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午後近くにのそのそ起きて、またあの美味いスープの店に行くか…とぼんやり考えていたら、宿の人がラーキンから連絡があったと伝えにきてくれた。
各協会の加護の相見積もりができたようだ。それならばと、軽くパンとチーズで腹ごしらえをしてから、ギルド内の経理局へと向かった。
昨日と同じように、経理局専用の応接室に通され、出されたお茶を飲んでいるとラーキンが入ってきた。
「来たか。」と彼は言うと、ばさりと書類の束を机に投げ出し、深々とソファに座った。
「各教会の相見積もりだ。持って帰ってゆっくり見てもいいし、今ここで決めてもいい。ただし俺は今は30分くらいしか時間は取れんがな。」
「ありがとう、ラーキン。見せてもらうよ。でも俺は聖女テレンツィアの加護が必要なんだからな。」
俺の言葉にフンと鼻を鳴らし、自分のお茶を飲み出すラーキン。
10カ所ある教会の、それぞれの見積もり書類はなかなかの量だ。
希望する全ての加護に対応できないところや、聖女の能力によってはあまり強い加護は与えられない。その内容について、詳細に記載されているようだ。
俺はそれぞれパラパラとめくり、最後に聖女テレンツィアの教会の資料を手に取った。
さすがに高いな…俺の希望するマントや防具、剣などの全て込み込みで600ゴールドか。私大の理系に入学した友人がそれくらいかかると言った額に近い。手持ちは今760ゴールドまで減っているが、そこからなんとか払える金額で良かった。
「…どうだ。お前の希望する装備全てに加護を与えるとなると、相当な金額になっているだろう。それでも聖女テレンツィアの加護を希望するのか?」
ラーキンの表情は硬い。
俺がそこまで本気なのかを考えているようだ。
「ラーキン、俺は聖女テレンツィアの加護を買う。手配を頼む。」
俺は彼の目を見ながら、笑顔を向けた。
「……分かった。手続きが済んだらまた連絡する。ただし、すぐ手配ができるとは限らんぞ。他にも彼女の加護を望む者が来ているからな。」
ラーキンはそう答えてから、俺の目をじっと見返し、やがてため息をついて言った。
「しかし、何故そんなにテレンツィアの加護にこだわる?ドラゴン攻略なんてだいそれた事に挑むなら、それなりに大人数のパーティーを組むんだろう?回復役を何人も用意していれば済むんじゃないのか?」
彼の言うことももっともだ。
ただ、俺は以前アドが言ったことが気になっていた。
―『エイト単独だとドラゴンの前に出た瞬間に塵と消えますよ?』
「……それは選択肢の時みたいに、やり直しってのは……」
『無いですね、塵は塵です』―
それは、もし回復役が居ても間に合わないということではないだろうか。
「ラーキン、おそらくだが、俺のパーティーには回復役の魔導士は加入しない。だから、俺自身の防御を上げておかないことには、攻略はとても無理だろうと考えているんだ。」
彼は少し驚いたようなそぶりをしたが、すぐにそれを引っ込めた。
「そうか…それならまあいいだろう。だがひとつ言っておくぞ。聖女テレンツィアは客を選ぶ。もし彼女がお前のことを気に入らなかったら、他の教会の加護を選ぶことだ。この書類は持って帰っておけ。」
「ああ、せっかくこんなに用意してもらったんだ。貰っておくよ。」
俺はラーキンと握手をし、書類を片手に抱えるようにして応接室を退出したのだった。




