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昼食は予想と違ってパンケーキと、酸っぱい柑橘ソースのかかったサラダ、根菜のクリームスープだった。
「ふふ、シチューだと思った?あれは夜用なんですよ。良く煮込んで美味しくしておきますからね。」
クラリスさんは笑って言っていた。
ふんわりした米粉のパンケーキはひとりに3枚ずつ用意されていた。
テーブルにはパンケーキ用にと、バター、庭にあったベリーを潰したジャム、それとミルクソースが置いてある。
これは迷う。三段重ねで贅沢に食べるのもやりたいし、1枚ずつ別々にもしてみたい。
そんな俺の真剣な様子に、バランさんはおかしそうに笑っていた。
「エイトさん、そんなに悩まなくても、また来週パンケーキの日がありますんでな。ワシらはパンケーキが好きなんで、1週間に1回はこれですよ。」
「そうなんですね。えーと、じゃあ今日は三段重ねにしようかな。」
俺は温かいパンケーキの間にバターを挟んで溶かしてから、一番上にミルクソースとジャムをたっぷりと乗せた。
クラリスさんはパンケーキを頬張る俺を笑顔で見ながら言った。
「まあまあ、ノバンみたい。あ、ノバンってうちの息子なんですよ。ノバンがいつもその食べ方だったの。」
「そうだな、若い時の息子が帰ってきたみたいだ。」
微笑みあうふたりに、俺はノバンのことを聞いてみた。
「ノバンさんとは別々に暮らしているんですね。」
「ああ、アイツはフィルマルト王国の果樹園で働いているよ。そこで嫁さん貰って、たまに孫の顔を見せにくるのさ。」
「へぇ、じゃあ遠くに住んでるんだ。」
「さあさあ、温かいうちに食べなさい。冷めると味が落ちるから。」
バランさんは1枚にジャムをたっぷりかけて食べていた。来週はバランさんみたいに別々にしてみようかな。
クラリスさんが「お部屋で飲みなさいな」と温かいミルクティーを淹れてくれたので、それを持ってリビングに戻った。
「あー美味かった〜。」
満腹のお腹をさすりながら俺はひとりごちた。
息子さんは果樹園で働いているのか、あの研究所がある方面かな?
俺は研究所の所長のキースの顔を思い浮かべ、思わず一瞬身体が震えた。やっぱりなんか苦手だ。
ミルクティーをひと口飲み、俺はまた手帳を開き、何も書いていないページに書き付けていく。
今度は持ち物についてだ。
【ドワーフ国で確認するもの】
1.地図2枚のこと
2.おばばが遺した石
俺はおばばのことを思い出していた。昔はダルメル王国の王室お抱えの預言者。引退してからはイルー島で知る人だけに預言を与えていた預言者イグナだ。
おばばは俺に地図のことを話していた。魔族が隠し守っていたものだ。それを2枚揃えてからドワーフ国へ行けと言っていた。
それと箱に入っていた石だ。
おばばが亡くなった後、墓参りのつもりでおばばの住んでいた小屋を訪ねた時、偶然発見したものだ。いや…偶然じゃないな。俺宛のメモがついていたんだもの。
石だからドワーフに確認してもらえば?とアルトが言ったんだ。
次にドワーフ国に行くときに、このふたつは忘れちゃいけない。
「あ、そうだ。お酒買わなきゃ。」
ドワーフは酒好きだ。また話を聞くこともあるだろうから、酒をたくさん持っていこう。
あれ?そう言えば……
俺はマジックバッグを持ってきて、ドワーフのコインを取り出した。
アドの選択肢で見つけて、アルゴンのじいさんに鑑定してもらったものだ。じいさんはこう言っていた。
『おそらく300年以上前のドワーフのものじゃろう。お前も知っている通り、今はドワーフも我らと同じ通貨を使用しておるが、これはその前のドワーフが最も栄えていた時代のものじゃな。』
実際、じいさんにもドワーフの昔のことは分からないみたいだった。
そのコインを良くみると、ドワーフの横顔らしい男の顔が刻まれていた。ドワーフの王だろうか。
俺は金貨を取り出して比べてみた。金貨より少し大きく、そして重い。金でも銀でもないようだ。
俺はこれのことも書き加えた。
【ドワーフ国で確認するもの】
1.地図2枚のこと
2.おばばが遺した石
3.ドワーフのコイン
※お酒を買っていくこと
「よーし!これで完璧だ!!」
『ふーん、そうですか。なにか忘れていることがありませんか?』
「え?まだ何かあった?」
『ん〜……まあ、またすぐ思い出しますよ』
もう!こいつほんと不親切!!
俺は手帳を閉じて、夜になったらマイルと何を話そうかなと思いにふけるのだった。




