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今日はバローチェン男爵のお子さんのテランと約束した日だ。収穫祭の最終日の前日に、一緒に見て回るという約束をしていたのだ。


朝、宿に迎えに行くと、テランはしっかり準備をして待ってくれていた。可愛いなぁ。


「シェイドさん、お久しぶりです!」


「テラン君、お待たせしました。さあ、出発だ。」


男爵と姉たちに見送られて、俺たちは宿を出発した。男爵によるとこっそり護衛をつけているから心配しないようにとのことだ。


実際は何かあっても俺ひとりで対処はできる。でも、ここではまだ俺は勇者エイトではなく、アルトの友人のシェイドなのだ。その設定を通さねばならない。



宿の近隣にも屋台はたくさんあるが、俺たちはそこを通り過ぎて、中央の一番華やかな広場に行った。


そこではパントマイムや動物のショーなど、終日賑やかな催しが行われていた。噴水にもたくさんのカラフルな魚が泳いでいて、時折ジャンプするので歓声が上がっていた。


「テラン君、ここ暑くない?大丈夫?」


「大丈夫ですよ、これくらい。」


テランはそう言うが、暑さで頰がかなり赤くなってきているので、パラソルの下を確保し座って催しを見ることにした。


そこにすっとアマルガリタが現れた。


「可愛い坊やたち、冷たいジュースのサービスですよー。」


テランはジュースをひと口飲んで、「美味しい!ありがとう、おばちゃん。」と満面の笑顔で言い、そのままこくこくと夢中で飲んでいた。


「ありがとう、アマルガリタ。」


俺が小声でお礼を言うと、彼女は頷き空を見上げて言った。


「ああ……平和さね。」


そう言うと彼女は人混みの中に消えていった。



しばらく屋台も見て回ってからテランを宿に送り、俺はそのまま土産を物色することにした。明日は最終日で屋台はもっと忙しいかもしれないし、早じまいする店もあるだろうから。


すると、ヤギルリア果樹園と書かれた看板の店を見つけた。柑橘系の果物がたくさん置いてある。


「あの…もしかしてノバンさんですか?」


俺はそこで販売していた男性に声をかけた。


「はい、ノバンは俺ですが……」


「あの、俺はエイトと言います。バランさんの宿でお世話になってます。」


ノバンは笑顔を浮かべて言った。


「ああ、両親の!こちらこそありがとうございます。ふたりとも元気ですか?」


奥さんとお子さんも紹介してもらい、パンケーキの話などで盛り上がった。

俺はお土産にたくさんフルーツを買ってお別れした。


他にも店を回って、あまり食べたことのないフルーツもしこたま買い込んだ。食べ方はきっとクラリスさんが知っているだろう、料理上手だから。


俺はビンスタスに帰ってからの楽しいことを想像しながら、収穫祭で賑わう街中を歩いていくのだった。



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