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ひとりで買い食いなどして、気を紛らわせて過ごした収穫祭の4日目が過ぎ、とうとう、招待された勇者が現れるという5日目になった。


王宮前の広場は、このフィルマルト王国で大活躍したという勇者をひと目見ようという人々で埋め尽くされていた。

うわ、一体何人集まっているんだよ!怖ぇぇ〜……


俺とウィンベルトとカリンは、人波の真ん中より少し前という場所を陣取り、とりあえずことの成り行きを見守ることにした。



やがて、フィルマルト国王と王妃がバルコニーに現れ、皆に手を振り、収穫祭の挨拶をしていた。

おお、あの人が俺に500ゴールドも褒美をくれた王か。王宮に呼ばれて行った時は、外遊で不在にされていたので直接お会いしてはいないんだよな。よし、もう一回手を合わせておこう。


「エイト、何拝んでるの?」


カリンが不審げに言ってきたので、後で説明するよと言っておいた。



そして、話が終わった国王に呼ばれて、問題の勇者がバルコニーに姿を見せた。


う〜わ~……


やっぱりアルマスじゃん……


そこに現れたのは、旅の途中で出会った、あのレベル8の勇者アルマスだった。


そしてその傍らには、何やら頰を染めた可憐な女性が寄り添っていた。



「お集まりの諸君!お初にお目にかかる。私が勇者、アルマスだ!」


おおー!という歓声が上がった。


「あの方がファルナートを救った勇者様か!」


「なるほど!噂通りだ!いかにも凛々しい!」



そんな声が口々に上がる中、「いや…あんな人だったか?」「俺が見た人と違う気がする…」「名前も違ってないか?」という声もちらほら聞こえてくる。彼らは俺を目撃したファルナートの住民だろう。


アルマスが声を張り上げた。


「私のことが噂になっていると聞き、最初は驚いた!しかし、諸君がこの私に大きな期待を寄せてくれていることに、心から感動し感謝している!」


アルマスは目に涙を浮かべ、キラキラの笑顔で陶酔したように語りだした。


「ここに居る全ての民に誓う!私はこの国を、いや、この世界の全てを救う勇者となってみせる!世界の平和は必ずや、このアルマスが生涯をかけて守ると約束しよう!ここにいる皆が証人だ!」


あの金髪碧眼だと、いかにも物語の勇者のようで説得力がある。そんなアルマスの演説を静かに聞いていた群衆だったが、彼のあの、『勇者の噂を自分のことだと信じて疑わない熱意』にあてられたのか、周囲は急激に熱狂していった。

これこそまさしく『勇者補正』ってやつなのか?


「うおー!勇者アルマス様!」


「貴方こそ救世主!」


「素晴らしい!まさしく勇者様だーーー!」


アルマスは紅潮した頰にまだ涙を浮かべ、キラキラが増した笑顔を見せている。


そして国王は、アルマスと王女の婚約も発表した。ふたりは熱い視線で見つめあっている。


「収穫祭でこのようなめでたい発表ができて、国王として幸せを感じている。これからも皆が幸せであるよう、心から願っている。」


国王はそう言い、アルマスコールの鳴り響く中、彼らはバルコニーから城内へ戻っていった。




「はぁ〜〜なんか、凄かったね。」


カリンが疲れたように言った。


「カリン…あれがアルマスの通常運転なんだよ…悪気はないだけにさ……」


「なるほど、これでエイトは変装する必要はもう無いわけだ。勇者はアルマスだったということになったんだから。」


ウィンベルトは何故か妙に感心していた。カリンも隣で頷いている。


「ははっ、良かったなエイト。これで自由だ。」


ウィンベルトが笑顔でぽんぽんと肩を叩いてきたが、俺は固まったまま返事ができなかった。

本当にこれで良かったのか?アマルガリタの言葉を思うと、問題は無いのかもしれないが……


俺はアルマスのキラキラ笑顔を思い浮かべ、彼に幸あれと手を合わせておいた。


アルマス……なんか、すまん。



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