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「鉱石だけではない。良質な鉄も、銅も……我々が長年採ってきたものが、我々の代でことごとく採れなくなってしまったのですよ。」
酔い潰れたのか寝てしまったグダァグダン王は置いといて、グォウヴォブ大臣が俺に説明を始めた。
「当然ですよね。資源には限りがある。これまで当然のようにあったものも、消費してしまえばそれで終わりなのです。」
悲しげに淡々と語るグォウヴォブに聞いてみた。
「あの、以前、フィルマルト王国と合同で採掘してましたよね。そこも資源が無くなって撤退したと聞きましたが。」
「ああ、それは外で活動しているドワーフから、資源がありそうだと情報があったのでね。試してみましたが、ほぼ空振りでしたね。」
そうか、稀にだけど冒険者になっているドワーフがいたりするもんな。里帰りすることもあるだろう。
「資源!鉱山!鉱石!我々にはそれが要る!!なんとかならんのか!!!」
突然ガバッ!とグダァグダン王が起き上がって叫んだ!
「うわっびっくりした!」
思わずビクッとした俺を、王は据わった目で見ていたた。そのまま、地を這うような低い声で言う。
「お前がこの国に滞在するのを許可してやる。どこをひっくり返しても構わん。なんでもいいから我々の為に資源を見つけて来い。」
「いやそれムチャ振り!ドワーフが総出で探して無いんでしょ!?俺が見つけられるとでも!?」
「なんでも見つけるのが冒険者だろう!」
あ……なんか前もこんなこという奴いた。いったい冒険者をなんだと思っているんだ。
それだけ言うと、王はまたバタッと寝てしまった。
………
………えーっと?
「あの……グォウヴォブさん?……これって本気じゃないですよね?」
「王がこう言ったら本気ですね。我々もなんでも協力しますので、どうかお願いいたします。」
深々と頭を下げるグォウヴォブに、俺は絶句するしかなかった。
「いや、無理っしょ?だからもう、今後は劣化品でも作っていくしかないんだって。」
眠る王を置きっぱなしにして、最初に通された広間に戻ると、そこにはグァルグァイが待っていた。
「ここに来る時に、ボロボロになった山とか見えたでしょ?とにかく掘って掘って掘り尽くしたんだよ。今更何も出てこないって。」
「そうか。やっぱりもう手は尽くしているんだな。」
俺が答えると、グァルグァイがうんうんと頷いていた。
「昔ながらの物を作りたい堅物職人たちが、なんとか資源を用意しろと言ってくる。それは無理だと言っても聞かないからさ。若い職人は理解して劣化版を作っているが、それを邪魔しにくる古い職人と毎日大揉めだ。それを諫めるのに必死という訳。」
そうか、これがこの本のストーリーにある『ドワーフ国の諍い』なのかも。これはかなり大変だな。
「まあ、親父がそう言ったなら仕方ない。エイトさんはとりあえず国の中の調査をしてこなきゃな。」
「えーーーかなり難しくないか?」
「だろうな。」
かわいそうな人を見る目になってるグァルグァイに、俺は泣きそうな目を向けた。
「とりあえず、専属のトコトコを用意しよう。」
そう言って立ち上がったグァルグァイに、俺は仕方なくついていった。
着いた先は、すぐ近くの小さな岩山にある『トコトコエクスプレス』の本社だった。
「グァルグァイ様、こんにちは。今日はどちらへ?」
受付のコボルトが元気に声をかけてきた。
「今日は、俺の用事じゃないんだ。社長か責任者を呼んでくれるかな?」
「社長は今居ないので、責任者を呼んできますね。」
トコトコと奥へ行くコボルトを見て、トコトコエクスプレスの名前ってぴったりだなと吹き出してしまった。
グァルグァイは俺を見て言った。
「ようやく笑った。よほど緊張してたんだな。」
あ…そういえば……
「そうだな、そう言えばこの国に来てから緊張し放しだ。」
「お待たせしました。何かご用命でしょうか?」
責任者らしいコボルトが来た。俺にはさっきの受付のコボルトと全く見分けがつかないのだが。
「うん。実はこちらの冒険者のエイトが、王命で国中回るんだよ。だから専属のトコトコをつけたいんだ。最大サイズのトコトコと、運用責任者のコボルト1名、運転用コボルトは出先で交代の1日2名。お願いできるかな。」
「ふむ……大丈夫でしょう。ただし特別条件での契約になりますから、保険付きで高額になりますよ。」
「高額か…どれくらい?」
眉を寄せて悩むグァルグァイに代わり、俺はコボルトの責任者に聞いてみた。
「これぐらいで足りると思う?バルマス王国で褒賞で貰ったものだけど。」
俺はマジックバッグから、宝石を入れてある袋を取り出した。大小様々な物がある中から、大ぶりの宝石を3個、小さめを10個取り出した。
バイナとダンジョンに潜った時に取ってきたものだ。バルマス王が褒賞とは別に、半分は自分のものにしてよいと太っ腹だったのだ。ありがたい。
交換レートの良いフィルマルト王国に行った時、全部換金しようかと思っていたけど、念の為まだいくらか残してある。
「ええっ、エイトさん良いんですか?こんなに……」
「ひょえ!これは凄い、10年貸切でも充分すぎるほどです!いつまでにご用意すれば良いですか?」
いや、10年も居るつもりはないが、さすがキラキラするものが大好きなコボルトだ。驚くグァルグァイをよそに大興奮している。
「分かった。じゃあ3日後にするから用意しといてくれな。」
グァルグァイはコボルトにそう言い、俺たちはそこを後にした。
「次はエイトさんの部屋だな。めんどうだから、俺と弟と一緒と部屋でいいか?」
「俺は良く分からないから任せていいかな?」
ドワーフの王族ってどんな部屋に住んで居るんだろう?それもドキドキだな。
先程の岩壁に戻り、グァルグァイは扉のパズルを合わせていた。
扉が開き、今度はまっすぐではなく右に道なりに歩くと扉があった。
「中を歩く時は必ず誰かと一緒に。間違えると延々とさまよい続けることになる。」
また3つほど扉をくぐり、最後に抜けたところの扉を抜けると広いスペースがあった。
見回してみると、箱や袋やタンスみたいなものが置いてあったが、テーブルやベッドみたいなものはない。
「ここが俺と弟の部屋だ。」
「……へ〜、人間界とはずいぶん違うな。」
部屋というより倉庫みたいなんだけど…と思いつつ、さすがにそうは言えない。
「ああ、例えばベッドとかか?俺たちは壁に寄りかかるか、直接転がって寝ているからな。安心しろ。壁や床の衛生管理はしっかりしているから。エイトさんにはマットを調達してくる。」
「ありがとう、でも宿泊用のセットの中にあるから大丈夫だよ。」
「そうか、冒険者は用意周到だな。」
俺はとりあえず床に座り込んで一息ついた。
本音を言えばちょっとひとりになりたかったが、何も分からない国で今は保護されているようなものだしな。
「この隣に小部屋がある。後でそこにガンラガンダを呼ぶから、この国のことや注意することを聞くといい。それまで仮眠でもすればどう?親父の酒の相手もしたし、疲れているだろう。」
「ありがとう、じゃあ少し横にならせてもらうよ。」
俺はマジックバッグからマットを取り出し、部屋の隅に敷いて寝転んだ。
うとうとと意識が消えていく中、グァルグァイが部屋を出ていく気配をぼんやり感じていた。




