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俺たちはグァルグァイとまったり雑談することにした。
そもそもザガールドとアルトは親善の為に来ているんだもの。王とは上手くいかなかったとはいえ、王子とはお互いできるだけ印象良くできれば良いだろう。
グァルグァイが出してくれた茶菓子は、ほんのり甘い味がする小さな丸いもの。クッキーでもないし…あ、あれだ。小さい頃に食べた赤ちゃん用のボーロみたいな!
「今はこんなものしかなくてすまんな。最近そちらに買い出しに行けてなくて。」
苦笑しながら言うグァルグァイ。
「え?ダルメル国に買い出しに来ているのか?」
アルトが質問すると、グァルグァイは頷いていた。
「ああ、国から出ることは良くないとされてるけど、商品の出荷の時以外にもたまに外出することはあるんだ。俺自身は人間の国は好きだ。だから今日はちゃんと話をしろと言ってたんだけど、親父はとにかく頭が固い。」
お菓子を摘みながら、彼は話を続けた。
「俺はビンスタスで食うケーキやクッキーが好きで。ヤカテムカフェのケーキセットなんか最高だな。」
「あ〜ヤカテムか!」とザガールド。
「うん、あの店は良い。アム茶にフィンランのセットもいいよね。」
アルトもよく知る店らしく、3人で盛り上がってる。皆、甘いものが好きなのか。じゃあこれはどうだろう。
「グォウヴォブさん。皆お菓子が好きみたいだから、俺の持っているのを出しても良いですか?」
「構いませんよ。こちらで一応毒見しますが。」
「じゃあお願いします。」
俺はジェリコが別れ際にくれた米粉のクッキーを取り出した。元々日持ちするものだし、マジックバッグは常温のものは保存可能だ。
「クッキーだ!」
毒見の済んだクッキーを、借りたお皿に乗せて出すとグァルグァイが反応した。
「うん、ジェリコ作の米粉のクッキーだよ。」
「えっ、ジェリコの!食べる食べる。」
アルトがさっそく手を伸ばし、ザガールドも続く。グァルグァイはひと口食べてびっくりしていた。
「これが米だと?甘くてサクサクしていて美味い。しかし米でお菓子が作れるのか?米なら安く手に入るし、これは良い。作り方を教えてもらえないかな……」
「ジェリコなら喜んで教えてくれると思うけど、ちょっと聞きに行くには遠いかな。」
俺が考えていると、グァルグァイは手を振って言った。
「いやいや、今すぐって訳じゃない。今のドワーフ国は余裕が無いから、米でこんなのをたくさん作れるなら良いかなって。」
「余裕が無い?それってどういう……」
「ウホンウホン!」
突然グォウヴォブが大きな咳払いをした。グァルグァイは彼を見て不満げな顔をした。
「グァルグァイ様。それは王の許しなしで話すことはなりません。」
グォウヴォブは俺を見て言った。
「エイト殿。貴方はこれからこの国に滞在されるとのこと。いろいろなことを見聞きされるでしょうが、まずは王の話を聞いてからにして下さい。よろしく頼みます。」
「あ、はい。承知しました。」
それから、グォウヴォブや他の2名のドワーフも歓談に加わり、一緒にクッキーを食べ、一般のドワーフはどう暮らしているかとかを軽く教えてもらったり、ザガールドが民間健康法の持論を展開していた。グァルグァイはザガールドの特製のお茶の話にも興味を持ったようだった。
2時間くらい経った時。ではそろそろ時間ですな…と、俺たちはグォウヴォブたちに追い出されるように、またトコトコエクスプレスで国境の門まで送ってもらうことになった。
グァルグァイは城の外まで見送りに出てきてくれて、ザガールドに「どうやったらそんなにデカくなるんだ!」と聞いて笑ってた。
グォウヴォブはアルトに話しかけて、無礼を詫びていた。
「アルティウス殿。我々はエルフとは仲が悪いが、貴方はあくまで人間だ。エルフと関係ある家だとはいえ、礼儀正しい貴方を嫌っている訳ではないことは分かってください。」
「ええ、俺は気にしてませんよ。また王とお話できることを願っています。」
そう言い、アルトは爽やかに笑った。
俺たちは国境の門に付き、ザガールドとアルトは迎えの騎士と合流した。
「エイト。しばらく会えなくなるけど元気でね。」
「何か問題があったらすぐ出てくるんだぞ。」
帰ってゆくふたりに励まされて、笑顔でありがとうと手を振るうちに、国境の門が閉まりふたりの姿は見えなくなった。
俺はしばらく門を見ていたが、グォウヴォブを振り返って手を差し出した。
「グォウヴォブさん、この国にしばらく滞在させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。」
さあ、ドワーフ国での冒険の始まりだ。
実際何があるのか不安でたまらない。
『エイト。ようやくドワーフ国ですね。楽しみですか?』
脳内のアドが話かけてきたので、周りに聞こえないようこっそり返事した。
「うーん…正直言うと不安だ。アド、よろしくな。」
『ふーん。エイトは私がいないと駄目なんですかねー』
いつもの憎まれ口に安心する。例えアドが脳内に居るだけの、この本のナビゲーターだとしても、ひとりじゃないってありがたい。
「ふふっ、そうかもな。」
そう言って笑うと、グォウヴォブに聞こえたらしくこちらを見た。
「エイト殿。何か?」
「いいえ、何でもないです。これからすぐ城に戻るんですか?」
「はい、やっと王とゆっくり話をしてもらえますな。」
にっこり笑うグォウヴォブに、「はあ…」としか返事のできない俺だった。




