page.48
経理局を出たその足で、鑑定士の店に向かうことにした。
ガザールの鑑定士であるアルゴン爺さんのアドバイスで、ここの鑑定士に黄金の短剣を見てもらう為だ。
爺さんの鑑定でおそらくエルフのものだと分かったこの短剣、俺のステータスにもそう記されていたので間違いはないだろうが。
もうすぐエルフの国に行くのだから、そこで見てもらってもいいかなと思ったけど、これはアドの選択肢で入手したものだ。こんなものどこで手にいれたんだって、エルフたちに詮索されるのもめんどくさいからな。
その点、鑑定士は安心だ。
彼らは鑑定を依頼されても、どこで入手したかは詮索してこない。それは冒険者の腕であり、秘密であると理解しているからだ。
持ち込まれた依頼品が盗品である場合は、その情報はしっかり共有されているから、彼らは迷わず通報する。その点でも安心。
このチャーションでは表通りにしか店はないので、目的の店を見つけるのは簡単だ。
鑑定屋の主人はシャリーンという女性だった。
俺はガザールで、アルゴンに「チャーションで鑑定してもらえばいい」と言われてきたと伝えると、彼女はとても嬉しそうにしていた。
この道60年のアルゴンを知らない鑑定士はいない、彼女はそう言って笑顔を見せる。
「それで、この短剣にある文字を見てもらいたいんだ。」
俺はマジックバッグから短剣を取り出し、机の上に置いた。
シャリーンは鞘を抜いて、その文字をじっくり見てゆく。自身のノートらしいものを取り出し、それと短剣の文字を見比べている。
やがて短剣を鞘に収め、机に戻した彼女は俺を見つめた。
「これはアルゴンさんが言った通り、エルフの古代文字ね。《サエル・タル・オルト・ニーヴァエ》。意味は、『閉ざされしもの、その道を開けよ』。」
「道を開けよ?何かの鍵かな。」
「かなり強制力のある言葉よ。特定の対象物の鍵とは限らないかも。例えばね、この短剣を対象となるものにかざしながら言葉を唱える。すると、どんなものでも抵抗できずに開かれる…ということかと思うわ。」
彼女は俺に、そのエルフ語と翻訳を書き写したものをくれた。
「こんなに旧い言葉が彫り込まれているのに、まるで新品みたいに輝いているのね。不思議だわ。」
俺は彼女に鑑定料を渡し、お礼を言って店を出た。
さぁて、用事は終わったし昼メシの時間だ。とはいえ、ここの食事は精進料理みたいなものばかりだし…
悩みながら歩いていると、俺に声をかけてきた人がいた。
ギルドのマリーシェだ。
「エイトさんでしょう、お久しぶりね。私、これから昼休憩なの。もしお昼ごはんまだだったら一緒に食べない?」
相変わらず人懐っこい彼女の誘いを受けて、お勧めだというスープの店に行った。
定番のコーンスープから、エスニックやカレーっぽい香辛料のものとか、10種類くらいある。これはいいな!
持ち帰ってラーメンスープ代わりにもできないかな。
マリーシェはこの店がオープンしてから通い詰めているらしい。
「このお店は、あるエルフのアイディアがきっかけだそうよ。野菜や果物と相性が良い食材を、ずっと研究している方なんですって。」
なんか聞いたことあるその話。蒼のエルフの長、アマルガリタはこんなところにも影響及ぼしていたのか。さすがはおばちゃんだ。
そういや、彼女にももうすぐ会うことになるのかな。それともどこかでまたジュースの屋台を出しているのだろうか。
俺は違う味のスープをおかわりしようと席を立ち、カウンターでどれにするか悩むのだった。




