page.61
チャーションに戻り、宿に荷物を置いてからさっそく経理局へと向かった。
「勇者エイト、久しぶりだな。全然見かけないから、どこかへ逃走でもしたかと思っていたぞ。」
応接室でソファに座りながらのラーキンの第一声がこれだ。相変わらずニヤニヤしやがって性格悪い。
「ラーキン、俺だっていろいろ忙しかったんだ。」
「ああ、知ってるさ。メイロード様の使いが知らせてくれたからな。」
メイロードとは、慈愛を司る紫のエルフの長だ。式典で会ったのみだが、アメジストを思わせる長髪の、優しい長身の男性だった。紫のエルフはここの聖職者と交流が深いんだと、その時に彼から聞いてはいた。
「行方不明だった白銀のエルフの姫を見つけたそうだな。勇者とはいえ、初めての地でさぞかし大変なことだったろう。ご苦労だったな。……なんだその顔は?」
俺はポカンとしていた。だってあの冷血漢のラーキンだぞ!未だかつて彼にこんな気遣いされたことない!!
「……まあいい。聖女テレンツィアもその話を聞いて、お前と話がしたいそうだ。明日の朝9時にここに来れるか?」
もちろんOKだ。じゃあ明日、と挨拶してギルドを後にした。
次に行ったのは、鑑定士シャリーンの店だ。
俺はシャリーンに鑑定してもらったエルフの黄金の短剣のことが正しかったこと、エルフの姫を連れ出すのに役立ったことを伝えた。
実はエルフの王からお礼にと、幾つかエルフ族のアイテムを貰っていたのだ。それも見せたくてここに来た。
「まあ!これ全て白銀のエルフの王からいただいたの?凄いじゃない!」
シャリーンは大興奮で、触ったり光に透かしたり、刻まれているエルフ語を確認したりしている。
そして俺は、小さなケースから取り出した、白銀に輝く細身のリングを彼女に手渡した。
「これは王からだ。シャリーンにと預かってきた。」
彼女がエルフの古代語を解読できたおかげで、姫を連れ戻すことができたのだ。そのことに王はとても感心し、その鑑定士にこれを渡してくれと俺に託したのだ。
シャリーンは呆然とし、彼女の目からは大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。
「え…ええっ……えええええ!!!まさかそんな私なんかに!……うぇぇぇぇん〜エルフの研究してて良かったあぁーーー」
「ど、どうしたシャリーン!?!?」
突然の事態に慌てふためく俺と、号泣し続ける彼女。
しばらくして泣き止んだ彼女の話では、ダルメル王国で学生時代にエルフの古代語の授業を取った時に、その神秘性に魅せられて、その後も研究を続けていたとのこと。
「当時はね…友人たちとエルフのファンクラブを立ち上げたりして。」
遠い目をして語る彼女の言葉に、ふと違和感を覚える。
ファンクラブ???
「私の推しは、それこそ白銀のエルフの王だったの。その推しから指輪を下賜されるなんて…ああこれは早く皆に自慢しなきゃ!」
うわ〜…シャリーンってエルフおたくだったのか。
まあそうでも無ければ、エルフの国に近いってこと以外は何も面白いことが無いような、このチャーションで店なんかやってないよな。
「エイトさん、本当にありがとう。これ、家宝にするわ!」
目をキラキラ輝かせて、ガシッと俺の手を握るシャリーンに、良かったな…としか言えない俺だった。




