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その声が合図になったかのように、蔦というか触手というかだったものは瞬時に消え失せた。
いや、消え失せたとは違う。正確にはアボカドくらいの大きさの種になったというか。
そしてそれは彼女の足元に、コロン…と乾いた音を立てて転がった。
そこにいたのは、間違いない。行方不明のエルフの姫だ。
白銀のエルフの印である銀色の髪は、肩までのくるんくるんしたくせ毛のようだ。金色の大きな瞳はキラキラと神々しく輝いている。白いふわふわした服に身をつつみ、人間にすると7、8歳の女の子に見えた。
そして彼女の手には、かじりかけのサボテンのようなものの一部が握られていた。
え?……なんか……サボテン食ってる?
そういえばファイエルが言っていた、姫のペットはサボテンであると。
彼女は俺の視線の先に気づいたのか、食べかけのサボテンを差し出し、鈴の音の転がるような、いかにも幼く可愛い声で言った。
「なんじゃ、おぬしも食べたいのか?」
「いやいや、いらないから!」
俺は焦って答えた。
彼女は不思議そうに、首をこてんと横に傾けてから、それをもっしゃもっしゃと食べ始めた。
なんなんだよ、一体これは…
黙り込むしかない俺。
「心配ないぞ。なすびの手は、またすぐ生えてくるからの。」
そうじゃない…そうじゃないんだよ……なすびってなんなんだよ、それはサボテンだろ……
「ん?お前はまさか人間か?」
今更気づいたように彼女は言う。
俺がエルフに見えるのかよ……
手に持っていたサボテンを食べ終えると、彼女は落ちていた種を肩から下げていたポシェットに放り込み、左手には地面に置いてあったサボテンの本体をぶら下げた。
「さて、見つかちゃったからにはもう帰るかの。そなたもついて来るがよい。」
もう、どうにでもして……
俺は意気揚々と歩き出したその小さなお姫様の後を、ヨロヨロとついていくしかないのであった。




