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俺の予想通り、夜になってアマルガリタが宿にやってきた。
「こんばんは。ちょっといいかい?」
「あ、アマルガリタさんですね。どうぞ。」
扉を開けたカリンが、笑顔で迎え入れた。アマルガリタはちょっと意外そうな顔をしたが、すぐ笑顔になった。
「あたしのことを知っているのかい?ああ、エイトに聞いているんだね。」
俺はテーブルからアマルガリタに声をかけた。
「アマルガリタ、久しぶり。きっと来ると思ってたよ。でもさ、せっかく変装しているのに、手を振られて焦ったんだから。」
「あっはっは。それはすまない。あたしから見るとそのちゃちなスカーフじゃ全く隠しきれてないんだよ。」
俺はスカーフと眼鏡を取って、変装を解いた。
「なるほど。そういうことか。」
「だから、エルフの王は玩具を与えたつもりだと言ったろ?」
アマルガリタは俺たちに、彼女特製のフルーツジュースを振る舞ってくれた。
「収穫祭では様々なフルーツが手に入るからね。その場で即興で作るのが毎年人気さね。」
蒼のエルフの長が、毎年出店やってるのかよ。いやまあ、アマルガリタは神出鬼没だけど。
甘い物が得意でないウィンベルトも、彼女のジュースは気に入ったようだ。
「いや、これは美味いな。さすがエルフのジュースだ。」
「……そういうあんたは元冒険者だね。なるほど、今は宿屋の主人という訳、か。まあ、それも運命さね。」
ウィンベルトの眉がぴくっと上がった。アマルガリタの言い方が少し気に触ったのかもしれない。しかし彼は何も言わなかった。
俺はカリンと談笑しているアマルガリタに、リッチから聞いた話をしてみようかと考えていた。
アマルガリタは俺の視線に気づき、ふっと俺の目を見据えて言った。
「エイト。何か言いたいことがあるようだが、多分それは今あたしが聞く話じゃないようだ。」
「アマルガリタ!何か知ってるのか!?」
彼女は頭を横に振った。
「いいや。ただあんたも知る通り、あたしは蒼の、つまり叡智を司るエルフの長だ。今エイトがあたしに何か聞くと、それがエイトの知識の全てになっちまうかもしれない。それは違うと思ってね。」
そう言って、アマルガリタはニマリと笑った。ったく、このおばちゃんには勝てないな。
「ねぇ、アマルガリタさん。じゃあ貴女はなんでこちらに来たんです?」
カリンが聞くと、アマルガリタはカリンの方を見て笑った。
「もちろんあんたたちが歩いていたのを見かけたからさ。エイトは友達だからね。挨拶はしておかないと。」
「ええっ、俺たちって友達なの!?」
「おや、違うのか。それは残念だねぇ。じゃあ、今後は知人に格下げだ。」
「いや、友達友達!絶対友達が良い!」
必死でそう言う俺に、3人は爆笑していた。
「まあ、今あたしに言えることは、エイトはもう変装の必要なんてなくなるだろうってことさ。」
そう言ってアマルガリタはウインクしたが、俺たちにはその言葉の意味はまだ分からなかった。




