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俺たちの乗った馬車は、ドワーフ国の国境の門に到着した。
この国には、ほんの一部の行商人しか行き来していないという情報は本当らしく、俺たち以外の馬車の姿は無い。
俺たちと同乗していた騎士が馬車を降り、門の前に立つドワーフと話をした。すると大きな音を立てて、ゆっくりと石造りの門が開いていった。
魔法も使わず、こんな大きな門を動かすのはどんな動力なんだろう?
扉の先には如何にもドワーフという男性が3人と、何故か多くのコボルトたちがいた。
「コボルトってたまにしか見かけないけど、ここに住んでいたのかな。犬みたいで可愛いよな。」
アルトはコボルトの姿を見て目をキラキラさせている。もしや犬好きなのか?
「ザガールド様。ここから先は御三方だけとのことです。入出国の証明書を彼らにお見せ下さい。我々はこの門の外で、王子が戻られるまで待機しております。」
話を終えて戻ってきた騎士は、恭しく礼をすると俺たちの後へと下がった。
「ありがとう、ルーモン。では行ってくるとするか。」
ザガールドが先陣を切って歩き出し、待っていたドワーフの前に立った。
「……王族というから、ヒラヒラしたやわな服装でいらっしゃるかと思ったが、貴方はなかなか分かっているようですな。」
真っ白な髭のドワーフが感嘆したように言った。そのザガールドの服装は、実は鷹狩りに行く時のものだそうだ。高貴さは損なわず、かつ機能的なものだ。
「ワシは大臣のグォウヴォブと言う。我々3名が此度の表敬訪問の案内役を任されておる。」
「名乗り感謝する。私はダルメル王国第五妃の長子、ザガールドと申す。こちらはリヴァリエル卿の子息アルティウス殿と、冒険者のエイト殿だ。手数をかけるが案内よろしく頼む。」
グォウヴォブはザガールドには笑顔を見せたが、アルトにはチラッと目線を向けただけで何も言わなかった。まあアルトは当然のようにヒラヒラとした上品な服にクリーム色のマントを併せているから気に入らないのか。
俺はもちろん冒険者の出で立ちだが。
しかしさ、ドワーフの名前って、どうしてこんな発音が難しいものばかりなんだよ。ぐわーぐおーどわーって感じのものが多すぎる。
「……なあ、エイト。いっそザガールドに外交も丸投げするか?ちゃんと挨拶できているようだし、さっそく好感持たれたようだ。」
アルトが囁いてくるが、さすがにそこまで任せていいのだろうか。
「さて、王の館まではこちらの乗り物で移動する。」
グォウヴォブが示したのは、木製の大きな箱にタイヤがついたような乗り物だ。
「我らの国には馬を置いておらん。なので、コボルトが運営している『トコトコエクスプレス』と契約している。」
トコトコエクスプレス……速いのか遅いのか分からんが、言葉の響きが秀逸だ。
「このトコトコと呼んでいる乗り物で、この国の全土を移動しているのだ。人間用の物が無いので貴方たちには乗り心地が悪いかも知れんが、大きめのトコトコと最高級の体力のコボルトを用意した。すまんがひとりずつ乗ってくれ。」
促されて乗ってみると、中には椅子のように腰をかけるところがあるだけだ。この乗り物を2体のコボルトが引っ張って移動するんだな。うは、なんか楽しい。
ザガールドとアルトももの珍しさに笑顔になっている。
大臣たちは3人でひとつのトコトコに乗りこんでいた。
「では出発する。コボルトたちよ、頼んだぞ。」
俺たちは思ったよりスピードが出るトコトコで、館に向かい進み始めた。
なるほど、これは犬ぞりみたいなものなんだな。元々犬に見えるコボルトたちが、四つん這いで乗り物を引っ張っている。道は決して良くないが、ガタガタ揺れることもない。なかなか快適だ。
そんなコボルトたちをしばらく眺めていたが、俺は周りの風景の違和感に気づき始めていた。
山だったもの、というような、ボロボロに切り崩されたような地形があちこちに見え、森のような木々はほとんど見当たらない。
だだっ広いだけの死んだ土地。そんな感じがしていた。




