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なんと俺は大切なことを忘れていた。
ダルメル王からドワーフの王に渡すようにと、大きな箱を預かっていたのに、そのことがすっかり頭から抜け落ちてしまっていたのだ。
これはヤバい。非常にマズい。
まあ、ここに来てずっとバタバタしていたのと、妙に緊張が続いていたから…と反省しながら、起きてすぐ、グァルグァイにグダァグダン王に会えないかと聞いてみた。
「親父に会いたいの?聞いてみるけど、今からなら多分夜になるだろうな。大臣に伝言頼んでおいて、俺たちはトコトコエクスプレスの準備を見に行っておかないか?」
「うん、ありがとう。助かるよ。」
そして朝食後に、俺たちはトコトコエクスプレスの本社を訪ねた。
「あ、グァルグァイ様。いらっしゃい。」
「先日頼んでたの、準備出来てる?」
「はい、準備はバッチリですよ。」
受付のコボルトに案内されて、俺たちは岩山の横手にある乗り場へと向かった。
「お客様には相当多めにお支払いいただきましたので、特急仕上げで特別なトコトコをご用意しました!タイヤも通常の4個から倍の8個に増やしましたので、スムーズな移動がお約束できます!またずっと座っているのも大変でしょうから、寝転べるようにも改良しました。寝る時にはこうやって蓋もできます!」
そこに置かれていたのはトコトコを大きくしたものの、やっぱり箱だった。
軽量化と運びやすさも考慮したのだろう、おれがなんとか寝転べるくらいには長くて細めのスタイル。
でもさ、この形状ってその……なんというか棺桶っぽくね?
「おお、これは良いじゃないか!ねぇ、エイトさん。」
「あ…あぁ、ありがとう。」
少し顔が引きつりそうになったが、いろいろ考えてくれたんだ、素直に感謝しておこう。どうせ寝る時にはテントを張ることだし。
そして、俺の旅の運用責任者となるコボルトが呼ばれた。
「あれ!旦那じゃないですか!俺ですよ!ほら、犬と間違えられてたのを助けてくれた時の!」
「あっ、もしかしてあの時のコボルトか!」
俺からすると正直、君も他のコボルトと見分けがつかないんだけど。
「あの後、白魔道士さんを寄越してくれたでしょう?おかげでスムーズに逃げられて感謝してます。」
子どもたちに犬と間違えられて可愛がられ、情が移って逃げるに逃げられなかったと悩んでいたコボルトだ。まさかこんなところで再会するとは。
「あの時バイト代も貰ったし、旦那の為なら頑張りますよ。何でも言って下さいね!」
「ああ、よろしく頼む。」
そんな話をする俺たちを見て、グァルグァイがキョトンとしていた。
「エイトさんって顔が広いなー。さすが勇者だ。」
やがて夜になり、また庭園の小屋でグダァグダン王と面会した。グォウヴォブ大臣も一緒だ。
「すみません。ダルメル王から預かった物をお渡しするのを忘れていました。直接お渡しするようにと言われています。」
俺はマジックバッグからその重い箱を取り出し、テーブルにどんと置いた。
「……ダルメル王が?」
王は不審げにその箱を開けた。グォウヴォブも一緒に覗き込む。
「ふん……」
王は箱から酒のボトルを1本取り出した。重いと思ったら、やっぱり酒かよ。
他には何やら書類の束が入っていたようだ。
ランプにかざしながら書類を読む王の顔つきが、徐々に厳しいものへと変わってゆく。
そして王は黙ってそれをグォウヴォブに渡した。
彼もそれをじっくり読み、読み終えると王に頷いた。
え?何??なんか怖いんだけど。
グォウヴォブが厳かに口を開いた。
「エイト殿。貴方はこの件には関わらない方が良い。王にこれを渡したことは忘れなさい。」
「いや、忘れるも何も、中身知りませんけど?」
「ああ、知らない方がいいだろう。」
王が深く頷いた。
なに?何?余計に気になるんですけどーーー!
「なにはともあれ、ダルメル王が寄越したこれは良い酒だ。なんとバルマス王国の貴重な年代物が5本だぞ。よし、まずは1本皆で呑むとするか。グォウヴォブ、グラスを出してくれ。」
酒が5本!?だから重かったのか。
それよりその文書の話が気になるんですけどーーー!!!
俺の叫びは声にならないまま、夜の闇へと溶けていった。




