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荒涼とした土地を進む中、向かう先に大きな岩壁が見えてきた。RPGには詳しくないが、ああいうところがドワーフの城ってイメージだな。
とか考えていると、まさにその岩壁の前に止まった。
テンプレかよ。
「皆様。お降りください。」
グォウヴォブが声を掛けてきた。コボルトに礼を言ってトコトコから降りると、ザガールドが、俺たちの方に寄ってきて小声で話かけてきた。
「これはどう見ても岩壁だな。入り口などどこにも無い。まさか罠ではないのか?」
「いや、今更疑っても仕方ない。まず様子を見よう。」
アルトは冷静に周りを見ていた。伏兵などがいないか確認しているのだろう。
岩壁を見て俺は思い出していた。アドにダンジョンに行くと言われて、岩壁のところに連れていかれ、入り口代わりに選択肢を選ばされて罠にかかったこと。
あの時、聖剣をゲットしたんだった。なんかもうスゲー昔のことな気がする。
そんなことを考えていたら、グォウヴォブが岩壁に触れ、何やら複雑に手を動かしていた。まるでパズルを合わせるような動きだな。
するとゴゴゴ……と大きな音を立てて、なんと岩壁に扉が現れた!
……扉ちっさ!そして低っっ!!
国境の門とはあまりにも違うくね???
それは俺たちから見ると子どもなら通れるような、あまりにも小さな扉だった。
……いやまあ、身長130センチくらいのドワーフたちの出入り口な訳なんだからそりゃ小さいよな。
でももしかして、中はずっと腰をかがめて移動?
キツい…それはあまりにもキツいだろ。
ザガールドとアルトもそれを想像したのか、あからさまに顔が引きつっている。
グォウヴォブは、扉を凝視している俺たちを振り返って嬉しげに言った。
「ほう、我々ドワーフの技術にさっそく感心してくださったようだ。さあ、中へどうぞ。」
「……はい、ありがとうございます。」
アルトはなんとか固い笑みを浮かべてみせた。
俺たちが腰をかがめてその扉の中に入ると、その先は広い洞窟のような空間だった。
「……助かった………」
身長190センチのザガールドの、心の底から安心した声が聞こえた。
洞窟の中は道がいくつか別れているようだが、俺たちはまっすぐ奥へと案内された。
通路のあちこちに掲げられている灯りは、骨董品のような凝ったデザインの魔石ランプだ。外の世界で売られているものより遥かに明るく、まるで昼間のように照らされる。これもドワーフの技術力だな。
しかし壁には、人間の国やエルフの国のような彫刻や装飾が全く無い。これもドワーフらしいと思った。
しばらく歩いた俺たちは、やがて大きな広間のような場所に出た。もしかして、ここが王宮でいう玉座の間にあたるのだろうか。
その場の奥には、ドワーフの王と思われる横柄そうな壮年の男性と、若者らしい人がいた。何か揉めているのか、激しく言い争っているようだ。
グォウヴォブが俺たちを振り返った。
「ここは、面会に来た者が王に挨拶する場です。王宮は複雑な作りになっておりましてな。失礼と思われるかもしれませんが、今回はここでお願いします。」
「なるほど、警戒はもっともだ。私たちは構わんよ。しかし、先客があるようだが。」
「ああ…あれは第一子のグァルグァイ様です。まあ、いつものことでして。」
第一子ということは王子か。グォウヴォブが申し訳なさそうに言い、そのまま俺たちを広間の中へと誘った。
「王よ。ダルメル国からの使者をお連れしたぞ。」
「おう、グォウヴォブ。分かった。」
王と呼ばれた男は、若いドワーフとの話をやめてこちらに近づいてきた。冷たい目つきで俺たちを眺め回してから、吐き捨てるように言った。
「ワシが王のグダァグダンだ。何でぞろぞろと来るんだ!親善などと言われても意味が分からん。ダルメル国は何を探ろうとしている。わざわざ難癖でもつけにきたのか!!」
「こら親父!失礼だろうが!!」
やはり横柄に話す王の後ろで、若者が叫んでいた。
喧嘩を再開した親子を放置して、グォウヴォブは広間の中央にある円卓に、俺たちに座るように進めた。
当然のように椅子も低い。ザガールドはどう座るか苦心しているようだ。
「さあさあ、王よ。いつまでもヘソ曲げてないでさっさと座んなさい。グァルグァイ様も。」
グォウヴォブと一緒にいたドワーフふたりは、王と王子の為に椅子をひいた。
渋々という感じで並んで座るドワーフのふたりだが、かなり印象が違うな。
グダァグダン王はいかにもな見た目のドワーフだ。髭をたっぷりと蓄え、いかつい眉毛を動かし、大きな目を俺たちと合わせようとはしない。
グァルグァイには髭が無い。きれいに剃っているようだな。眉毛は細くして、後ろだけ刈り上げにした髪を三つ編みにしサイドに流している。大小の変わった形の耳飾りを付けているのか。
それ以外はドワーフらしいがっしりとした体形だが、人間の街の若者にいそうでもあるな。
彼は珍しそうに、背の高いザガールドを見つめていた。
アルトが俺たちに目配せして、王に向かい静かに語りだした。
「偉大なるドワーフのグダァグダン王にお目にかかり光栄……」
「エルフもどきの魔法使いが偉そうに!」
アルトの挨拶を遮るようにグダァグダンが叫んだ。
アルトは王のその剣幕に一瞬怯んだが、落ち着いて言葉を続けた。
「光栄に存じます。我々はこちらの冒険者エイトの友。彼がドワーフ国を訪問すると言うことで、我々も是非にと、今回お許しをいただきました。王の寛大な計らいに、心より感謝申し上げます。」
王はアルトのことは完全に無視して、ザガールドを見た。
「お前がダルメル王の血筋の者か。何番目の王子なんだ?30番目くらいか?」
ザガールドは少しむっとしたようだが、努めて冷静に答えた。
「恐れながら王に子は30人もおりません。」
険悪なムードにグォウヴォブが割って入った。
「グダァグダン王よ、そのような態度ではこの若者たちが話もできないではないか。わざわざここまで来たのだ、ちゃんと話そうという気はないのか。いくら人見知りだからとはいえ。」
いやいや、人見知りだからって、表敬訪問に来た相手に態度が悪いにも程があるだろ。
グォウヴォブの説教に、グダァグダン王はぷいと顔を反らしたかと思うと、そのまま広間を出ていってしまった。
「すみませんな、王はどうにも照れ屋の恥ずかしがり屋でして。グァルグァイ様、代わりに彼らの接待をしていただけますかな?」
あれが照れなんて可愛いものか?
グォウヴォブの言葉に、グァルグァイは眉をひそめた。
「本気か?俺には接待や外交なんかできないぞ。」
「王よりマシです。」
そのやりとりに俺は思わず吹き出してしまった。王子はキョトンとして俺を見たが、それで少しリラックスしたようだ。
「じゃあ仕切り直すか。俺は第一子のグァルグァイ。弟がひとりいるがまだ幼い。お前たちには兄弟はいるのか?あ、グォウヴォブ。飲み物がまだだな、持ってきてくれ。あと茶菓子もな。」
「ああ、これは失礼。かしこまりました。ウルィルウ、茶の用意を。」
グォウヴォブは広間の隅に控えていた、女性らしいドワーフのひとりに合図をした。
はぁ……やっとこれから普通に話ができそうだ。




