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page.167

なんと俺は大切なことを忘れていた。


ダルメル王からドワーフの王に渡すようにと、大きな箱を預かっていたのに、そのことがすっかり頭から抜け落ちてしまっていたのだ。

これはヤバい。非常にマズい。


まあ、ここに来てずっとバタバタしていたのと、妙に緊張が続いていたから…と反省しながら、起きてすぐ、グァルグァイにグダァグダン王に会えないかと聞いてみた。


「親父に会いたいの?聞いてみるけど、今からなら多分夜になるだろうな。大臣に伝言頼んでおいて、俺たちはトコトコエクスプレスの準備を見に行っておかないか?」


「うん、ありがとう。助かるよ。」



そして朝食後に、俺たちはトコトコエクスプレスの本社を訪ねた。


「あ、グァルグァイ様。いらっしゃい。」


「先日頼んでたの、準備出来てる?」


「はい、準備はバッチリですよ。」


受付のコボルトに案内されて、俺たちは岩山の横手にある乗り場へと向かった。


「お客様には相当多めにお支払いいただきましたので、特急仕上げで特別なトコトコをご用意しました!タイヤも通常の4個から倍の8個に増やしましたので、スムーズな移動がお約束できます!またずっと座っているのも大変でしょうから、寝転べるようにも改良しました。寝る時にはこうやって蓋もできます!」


そこに置かれていたのはトコトコを大きくしたものの、やっぱり箱だった。

軽量化と運びやすさも考慮したのだろう、おれがなんとか寝転べるくらいには長くて細めのスタイル。 


でもさ、この形状ってその……なんというか棺桶っぽくね?


「おお、これは良いじゃないか!ねぇ、エイトさん。」


「あ…あぁ、ありがとう。」


少し顔が引きつりそうになったが、いろいろ考えてくれたんだ、素直に感謝しておこう。どうせ寝る時にはテントを張ることだし。


そして、俺の旅の運用責任者となるコボルトが呼ばれた。


「あれ!旦那じゃないですか!俺ですよ!ほら、犬と間違えられてたのを助けてくれた時の!」


「あっ、もしかしてあの時のコボルトか!」


俺からすると正直、君も他のコボルトと見分けがつかないんだけど。


「あの後、白魔道士さんを寄越してくれたでしょう?おかげでスムーズに逃げられて感謝してます。」


子どもたちに犬と間違えられて可愛がられ、情が移って逃げるに逃げられなかったと悩んでいたコボルトだ。まさかこんなところで再会するとは。


「あの時バイト代も貰ったし、旦那の為なら頑張りますよ。何でも言って下さいね!」


「ああ、よろしく頼む。」


そんな話をする俺たちを見て、グァルグァイがキョトンとしていた。


「エイトさんって顔が広いなー。さすが勇者だ。」




やがて夜になり、また庭園の小屋でグダァグダン王と面会した。グォウヴォブ大臣も一緒だ。


「すみません。ダルメル王から預かった物をお渡しするのを忘れていました。直接お渡しするようにと言われています。」


俺はマジックバッグからその重い箱を取り出し、テーブルにどんと置いた。


「……ダルメル王が?」


王は不審げにその箱を開けた。グォウヴォブも一緒に覗き込む。


「ふん……」


王は箱から酒のボトルを1本取り出した。重いと思ったら、やっぱり酒かよ。


他には何やら書類の束が入っていたようだ。

ランプにかざしながら書類を読む王の顔つきが、徐々に厳しいものへと変わってゆく。


そして王は黙ってそれをグォウヴォブに渡した。

彼もそれをじっくり読み、読み終えると王に頷いた。


え?何??なんか怖いんだけど。


グォウヴォブが厳かに口を開いた。


「エイト殿。貴方はこの件には関わらない方が良い。王にこれを渡したことは忘れなさい。」


「いや、忘れるも何も、中身知りませんけど?」


「ああ、知らない方がいいだろう。」


王が深く頷いた。


なに?何?余計に気になるんですけどーーー!


「なにはともあれ、ダルメル王が寄越したこれは良い酒だ。なんとバルマス王国の貴重な年代物が5本だぞ。よし、まずは1本皆で呑むとするか。グォウヴォブ、グラスを出してくれ。」


酒が5本!?だから重かったのか。

それよりその文書の話が気になるんですけどーーー!!!


俺の叫びは声にならないまま、夜の闇へと溶けていった。


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