そこを開くと祈りの場のようだ。
その中央の床に女性が座っていた。
聖女テレンツィア。
その瞳は固く閉じられている。
柔らかく長い金髪と、細くて白い手。とてもきれいな女性だ。
ターラントは彼女のそばに行き、優しく彼女の手を取り立ち上がらせて、その部屋の奥に置かれているソファに導いた。
俺は分かった気がした。ターラントは彼女のことを、聖女としてだけではなく、とても大切な存在として守っている。
だからあんなに真剣になっていたんだ。そして、ここに来るまでの俺との会話は、俺がどんな人物かを確認するためのものだったのだろう。
ターラントは俺を手招きして、彼女の向かいのソファに座るよう促した。
「勇者エイト。ここからは聖女テレンツィアとあなたのふたりだけとなります。私は隣の部屋に控えておりますので、何かあったら声をかけてください。貴方がたの会話は私には聞こえませんので、彼女の言うことをよく聞いておくようにお願い致します。」
俺はターラントに礼を言い、聖女テレンツィアに向き合った。




