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数日後リヴァリエル邸を訪ねたら、今回はアルトにすぐ会うことができた。
彼は俺の顔を見るなり、にっこり笑った。
「すっかり元気そうだな、エイト。以前とは見違える程だ。」
「うん、アルトのおかげでゆっくり過ごせているおかげだよ。本当にありがとう。」
応接間で優雅に紅茶を飲むアルトは、静かにカップをソーサーに置いた。
「それで、俺を訪ねてきたということは、何か話があるのか?」
「そうなんだ。アルト、俺はフィルマルト王国に行ってくる。少し調べたいことがあるんだ。」
アルトは怪訝そうな顔をした。
「何故フィルマルトへ行くんだ?フィルマルトとドワーフが共同で採掘していた場所へでも行くのか?」
「いや、そこはしばらく前に行ったんだ。シェアハウスの皆と旅行の時にね。」
俺はアルトにその時のことを話した。
山間都市のシェリマルトの寂れよう。酒場で会った作業員の男性はこう言っていた。
『もう鉱石もほとんど見つからないところを調査して掘り返して…もう掘り尽くしたんじゃないかな。皆そう言ってる。』
「だからシェリマルトの採掘場へはもう行かない。行くのは別の場所なんだ。」
俺の言葉にアルトはしばらく考え込んでいたが、やがて口を開いた。
「俺も一緒に行くというのは……」
「ダメ。」
俺は即答した。
「アルトはさ、本当は次期当主としてかなり忙しいんだろう。前に皆でクルーズに行った時も特別に許可取ってたみたいだし、クルーズ終わったら馬車で急いで帰っていって。そんな多忙な人を、俺の旅には付き合わせる訳には行かないよ。」
アルトは少し驚いた顔をした。俺がそこまで考えているとは思わなかったのだろう。
「うーん…まあ、エイトの言う通りだ。」
アルトは苦笑しながら、俺の顔を見て言った。
「残念ながら、今はファルナートのビーチで遊ぶ時間は無いかな。」
「いや、そこも行かないから。」
「は!?フィルマルト王国でファルナートのビーチ以外にどこに行くと言うんだ!」
何故か身を乗り出して、妙に強い口調で言ってくるアルト。なんだかビーチにこだわりが強いような。リゾート好きそうだしな。
「今回俺が行くのは別のところだよ。多分1週間くらいで戻ってこれると思う。」
俺の言葉を聞いて、ソファに深く座り直したアルトは少し思案にふけっていた。
「それは、どうしてもやらなきゃならないことなのか?」
「うん、俺はそう思う。とにかくこの疑問を晴らさなきゃ、これ以上先に進めない気がするんだ。空振りかもしれないんだけど。」
俺は真剣な顔をしてそう言った。アルトはそんな俺の様子を見ていたらしい。
「……まあ、ようやく元気になって、やる気が出てきたようだから?」
アルトはにっこり笑って俺に言った。
「分かった。行ってこい、エイト。何か必要な物があれば言ってくれ。何でも用意するから。」
「あ、それは用意してあるんだ。多分、アレが一番良いと思う。」
思い出してクスクス笑っている俺を、アルトは不思議そうに見ていた。
「じゃあ、どうやって目的地に行くかどうかの相談くらいには乗ろうか。」
アルトは執事に、フィルマルト王国の地図を持ってくるよう命じた。
「相談?そりゃハクで……」
アルトは完全に呆れた顔で俺を見た。
「そもそも、お前とハクが大立ち回りをしたのがそのフィルマルトだろう?ハクを見た人も多くいるんじゃないか?」
「あ…いや、確かに……」
あの時俺は咄嗟に街中でハクを呼び出した。多くの人が俺たちを見ていただろう。
アルトは机上の地図をトントン指で叩きながらため息をついた。
「ここでまたお前とハクが現れてみろ。ようやく下火になってきた勇者の噂が再燃するぞ?それでも良いのか?」
「ゔっ…良くない……」
吟遊詩人が広めまくったせいで、表にも出られずにアルトのところに逃げ込んだんだった。
「まず目的はどの町なのか?滞在先はどこにするのか?そこまでのルートをどうするか?その辺りから確認していこうか。」
ごもっともすぎるアルトに、俺は一生頭が上がらないことを確信した。




