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page.22

その日の夜、俺は白銀のエルフが宿泊している高級ホテルに向かった。昼間の彼への非礼のお詫びに、ここでディナーをご馳走することにしたのだ。


このホテルは町の中心部にあるひときわ豪華な建築物だ。あらゆる種族の宿泊に対応しており、もちろんエルフ用の食事も普通にメニューにある。

さすがに俺の一般宿とは全く違うな。



会食のメンバーは、白銀のエルフのファイエル、蒼のエルフの長アマルガリタ、賢者ユージンと俺だ。

エルフふたりと俺だけだとなんだか畏れ多い気がしたので、ユージンにも来てもらったのだ。


エルフのふたりに合わせて、俺たちもエルフ用の食事をオーダーする。彼らの食事はやはり野菜と果物となる訳だが、さすがは高級ホテル内のレストラン。全てに繊細な趣向が凝らされて、実に美味に仕上がっている。たまにはこういうヘルシーな食事も良いな。高いけど。


アマルガリタとユージンは楽しげに知的な話を軽く弾ませている。普通にめんどくさい性格の奴だがさすがは賢者、勇者の俺と違い、こういう場での礼儀を心得ているのは頼もしい。


食事の終盤に差し掛かるころ、俺達の個室には念の為アマルガリタが防音の障壁を展開していた。我々の会話だけが漏れるのを防いで、食器を下げにくる給仕の出入りには全く影響していない。おそろしく精密な術式のようだ。


「さて、ファイエル。あんたがエルフの城を離れてこんなところをうろうろしている理由を聞かせてもらおうかね。」


アマルガリタがレモン水を飲み干してから、彼に話を促す。

ファイエルは大きく溜息をついてから話しだした。


「……実は、城から白銀のエルフの姫が消えたのです。」


やっぱりか。俺は身構えて続きを聞く。


「王は、姫と我々白銀のエルフの誰かを婚約させることを考えておられた。しかし姫はまだ幼く遊びたい盛り。王と喧嘩して城を飛び出してしまわれたのだ。」


なんだ。可愛らしい話じゃないか。


「くっ…姫はまだ250歳なのだ……確かに婚約するにはまだまだ幼い。その年齢からそんなに苦しまれておられるのはむごい…酷すぎる………」


その美しい瞳を潤ませ、声を震わせながら言葉を紡ぐファイエル。同感だというように頷くアマルガリタ。

……いや、俺からすると250歳は相当年上なわけだが。


「そして姫は愛するペットのサボテンとともに行方不明となっているのです。」


ペットの……サボテン?

サボテンが……ペット?


エルフの考えることは分からんな。


ここまで口を挟まず控えていたユージンが問う。


「探索の術式は試してみられたのですか?」


「ああ、試したところ、一度この辺りで反応があったとのこと。なので婚約者候補として私が来てみることになったのだ。ちなみに他の婚約者候補もそれぞれ探索に出ている。」


なるほど、それでエルフの城から遠く離れたこんなところまで。


「そなたたちも既知の通り、我々エルフは植物を愛し愛される存在。その中でも姫の愛され方は異常とも言える。彼らが森の中に姫を匿えば、如何に我々エルフといえどもおいそれと発見はできまい。」


ファイエルは苦しげに手元を見つめながら語り続ける。


「アマルガリタ殿、我々はどうすれば良いのだ!どうすれば姫を見つけることができるのだ!」


目に涙を浮かべるファイエルを見て、やっぱりエルフって美しいなと不謹慎に思う俺。

ユージンが俺に向かって言う。


「エイトさん。あなたは近々また旅に出るのでしょう。ならば彼らに何かしら協力できるのでは?旅先でなら色々情報が得られるかも知れません。」


……いや、俺の旅はそれこそその姫を探すことなんだが……

なるほど、これがクエストの強制力か。


「おお、エイト殿!協力してくださるのか!何故だか貴公なら姫を見つけ出せる気がする……!」


ファイエルは俺の手をがしっと掴み、潤んだ目で見つめてくる。

自分の耳が熱くなっていくのを感じる。

うーん…相手が男と分かっていても、こんな至高の美に見つめられると、なんというか照れてしまうのは仕方がないだろう。男でもこうなのだから、きっと、白銀のエルフの姫はもっと美しいのだろうな。


ファイエルとアマルガリタは、俺が姫探しに協力するなら、旅先での便宜をいろいろ図ってくれるという。


「ユージン、お前も一緒に来るか?」


「いえ、今はやることがありますので。それが済めば合流できるやも知れません。」


……確かにこいつと旅はめんどくさい。

あの賢者の書の変な詠唱ポエムを聞かされまくると、俺の精神はガリガリ削られること必至。


食後の温かい飲み物を手に、俺は頭の中でこれからの旅の計画を立ててみるのだった。

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