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俺はのんびりと馬車に揺られていた。

この国―バルマス王国の首都、ブシュタールへ向かうためだ。


ダンジョンで盗賊シーフのバイナと持ち帰った宝石。それを王に献上するためと、以前ギルドに預けた俺の宝石も首都預かりになっているのでそれを受け取るためだ。

旅費に関しては、ダンジョンの宝石をギルドに持ち帰り確認してもらった時点で、バイナも俺も依頼報酬は受け取っている。当座の資金については今のところ心配はない。


そして、その馬車の中にはユージンも居た。

魔法陣入りの宝石の研究を、他の賢者や魔道士とともにブシュタールでやらなければならないのだ。ムユツミから出たことのないユージンは、この半日程度という近距離の移動だけで既にプレッシャーを感じている。


「エイトさん…。エイトさんはブシュタールに行ったことは有りますか…?」


馬車の揺れにすら怯えながら、震え声で尋ねてくるユージン。もちろんと答える俺。

まあ当然俺は行ったことはないのだが、俺の中の勇者の記憶ではもう何度も行っている。


しかし、ユージンは賢者レベル40なのに本当に怖がりだな。

怖がりが過ぎて、ムユツミの全てのダンジョンのゴーストやアンデッド、リッチなどを思わず全て浄化してしまったそうだ。おかげであのエリアのダンジョンの中にはゴブリンやオークくらいしかいない。

俺はそんなユージンの方がよっぽど怖い。



今までは、ユージンに研究などの依頼をしたい時は首都からムユツミまで出向いて来てくれていたので、彼はそこから出る必要は無かったのだ。


ユージンによると研究は王宮の中でやるらしいが、彼にとって一番の心配は住むところらしい。のんびりしたムユツミで一人暮らしをしてきた彼は、王宮で共同生活なんて無理、街中の騒がしいところは到底無理と、いい歳してワガママばかりぶつぶつ言ってやがる。

仕方がないので到着したら部屋探しを手伝ってやることにした。まあ、ふたりでしておきたい話もあるしな。


お、ブシュタールの入り口の門が見えてきた。

さすが首都、いつものように門の前には身分証の確認待ちの行列が出来ている。久しぶりだから楽しみだな。実際は知らんけど。



当然、無事に身分証の確認を済ませた俺たちは、先にユージンの住むところを探すことにした。

王宮に入って、もしそのまま一旦さようならになってしまうと今後のプラン的にちょっと困る。


バイナがクチコミで評判の良い不動産屋を調べておいてくれたので、まずそこへ向かってみた。


人当たりの良い店主が真剣にユージンのワガママ放題な要望を聞いてくれ、ある一軒家を紹介してくれることになった。

街中でも裏手の静かなエリアにあるその家には、魔道士として活躍していたご主人を亡くし、ひとりでのんびり暮らす老婦人が居るらしい。ご主人が使っていた離れが傷むのが嫌だと、貸し出しを希望しているそうだ。


不動産屋の案内でその家に行くと、猫3匹と暮らす小柄で穏やかな老婦人が迎えてくれた。


「まあまあ、離れを借りてくれるなら嬉しいこと。」


上品でにこやかに接してくる癒し系のおばあちゃんだ。

さっそくその離れに案内してもらった。簡易な事務所として使えるスペースとベッドルーム。ひとりで過ごすには申し分ない。

生前ご主人が集めた膨大な数の魔導書がそのまま保管されている、その落ち着いた匂いのするこの離れをユージンもかなり気に入ったようだ。


「奥様。このご主人の魔導書は素晴らしいものですよ。ぜひとも私にも活用させていただけませんか?」


「まあまあ、あなた本当に良い人ね。」


おばあちゃんことミリアムさんは、可愛らしくにこにこしながら俺たちにお茶を勧めてくれた。

人懐っこい猫たちもゴロゴロ喉を鳴らして歓待してくれる。良い家だな…もう俺がここに住みたいくらいだ。


その場で借りる契約を済ませ、帰ってゆく不動産屋に礼を言う俺たち。そしてユージンに話があると声をかけ、俺たちは離れに移動した。

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