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ここガザールにはチーズの美味いレストランがある。
入り口近くの2人掛けの席に案内してもらい、チーズフォンデュとチーズリゾットを注文した。ここに来るのは久しぶりだし楽しみだ。
店内のあちらこちらのテーブルから漂うチーズの、いかにも食欲を誘うその香り。
先に出てきたサラダに入っていたミニトマトのような、ちょっとすっぱい野菜をつつきながら地元産の赤ワインをちびちび呑んでいると、知り合いが店に入ってくるのが見えた。
「ようドルマ。お疲れさん。」とその大きな男に声をかける。
「ああ、エイトか。さっき会ったよな。ちょっと立て込んでて声かけらんなかったけど。」
先程入り口の門のところで会ったドルマは、この都市を守る衛兵のひとり。人の出入りに危険が無いかを常に見張る役目を担っている。
彼は俺の前に座り、ニカッと笑ってくる。相変わらず仕事がらの、真っ黒に日焼けしたいい笑顔だ。
「かなり久しぶりだよな。ガザールで仕事か?あ、俺にはエールとチーズロールを。」
彼は店員にさっと注文を済ませ、俺に向き直る。
「いや、今回は立ち寄っただけだ。クーリガルドに行く用があってな。」
彼のエールがきたので、久々の再会を祝して乾杯した。
それを一気にあおるドルマ。
「クーリガルドォ〜!?ったく、お前もかよ。誰もかれもがクーリガルドに行くって言ってんな。あんな何にもないところに行く奴の気がしれん。」
彼は呆れたように言いたい放題だ。
「あんなとこ、聖職者と聖女がいるばっかりで面白くもなんとも無い。食い物も飲み物も清廉とかいって味気ないし。」
「まぁな、俺もちょっとした依頼絡みで寄るだけだよ。」
軽く答える俺に、ドルマはちょっとだけ真面目な顔になる。
「なぁ、エイト。貴族どもがクーリガルドに向かっているのは、聖女の加護を買う為だろ?魔族がちょろちょろしているという噂だが、それって本当なのか?少なくとも、この辺りで魔族が出たって話はまだないぞ?」
「いや、まだ見てはいないな。俺も噂を聞いた程度だ。」
チーズフォンデュとリゾットがきたので、ドルマにもフォンデュを勧めた。うーん、熱々チーズに絡めるパンやソーセージが美味い。ふたりでハフハフ食べ進める。
チーズを絡めたベーコンを食いちぎる彼に、交通手段についてちょっと聞いてみることにした。
「ところでドルマ、バンシルまでの馬車が出ているかどうか知ってるか?」
「バンシルまでか?毎日5本はあると思うぞ。旅人が多いから、最近増便したんだ。」
そうなのか、それは助かるな。
いつのまにやら3杯目のエールを呑んでいたドルマが提案してきた。
「俺の知り合いが馬車でバンシルまで行くんだ。3日後だが、そいつの護衛をしてやってくれないか?乗れるように手配しておくからさ。」
「おお、それは助かる!分かった、やるよ。」
その後は俺もエールを頼み、ドルマとくだらない話をしつつチーズリゾットを分けたり、彼の好物のチーズロールもつまみながら、楽しい夜はダラダラとふけてゆくのだった。




