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クーリガルド正教国へと向かい、3日目の昼。
俺が歩いている横を、そのクーリガルドへ向かっているだろう貴族や豪商たちの乗る馬車が何台も行き交っている。
下手に風魔法で進むと、馬車に跳ね飛ばされる可能性があるので、様子を見ながらの、とりあえず徒歩だ。
あー良い天気だなー。
懸念していた野宿も、勇者の記憶と、ミリアムさんにお借りしたテント等のアイテムで快適だ。
しかしこれ、ただまっすぐ歩くだけだとちょっと飽きてくるよな。もしスマホがあれば、音楽聴きながら歩けるのに。
その時、左手の森の奥から女の子の甲高い悲鳴のようなものが聞こえてきた!
これが噂のRPGのテンプレか!?
いや、ふざけている場合じゃない。
俺は声の聞こえた方へ駆け出した!
森の奥は薄暗く、足場は歩くには問題はないが、昼でも陽の光はあまりとどかないようだ。
すると、目の前の少し開けたところにひとりの人影が見えてきた。
ん?女の子ではないようだ。あのシルエットは冒険者かな?
その人物は俺の方を見るやいなや、駆け寄ってきてこう言った。
「先程、悲鳴が聞こえたので駆けつけたら、何かモンスターのようなものが少女と一緒に消えたのだ!良ければ一緒に探してくれまいか!」
……これはなんかクエスト発生した?
よく見るとまだ若そうな青年だ。10代後半かな?
金髪で青い目がキラキラしている。いかにもファンタジーの主人公っぽいのがうらやましい。
俺なんてまるっきりコスプレ日本人なんだぞ?
その青年は続けて言った。
「私は勇者アルマス。勇者として修行のため、今はひとりで旅をしている。見たところ、あなたも冒険者のようですね!」
ん?この人も勇者?
この世界、勇者って何人もいるんだっけ?
後でアドに詳しく聞いてみよう。
「ああ、俺はエイト。俺も勇者だ。」
「なんとあなたも勇者か!レベルは?」
いるいる。こういう、会ってすぐ相手に経験や強さを確認してラベリングしたがる奴。
「俺はレベル30だ。」
この本の中の設定では。ほんとはただの大学3年生だけど。
『え?エイトのレベルは30.1でしょ?』
とりあえずアドのツッコミは無視する。
アルマスはよほど驚いたらしく、後ろにヨロヨロ下がりながら震えている。やけに芝居がかったリアクションだ。
「レベル30!?神か貴方は!レベル8の私などまるで蟻ん子のようだ!!」
レベル8でひとり旅かよ。まだまだひよっこレベルじゃないか。勇者とはいえ大丈夫か?
「それよりアルマス、その消えたモンスターと女の子はどっちへ行ったか分かるか?」
「……はっ!しっかり忘れていた!」
……ほんとに大丈夫か?
こちらに向かったはずと案内された方向に向かうと、洞窟のような穴が見えてきた。
念のため、ギルドでもらった地図で確認する。うーん、どうやら該当するものは無い。
だとすると、これは未発見のダンジョンだろうか。
厄介だな…洞窟ではなくダンジョンだとすると、中にいるモンスターの情報が全く無い。
「勇者エイト、何か分かったのか!はっ!!なんだ、あの壁に見える大穴は!?」
……お前も厄介だな。
「ああ、あれは未発見のダンジョンかもしれない。お前の見たモンスターと少女はおそらくこの中だ。とにかく入ってみるしかないな。」
アルマスは目を輝かせた。
「ダンジョン!おお、冒険者の憧れの!さぁ勇者エイト、さっそく入ってみようではないか!」
「……お前まさかダンジョンも知らないのか?」
「うむ、私の出身地のパノン村には畑しか無かった!」
胸を張っていうことじゃねぇ…
俺は不安を抱えつつ、アルマスを連れて、周りを伺いながらその洞窟に向かってゆくのだった。




