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今日はいよいよドワーフ国へと出発だ。
朝食後、アルトと俺はリヴァリエル卿に馬車で王宮へ送ってもらった。
案内された王宮の謁見の間には、既にダルメル王と王妃の姿、ザガールドの母の第五妃や他の重鎮らしき方々が並んでいた。
「では、ザガールド。アルティウス。エイトよ。ドワーフ国への表敬訪問を頼んだぞ。アーガス、エイトにこれを。」
アーガスと呼ばれた先日の渋い事務官は、俺に両手で抱えるくらいの大きさの箱を渡してきた。やけに重いなと思いつつ、俺はそれをマジックバッグに入れた。
「それはドワーフの王に直接渡してもらいたいものだ。よろしく頼んだぞ。」
「はい、かしこまりました。」
俺たちは彼らに見送られながら、王室の豪華な馬車に乗り込んだ。ドワーフ国の入り口までは護衛の馬車が前後についている。もちろん、王子であるザガールドの護衛の為だ。
普段道場ではザガールドの護衛なんていないじゃないか。これはドワーフ国に見せつける為の、王室の公式な体面の為なんだろう。
ふくよかで大柄な第五妃は、俺たちには目もくれずザガールドに抱きつき、目をうるうるさせ彼を見つめていた。彼女もザガールドと同じくらい身長があるんだな。
「ザードちゃん、あなたがドワーフ国なんて危ないところへ行かなきゃならないなんて……王が言うから仕方がないけどお母様は心配で心配で。お母様はついてはいけないけど、ひとりでも怖がらずに頑張ってくるんですよ。」
手を握って離さない母親に、ザガールドは困ったように目を泳がせながらうんうん頷いていた。
国境へと向かう馬車の中で、俺は向かいに座るザガールドに聞いてみた。
「ザガールドはザードと呼ばれているんだな。」
「……あぁ、母はいつもあれだ。いつまでも小さな子扱いでたまらんよ。」
ちょっとうんざりしたような、でも少し照れくさそうなザガールド。身長190はありそうで筋肉質な大男でも、母から見ると小さな子ども扱いなんだな。
「俺も『ザードちゃん』と呼ぶほうがいいかな?」
これはもちろんアルトだ。なんだか嬉しそうにザガールドの顔を覗き込んでいる。
「やめろアルト!ザガールドでいい!!」
顔を真っ赤にして、必死に叫ぶように言うザガールドにアルトは爆笑していた。
首都ビンスタスからドワーフ国の国境の門までは、半日近くかかるという。正午までには着くはずだと、同乗している騎士が俺たちに温かい茶を淹れてくれながら教えてくれた。
「ふーん。じゃあ、着くまで寝るか。」
そう言ってさっそく居眠りを始めたザガールドだが、本当は落ち着かないのかもしれない。
「なあ、アルト。ドワーフの王に会ったら何を言うつもりだ?エルフとドワーフが仲が悪いなら、エルフに関わりある三大魔導家のお前が話をするのは難しいんじゃないか?」
「うーん。まあ、いつまでもそう言ってもいられないだろう。ドワーフ国には明らかに異変が起きている。そろそろ我々は手を取り合う必要があると思う。」
アルトは真面目な顔でそう言い、少し考えてから言葉を続けた。
「でもまずは現状把握だな。今回の俺たちの目的は挨拶と顔見せだし、王が難しい人なら、せめて部下と交流でもできればいいけどね。」
「そうか。そこまで考えているのか。」
感心する俺に、アルトはニヤッと笑って顔を近づけてきた。
「でも、もしかすると肝心なのはエイトの立ち回りかな。君の印象次第で、我々の未来も変わるだろうからね。」
そう言うアルトにぽんぽんと肩を叩かれて気づいた。そうか、ザガールドとアルトのふたりは挨拶をしたら帰る役目だ。実際は、これからの俺の言動と行動が、人間の代表として見られるんだ。
俺はゆっくりと横を向き、隣に座るアルトを見た。
彼は穏やかな笑みを浮かべてみせたが、目は全く笑っていなかった。
怖っ!!!




