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行方不明だったエルフの姫を連れて帰った俺は―いや、正確には姫についてこいと言われたのだが―ダンジョンの外で待っていた紅のエルフたちに大歓声で迎えられた。
しかし、リーダーのムルーアは、俺の憔悴しきった様子を見ると顔色を変えていた。
「エイト殿!そのような疲れきった顔で…さぞかしこのダンジョンの中は過酷だったのでしょう。いやはや、全くもって恐ろしいことだ……」
……いや、俺が疲れきってるのは、あんたらの姫君のせいだよ。
彼らのうち数名は文字通り城へ飛んで帰り、姫発見の報告の末、大至急白銀のエルフたちの迎えがきた。
城に戻ると、エルフの王と王妃が飛びつくようにして姫を抱きしめ、涙を流しながら無事を喜んでいる。
「姫よ…私が悪かった……そなたの気持ちを考えず、我らの気持ちだけを押し付けてしまった。どうか許してくれ…」
涙ながらに、姫に詫びる王。
「ん〜なんじゃったかの?忘れてしもうた。」
それに満面の笑みで答える姫に、王は更に号泣した。
「なんと!…おお、なんと優しい姫なのだ!こんな不甲斐ない父を許してくれるとは!」
「あなた…本当に良かったですわね!」
……えーと。あなたたち、相当盛り上がっているところ申し訳ないですが。たぶん姫は家出の原因すら本気で忘れてると思いますよ?
感動の再会でひとしきり盛り上がった後、エルフの王と王妃は、俺に感謝の式典を催すと言い出した。
…いや、もう充分なので、早く帰りたいです……とも言えず、簡単なものでなら…と願い出た。
そして、エルフの重鎮たちだけが集まった式典の最中に、姫のわがまま爆弾発言が飛び出したのだ。
「何じゃと!?あの者はもう帰るというのか!わらわはもっとあの人間と遊びたいのじゃ!!!」
そうは言われても、もう約束の1カ月は迫っている。
チャーションに戻って、聖女テレンツィアの加護をもらいに行かなければならないのだ。
娘に甘々な王と王妃は、姫の発言におろおろしているだけである。まあ、ようやく戻ってきた早々、また家出されてはたまったもんじゃないからな。
「姫様、勇者エイトは急ぎの用がおありなのです。ここは我慢してくださいませんか?」
控えていた姫の婚約者候補たちの中からファイエルが歩みでて、彼女の前に跪き、なんとか優しく姫をなだめようとしてくれた。
「もう……ファイエルはうるさいのじゃ!」
癇癪を起こした姫の叫びとともに、彼女のポシェットから触手が飛び出しファイエルを襲う!
「ちょっ…姫!あれを止めろ!!」
あのモンスターに襲われたら彼が大怪我をする!
俺は必死で姫に向かって叫んだ。
……え?……あ、あれはちょっと……俺は思わず目を逸らした。
想像してみて欲しい。
美少女と見紛う程の美貌を持つファイエルが、声を出せないよう、触手の先端を口に突っ込まれている上、空中で身体のあちこちを他のウネウネした触手に絡みつかれて悶えているのだ。
「ちょっ…と、んふ…、あ、皆…たす…けて……!」
涙目でなんとか声を出し助けを求めるファイエルに、周りのエルフたちもなんとなく顔を赤らめ、彼から目を逸らすように視線が彷徨っている。
そんな中、姫だけは「きゅうりは賢いのう」とニコニコご満悦。
やがて降ろされたファイエルは、隅っこの方でしくしく泣いていたようで、王にすまなそうに肩をぽんぽんされていた。
……良かったな、ファイエル。お前たぶん、これで婚約者候補から婚約者になったぞ。
しかしこれはチャンスかもしれない。
俺はまだ納得していない様子の姫に声をかけた。
「ごめんな、いばら姫。俺は急いで行かなきゃならないんだ。でも今度は外で遊ぼう。必ず迎えに来るから、それまで待っててくれ。」
「お外で!?それは本当か!絶対に行く!約束じゃぞ!!」
ふぅ、これで王も王妃も断れまい。
アマルガリタは固い表情をしていたが、俺と目が合い、ため息をついて苦笑していた。
アマルガリタ…俺もほんとにこれでいいのかは分からないんだぞ?俺は引きつった笑顔を浮かべながら、彼女に目で訴えた。
キャッキャと喜ぶ姫を見ながら、彼女をパーティーに入れて、ほんとにドラゴン攻略なんてできるのか…と、遠い目をする俺だった。




