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page.183

数日後リヴァリエル邸を訪ねたら、今回はアルトにすぐ会うことができた。

彼は俺の顔を見るなり、にっこり笑った。


「すっかり元気そうだな、エイト。以前とは見違える程だ。」


「うん、アルトのおかげでゆっくり過ごせているおかげだよ。本当にありがとう。」


応接間で優雅に紅茶を飲むアルトは、静かにカップをソーサーに置いた。


「それで、俺を訪ねてきたということは、何か話があるのか?」


「そうなんだ。アルト、俺はフィルマルト王国に行ってくる。少し調べたいことがあるんだ。」


アルトは怪訝そうな顔をした。


「何故フィルマルトへ行くんだ?フィルマルトとドワーフが共同で採掘していた場所へでも行くのか?」


「いや、そこはしばらく前に行ったんだ。シェアハウスの皆と旅行の時にね。」


俺はアルトにその時のことを話した。

山間都市のシェリマルトの寂れよう。酒場で会った作業員の男性はこう言っていた。


『もう鉱石もほとんど見つからないところを調査して掘り返して…もう掘り尽くしたんじゃないかな。皆そう言ってる。』


「だからシェリマルトの採掘場へはもう行かない。行くのは別の場所なんだ。」


俺の言葉にアルトはしばらく考え込んでいたが、やがて口を開いた。


「俺も一緒に行くというのは……」


「ダメ。」


俺は即答した。


「アルトはさ、本当は次期当主としてかなり忙しいんだろう。前に皆でクルーズに行った時も特別に許可取ってたみたいだし、クルーズ終わったら馬車で急いで帰っていって。そんな多忙な人を、俺の旅には付き合わせる訳には行かないよ。」


アルトは少し驚いた顔をした。俺がそこまで考えているとは思わなかったのだろう。


「うーん…まあ、エイトの言う通りだ。」


アルトは苦笑しながら、俺の顔を見て言った。


「残念ながら、今はファルナートのビーチで遊ぶ時間は無いかな。」


「いや、そこも行かないから。」


「は!?フィルマルト王国でファルナートのビーチ以外にどこに行くと言うんだ!」


何故か身を乗り出して、妙に強い口調で言ってくるアルト。なんだかビーチにこだわりが強いような。リゾート好きそうだしな。


「今回俺が行くのは別のところだよ。多分1週間くらいで戻ってこれると思う。」


俺の言葉を聞いて、ソファに深く座り直したアルトは少し思案にふけっていた。


「それは、どうしてもやらなきゃならないことなのか?」


「うん、俺はそう思う。とにかくこの疑問を晴らさなきゃ、これ以上先に進めない気がするんだ。空振りかもしれないんだけど。」


俺は真剣な顔をしてそう言った。アルトはそんな俺の様子を見ていたらしい。


「……まあ、ようやく元気になって、やる気が出てきたようだから?」


アルトはにっこり笑って俺に言った。


「分かった。行ってこい、エイト。何か必要な物があれば言ってくれ。何でも用意するから。」


「あ、それは用意してあるんだ。多分、アレが一番良いと思う。」


思い出してクスクス笑っている俺を、アルトは不思議そうに見ていた。



「じゃあ、どうやって目的地に行くかどうかの相談くらいには乗ろうか。」


アルトは執事に、フィルマルト王国の地図を持ってくるよう命じた。


「相談?そりゃハクで……」


アルトは完全に呆れた顔で俺を見た。


「そもそも、お前とハクが大立ち回りをしたのがそのフィルマルトだろう?ハクを見た人も多くいるんじゃないか?」


「あ…いや、確かに……」


あの時俺は咄嗟に街中でハクを呼び出した。多くの人が俺たちを見ていただろう。

アルトは机上の地図をトントン指で叩きながらため息をついた。


「ここでまたお前とハクが現れてみろ。ようやく下火になってきた勇者の噂が再燃するぞ?それでも良いのか?」


「ゔっ…良くない……」


吟遊詩人が広めまくったせいで、表にも出られずにアルトのところに逃げ込んだんだった。


「まず目的はどの町なのか?滞在先はどこにするのか?そこまでのルートをどうするか?その辺りから確認していこうか。」


ごもっともすぎるアルトに、俺は一生頭が上がらないことを確信した。


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