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サンドイッチとミルクで軽く朝食を済ませ、俺は外出することにした。
行方不明のエルフの姫を探すという、先が長そうな旅に出るからには、まずここでの準備が最重要課題だ。
このブシュタールは、この世界の四大王国のひとつ、バルマス王国の首都だ。代々冒険者上がりの国王が統治している場所なので、中でも冒険者用の装備やアイテムが一番充実している。
これから向かうエルフの国の近くにはクーリガルド正教国があるが、あそこは聖職者の国。普通に冒険に使える物の入手は簡単じゃない。
なので、ここにいる間にいろいろ揃えておかないとな。
しかし、ブシュタールは別名『地上ダンジョン』と呼ばれるだけのことはある。とにかく中央部は道が入り乱れていて、一本通りを間違うと全く別の場所に出てしまう。これじゃまるで梅田の地下だ。
まあ何度も来ている記憶を持つ俺には特に問題は無い。多くの人で賑わう街中をさらりとくぐり抜け、目的の服飾街にスムーズにたどり着いた。
オルカンの店と看板が掲げられている、その店のドアを押し開けると聞き覚えのある声がした。
「いらっしゃいませ!あ…エイトじゃん!久しぶり〜。」
ふわふわと手を振るのは、この店の店員のエミルだ。
彼は服飾士を目指す傍ら、この店でバイトをしている。年も近いということで親しく話をする間柄だ。
俺は同様に手を振って挨拶し、さっそく目的の物を出してもらった。
あーずっと欲しかったんだよねー。この、暑い時に汗を吸ってサラサラに乾くシャツ。
あと薄いのに暖かさが続くあのシャツも。
まあ平たくいうと、あのカタカナ4文字の店のものみたいなやつだ。
これが1枚50シルバーというなかなかのお値段なので以前1枚ずつ買ったきり、それも傷んで泣く泣く処分したんだ。
しかし今の俺はお金持ち!
しかもこれから厳しい長旅が続く!
多めに買ってもバチはあたらんだろう、うん。
ということで、この2種類のシャツを5枚ずつ用意してもらった。
「エイト、これなんかどう思う?きっと似合うと思うんだけど。」
そう言ってエミルが出してきたのは、スカイブルーのロングマント。裏は落ち着いた紺のリバーシブルだ。
身体の温度を一定に保つ効果があり、紺の方を身につけると隠密の効果もある。汚れは水で簡単に落ちるし、耐久性も申し分なし。
試着室でそれを軽くはおってみる。
……いや、もちろん分かっていたんだけどね?
どこから見ても普通の日本人でしかない俺が、異世界の服装を身につけるとこれが完全に服に負ける。これであの銀の剣を腰に下げると、「あなたどこのコミケ会場ですか?」というコスプレ感満載。
本の中に入った時に、勇者補正してくれたら良かったのに、まんまなんだもん。でも周りはこちらを勇者として認識しているから全く違和感はないらしい。
…まあ慣れるしかないか。
併せて足元を保護するタイツや靴下、下着の替え、軽くて耐久性のあるブーツなんかも選んでもらう。エミルに手持ちの服の色やデザインを伝え、彼の完璧な色彩感覚による見立てのおかげで、なんとか俺も納得できる感じにはなった。
今日のここでの買い物はこれぐらいにしておこう。
旅に出る前にはまた来るよとエミルに告げ、俺はまた街の喧騒の中に戻ってゆくのだった。




