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俺は動き出した船の甲板で、日差しの反射に煌めく湖を眺めていた……
このアドベンチャーゲームブック《魔王の微笑とドラゴンの息吹き》の世界には、ド真ん中に広大な湖があり、その湖を取り巻くように4つの国がある。
そして、アドの解説によると、琵琶湖の18倍はあるというふざけたサイズのこの湖の、その真ん中には魔王城があるいうことだ。
その魔王城には、湖岸からは飛行魔術でも、船でもある程度の距離しか行くことができないらしい。
まあ、魔王城があるかもな時点で、そこまで行こうとする奴などいないだろう。
湖岸に近い幾つかの島では平和に暮らすことができるし、そこで農業や漁業を営んでいる人々もいたりする。
ホロウサでは、豪華客船でのクルーズも運航しているくらいだ。
なのでバローチェン男爵も、この湖岸沿いにビンスタスからスクロまでの航路は普通に利用しているんだろう。
俺は甲板の右側に移動し、あのずーっと向こうに魔王城があるのだろうかと見ながらぼーっと考えていた。
「シェイドさんは魔王城はあると思う?」
突然背後から声をかけられ、振り返るとテランがいた。
「テラン君、どうしたの?」
「魔王城はあると思うかどうか聞いたの!」
相変わらず憮然とした表情だが、可愛いな。5歳くらいかな。
「この湖の真ん中に魔王城があるって、本で読んだの。なのにパパは怖くないのかな。」
そうか、もしかしたらテランが機嫌が悪いのは、湖が怖いのか。
「うーん、誰も魔王城を見たことがないからね。あるかどうかは分からないな。でも男爵は安全だと思っているから、テラン君たちも船に乗せてるんだよ。」
テランの表情が少し緩んでいた。ひとりで悩んでいたのか、こんなに小さいのに。
その瞬間、船が大きくぐらりと傾き、俺は船外に投げ出されそうになったテランを咄嗟に抱きとめた!
「船長!どうしたのだ!」
男爵の大きな声が聞こえる。
「大丈夫です。少し波が荒れてまして。」
波!?ここは湖だぞ、そんな大きな波なんて……
俺は数ヶ月前に、アドに促されてチャーションから近くの湖岸に行った。
その時に会った住民は、引き潮が起こっていると言い、湖に引き潮?と疑問に思ったんだ。
やはり湖に異変が起きているのは間違いなさそうだ。
「シェイドさん、ありがとう。」
テランは震えながら、でもしっかり俺の顔を見てお礼を言った。
「ううん、びっくりしたね。」
俺はテランを立たせて手を繋ぎ、波に濡れた甲板から、船の中に戻っていった。




