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page.185

ということで今夜は作戦会議の為、リヴァリエル邸に泊まることになってしまった。バランさんに言ってないのに……


「バランのところには使いをやっておくから。とりあえず今夜は作戦会議だ!」


楽しくなってきたのか、何やら妙に興奮しているアルトに連れられ、俺たちは帰宅したリヴァリエル卿の書斎へと向かった。



「ふむ…別に構わんと思うが。」


リヴァリエル卿は、アルトの話に拍子抜けする程あっさり言った。


「リヴァリエル卿、本当によろしいのですか?」


「ああ、バローチェン家は子どもが多いので、いつもお付きの者も多い。入出国の時は人数を確認されるだろうが、祭りの最中にお付きのひとりが離れていても分からんだろう。」


明日朝にバローチェン家当主を呼んで話をするという。俺はリヴァリエル卿にお礼を言い、書斎を退出しようとしていたが、卿に呼び止められた。


「エイト君はずいぶんと顔色が良くなったようだ。」


そう微笑みかけられて、俺は感謝を込めてお辞儀をした。


「ありがとうございます、アルトのおかげです。」




すっかり顔見知りのメイドに、以前来た時に泊まっていた部屋に案内され、俺はとりあえず一息ついた。


「なんかスムーズなのは良いんだけど、知らない人にまで迷惑かけるみたいだ。」


『まあ良いんじゃないですか?どのみち行くんでしょう?なら楽な方がいいじゃないですか』


「いや、やっぱり気遣うし。」


『上手い話には乗っておきましょ』


「アドがそういうこと言うと、なんか怖いんだよ。」


だって、ビンスタスからフィルマルト王国との国境に近いスクロまで、通常馬車で5日はかかる。

家族連れでの移動では、更に数日見なきゃならないだろう。


「まあ明日、どんな話になるかだなぁ。」




翌朝、リヴァリエル邸を訪ねてきたバローチェン男爵の話は、完全に俺の予想外だった。



「船で…行く……?」


男爵は鷹揚に頷いた。少し小柄だが、とてもがっしりして日焼けした肌を持つ、スポーツマンタイプの渋い男性だった。


「左様。我が家は船を運航する資格を持っておりましてな。毎年収穫祭には、このビンスタスからスクロまで船で移動しております。おかげでいつもダルメル王からフルーツを購入してくるよう言いつけられておるのですよ。ハッハッハ。」


なるほど、船なら陸路より早い。ビンスタスからスクロまで1日半なら、かなりのショートカットだ。


「男爵。こちらの青年は息子の友人でシェイドと言う。フィルマルト王国に住む知り合いのところに急いで行かなければならないのだ。手数をかけるが、貴公の旅に同行させてもらえぬかな?」


リヴァリエル卿は俺を偽名で紹介した。男爵に迷惑をかけない為だ。


「ほう、いいですとも。ただ、首都では挨拶回りやら付き合いがいろいろ多くてお構いできないので、シェイド君には申し訳なく思いますが……」


男爵は俺を見ながら言った。嫌がられている風ではない。本当に俺に構う時間が無いのだろう。


「シェイドは知り合いのところに滞在するから大丈夫ですよ。行きと帰りだけ、友人の同行をお願いできませんか?」


これはアルトだ。男爵に向かい、直接お願いをした。


バローチェン男爵は、リヴァリエル卿とアルトを交互に見てから言った。


「リヴァリエル卿と次期当主からお願いされては、嫌とは言えませんな。このバローチェン、責任を持ってシェイド君をお預かりしましょう。」


「男爵、本当に助かる。来月にでも、また朝まで飲み交わそうじゃないか。」


「それは楽しみですな。ハッハッハ。」


談笑を始めたふたりを見ながら、アルトが小声で言ってきた。


「エイト、良かったな。これで安全に行けそうだ。」


「ああ、アルト。ありがとう。」



その後の話も簡単に打ち合わせ、しばらくアルトに付き合ってから、俺はリヴァリエルの馬車でバランさんの宿に送ってもらったのだった。


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