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夕食はアルトも加わって4人での食事となった。
いくら3歳の頃から知っているとはいえ、リヴァリエルの次期当主のアルトと食卓を囲むことに、バランさんとクラリスさんは非常に恐縮していた。
ふたりのそんな様子を見かねた俺はアルトにこっそり言った。
「なあ、俺たちはリビングで食べないか?ふたりとも緊張してるじゃないか。」
「いや、俺はこういうのに憧れていたんだ。家じゃひとりで食べることも多いし。」
俺は諦めてその言葉をバランさんに伝えると、彼は何かショックを受けたようだ。庭師としてリヴァリエル家を見てきた彼には思うところがあったのだろう。
「エイトさん、皆で一緒にいただきましょう。」
そう言って、バランさんはクラリスさんに微笑みかけた。
「クラリス、皆に料理を出してくれ。」
今夜のメニューは、いろいろな野菜の素揚げだった。大きなお皿に盛られた素揚げは、分厚い衣をつけるフリットなんかとは違い、元々の素材の色がきれいだ。
ソースも数種類用意されていた。
トマトのソース、卵黄のソース、バランさんが作ったという少し辛味のある何かの野草から作ったらしいソース、ベリーの甘いソースなどが、それぞれの手元に置かれていた。
「今夜はお野菜の日なんですよ。もっと揚げますけど、足りなかったら言ってくださいね。」
そう言い、キッチンに立つクラリスさんの背中を、アルトは珍しそうに眺めていた。
「さあさあ、おふたりとも。熱いうちに召し上がってください。」
バランさんがそう言い、俺は遠慮なくナスみたいな野菜の素揚げにフォークを突き刺すと卵黄のソースに浸して口に入れた。うん、美味い。
アルトは俺にこっそり聞いてきた。
「野菜を揚げたものだけ……これがメインなのか?肉とか魚は?」
俺はきょとんとして言った。
「野菜の日って言ってただろ?メニューはこれだけみたいだよ。とにかくどれでも好きなものを取って、好きなソースに漬ければいいんだよ。とにかく食べてみてよ、美味いから。」
アルトは不思議そうに手を出した。そういえば、リヴァリエル家で食事をいただいた時は、毎回豪華なコース料理だった。
彼はミニトマトの素揚げをとり、辛味ソースにつけてから口に入れた。
「熱っ、辛っ!」
トマトの汁が口の中で弾けたらしい。俺は心配になりアルトを見たが、彼は目をキラキラさせていた。
「これは楽しいな!よし、他のも試そう。」
次々に野菜に手を出して食べる彼を、バランさんは微笑ましく見ていた。
クラリスさんはクリームスープと、バターで炒めたご飯にスクランブルエッグをたっぷり乗せたものも出してくれた。
「お野菜は足りてますか?ご飯の方にも、好みのソースをかけて食べてね。」
そうか、これはオムライスだ!
俺はトマトソースをかけて、スプーンで大きく取り頬張った。
「クラリスさん、これ美味しいです!」
アルトは俺を見ながら、卵黄のソースをかけてみていた。いや、卵に卵かよ。
「いや…確かにこれは卵の味が濃くて美味い。」
まあ、そうだろう。俺もやってみよう。辛いソースのも美味そうだ。
食後にサッパリとした果物のゼリー寄せをいただいて、俺たちはリビングに戻り灯りをつけた。
アルトは初めての食体験に感動したようだ。
「なるほど。その場で揚げたてのものを食べる。あれは凄いな。」
「うん、まあ小さな家庭ならできるのかな。」
俺は串揚げを食べた日のことを思い出した。母親は俺と父親のために次々と揚げていて、自分は後で少し冷めたのを食べていたようだった。
「アルト。そろそろ約束の時間だから用意するよ。」
「分かった。」
俺は昨日と同じように、お皿に紙を入れて水を注いだ。すると手のひら大の水鏡が空中に現れた。
「……ふむ、こういうものか。」
アルトが背後で呟くのを聞きながら、俺はマイルに呼びかけた。
「マイル!聞こえてる?」
水鏡にマイルの顔が現れた。
『エイトさん、聞こえてますよ。あれ…アルト?』
「マイル!こちらから先に固定するぞ。合わせろ。」
アルトが何かの魔法を放った。水鏡が震えたと思ったら、ぱんっと弾けるように部屋いっぱいに大きく広がった。まるで一緒にいるように、近くにシェアハウスの全員の姿が見える。皆、びっくりした顔だ。
『アルト。こちらも固定したよ。さすがだね。』
驚く俺にアルトはにっこりして言った。
「エイト。これで向こうの皆とちゃんと話せるぞ。2時間くらいは余裕だ。」




