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夜になるまで手持ち無沙汰になった俺は、リビングの本棚を眺めていた。
料理の本や刺繍の本は、きっとクラリスさんのものだろう。野草に関するのはバランさんのだな。これは後で読ませてもらおう。
俺はタイトルに『地図』と書いてある本を手に取った。それは50年ほど前に発行されたらしい、古めかしい本だった。
以前も思ったが、この国はとにかく南北に長い。行っても行っても抜けられない、まるで青春なんちゃら切符で行く静岡県みたいなんだ。
最初にあった国全体の地図を見てみると、最北の都市オクハリからクヌルギ、ホロウサ、首都ビンスタス、スクロと南下する。その距離、とにかく長い。
「やっぱりここからクヌルギまでは結構遠いよな。」
同じ国内でも、このビンスタスからマイルたちのいるクヌルギまでは、馬車でもおいそれと行ける距離ではない。ハクならかなり早く行けるけど。
「ん?なんかドワーフ国が大きくないか?」
地図で見ると右側に位置するドワーフ国。
この地図ではギルドで貰った地図より、ドワーフ国が大きく描かれているような。
「なあ、アド。これどう思う?ドワーフ国大きくない?」
『そうですね。これだと愛媛県というより四国全体みたいな。ミカン何個分になるか計算してみます?』
「いや、だからミカンから離れろ。」
俺は再度地図を見てみた。注釈には、これはいつだれが作成した地図かは分からないと書かれてあった。
「ふーん、適当に描かれているのかな?まあ実際ドワーフ国の大きさなんて分からないんだろうし。国交が無い時点でそんな情報なんてないだろうな。」
俺は地図の左側を見た。そちらは延々と湖が広がっている……はずだった。
「湖が描かれてないな。」
そこにはただ地面が描かれていた。
「湖まで描いてないなんて、結構雑な地図だな。まあひたすら水を描いてもしかたないか。」
アドに言わせると琵琶湖のざっと18倍の湖だ。そんなの描く気力がないのは分かる。俺ならめんどくさくて嫌だ。
それにしても、湖の真ん中に魔王城があると言われているけど、誰が確かめたんだ。考えたら、ドラゴンがいる火山島も湖のどこにあるか分からない。
後は昔のものらしい町の細々した地図ばかりだ。
俺の今いるこの町も載っている。
「うーん……」
俺は冷めたミルクティーの残りを飲み干した。
外を見ると日が傾き始めている中、クラリスさんが洗濯物を取り込んでいる。
俺はシーツを取り込むのを手伝おうと部屋を出た。
「まあまあ、エイトさん。取り込むのまで手伝ってくれるの?」
「うん、窓の外を見たら、クラリスさんが取り込んでいたから。」
クラリスさんにシーツを手渡すと、彼女は手際よく手元で簡単に畳んでいた。
「これは替えのシーツだから、また3日後のシーツの取り替えに使うのよ。あ、ベッドはどう?気持ちよく眠れてるかしら?」
「最高ですよ!ふかふかして、とても気持ちいいです。毎晩熟睡してます。」
「それは良かったわ〜。枕も大丈夫かしら?もし合わないと思ったらちゃんと言ってくださいね。詰めてある綿を調整するから。」
本当に実家感のある宿だ。ここを選んでくれたアルトには本当に感謝しなきゃ。明日会いに行こうかな。
俺はクラリスさんの代わりに洗濯かごを運びながら、きれいな夕焼けを見ていた。




