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「さて…と。」
俺は開いたページにペンを走らせた。
田崎瑛斗 ◯◯大学3年生 文学部
自分についてはこれだけでいいか。まあ自分だけが見るだけものに誕生日や趣味を書くのもな。
『あら?もらったチョコの個数とか、これまで付き合った彼女の名前とかは?』
「なんでそんなん書くんだ!というか、アド。記憶を整理する為に書くんだから、間違いないか付き合ってくれよ?」
『……彼女、いなかったんだ……』
「そ…そんなん今関係ないだろ!?ほっとけ!」
ここはアドによると、アドベンチャーゲームブックの中の世界。アドベンチャーゲームブックとは、読んでいくうちに、どのページに移動するかの『選択肢』が出てくる本らしい。らしいというのは、そんなジャンルの本があったのは聞いたことがあるだけ。読んだことはない。
この本の世界では、その選択肢はダンジョン内しか現れないというのを何度もアドに確認済み。理由は秘密だそうだ。
この本のタイトルは《魔王の微笑とドラゴンの息吹き》。いかにもファンタジーだ。
そしてこの本にはナビゲーターがいる。俺はそれをアドベンチャーゲームブックから名前を取って『アド』と読んでいる。そのアドは今俺の脳内にいる。でも勝手に俺の思考を読んだりしてはいないようだ。
『アドと呼ばれるのは気に入ってますが、あらためて思うと安直なネーミングですよね』
「うるさい、アド。それでだ…」
俺はこの本の中のクエストを全て終わらせないと元の世界に戻れない。終わった時点で、この本に取り込まれた時の時間に戻ることができる。
「これは間違いないよな。」
『くどいですねぇ。間違いありませんよ』
俺の設定はレベル30の勇者。何故か風魔法が使える。レベルが上がっているかとか魔法についてはステータス画面で確認できる。時間がある時にまた見てみよう。
《クエスト一覧》
1.聖剣をゲット
2.エルフの国の行方不明の姫を探し出して仲間になる
3.ドワーフの国の諍いを収めて仲間になる
4.呪いの山のドラゴンを倒す
5.呪いが解けたドラゴンが竜騎士となり仲間になる
6.ドラゴンに呪いをかけていた魔族の魔術師を倒す
7.魔王に邂逅する
1の聖剣はムユツミのダンジョンで見つけた。ちなみに選択肢で行った場所なので、何階層か分からない。とにかく未探査の深い場所だったようだ。
「なあ、アド。まだ聖剣は一度も使う機会が無い。ということは、ドラゴン攻略だけに使うってことでいいのか?」
『ふふっ、そうだといいですね』
「そうだといい…ってどゆこと?」
『それまでに、ドラゴン以上のものが出てこないといーなーって』
「勝手なフラグ立てるのヤメて。クエストに無いのは分かってるんだから。」
『でも今までクエストに無いことも起きてますよ?』
「それはアドが詳細教えてくれないからだろ!?もう~なんか邪魔しようとしてない!?」
アドは放っておいて、今は分かっていることをまとめよう。
2はエルフの国に行って、実は隠れんぼをしていただけの姫を見つけた。あの姫がドラゴン攻略のパーティーメンバーだと思うと、頭が痛くなるが。
『ユージンと聖女のこともメモっておいたらどうですか?』
そうだ。アドのざっくりした説明の中には無かったが、俺はドラゴン攻略のため賢者のユージンに仲間になってもらい、聖女テレンツィアの加護を受けている。ユージンはともかく、テレンツィア元気かな?
そして…なんやかんやあって、今が3のドワーフ編ってことだ。
『なんやかんやって…雑!』
「今はいいの!でさ、これが一番漠然としてるんだよなぁ……このドワーフのところだよ。何が諍いで、誰が仲間になるのかがさっぱり分からない。」
俺は案を書き出してみた。
★諍いとは?どのいがみ合いなのか?
1.王と王子
2.職人同士
3.人間とドワーフ
「いや、3は無いな。こんなこと、勇者になんとかできるわけがない。となると、1か2だな。」
どちらも原因はドワーフ国内の資源の枯渇だ。だからドワーフの王は俺に資源を探せなんて無茶を言ってきた。
それと、仲間になるのは?候補になりそうなのは、一番関わっているグァルグァイだけど。
「なあ、アド。ドワーフの仲間って決まってる?ユージンみたいにこっちから選ぶことってない?」
『ん〜それくらいは教えてあげましょうか。誰が攻略メンバーなのかは、ストーリー上始めから決まってます。勝手に選ぶことはできませんよ』
「そっか、ありがとう。じゃあ、アドが言わなかっただけで、ユージンは確定でいいんだな?」
『……だってなんかあの人変だから苦手』
「言わなかったのそんな理由!?」
ユージンが変人なのは否定はしないが。
とりあえず、『グァルグァイかも?』と書いて、ぐるっと丸をしてみた。
後、気になっていることはふたつだ。
1.ドワーフの王が『ダンジョンには資源がない』と断言していること
2.ガンラガンダが『ダンジョンは道』だといったこと
「うーん……なあ、アド。どう思う?俺はダンジョンの話がどうしても気になるんだけど。」
『ドワーフよりダンジョンですか?ふーん、まあいいですけど。時間はたっぷりありますので』
「またそれかよ!俺は早く元の世界に帰りたいの!!」
『……本当にそうですか?』
「どういう意味だよ!?」
部屋のベルがチリンチリンと鳴った。バランさんが帰ってきたんだな。続きはあとだ。
俺はペンを置いて、昼食の為に部屋を出た。




