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リヴァリエル卿から、ついにドワーフ国への表敬訪問の入国許可証が発行されたと聞いた俺は、アルトと共に王宮へ向かうことになった。
ダルメル王に会うのは久しぶりだな。
謁見の間ではなく会議室に案内されると、そこには先にザガールドが来ていた。さすがに先日の平民のような簡素な服ではない。まああそこは道場だったしな。
ダルメル王が事務官を伴い入ってきた。リヴァリエル卿も一緒だ。
「おお、エイト。久しぶりだな。」
ダルメル王がにこやかに声をかけてきた。なんせ以前、朝まで彼の祝い酒に付き合った仲だ。あまり飲めない俺は笑上戸の王の相手にどっと疲れたけど。
皆が席についたところで、王の傍らの事務官が説明を始めた。見た目通りの渋い声だな。この人の方が王だと言われても信じてしまいそうな威厳だ。
「皆様にお伝えしました通り、ドワーフ国への入国許可証が発行されました。ザガールド王子とアルティウス殿は表敬訪問として当日のみのものです。エイト殿が既にお持ちの自由許可証は、期限なしで入出国とも自由となっております。」
王が俺たちを見て言った。
「エイトがドワーフ国へ行きたいと言ったので、この際我が国からも表敬訪問をしてはどうか?とリヴァリエル卿から提案があった。追加の依頼にドワーフの王はなかなか渋ったがな。上質のワインを何樽も送ってようやく納得させた。」
さすがドワーフ、やっぱり酒かよ。
王の話が止まったところで、リヴァリエル卿が王に話しかけていた。
「ダルメル王、これをきっかけにドワーフ国ともう少し交流を深められると良いですな。いかんせんあの国は謎が深い。まるで何かを隠す為に交流を避けている気がするのです。」
「単に頑固な奴らなのではないか?」
「……いやまあ、そうなのかもしれませんが。」
気楽な王の発言に、少し呆れたようにリヴァリエル卿が言う。
「ところで親父、まだ直接理由を聞いていない。なんで行くのが俺なんだ?外交なら俺より向いてる奴らがいるだろう。」
それまで黙って話を聞いていたザガールドが発言した。表敬訪問の人選にまだ疑問を持っているようだ。王は頷き、事務官に答えるよう指示した。
「正直に申し上げますと、他の王子たちでは線が細く、ドワーフに舐められる可能性が高い。ザガールド王子なら迫力負けしないとの人選です。」
やっぱり見た目かよ。
しかし親父呼びなんだ。まあ、このゴツいザガールドが、しおらしく『お父様』とか言うと思うとなんか気持ち悪…いや違和感あるかな。
「そうだ。だからお前はただ挨拶して顔見せしてくるだけでいい。ドワーフ王との話は、アルティウスがしてくれるだろう。」
アルトが頷き、ザガールドはその言葉にほっとしたようだ。まあ王子とはいえ、初の訪問で責任持たされるとしんどいだろう。
「エイトは、その場でドワーフ王に今後のことを相談するとよい。後で彼に渡してもらうものを託すので、事務官から受け取ってくれ。ところで出発はいつにする?」
ダルメル王に言われて俺たちは相談した。俺の準備に2日もらうことにして、3日後の出発となった。
「分かった。ではそのように取り計らう。ザガールドには初めての公務だが、まずは緊張せず楽しむ気持ちで良い。きっとエイトが助けてくれるだろう。さて、昼食を用意させるから、それまでエイトに城の中を見せてやると良いぞ。」
ザガールドにそう声をかけたダルメル王の顔は、王というより普通の父親の顔だった。
ザガールドの案内で、俺たちは城の天辺に行った。
「さすがにこの国の全てとは言わんが、ここから見る景色が好きなんだ。王族の特権だな。」
楽しげなザガールドの言う通り、これは確かに良い眺めだった。石造りの柵にもたれ掛かると、縦に長いこの国の街や森、湖の方まで見渡せた。
湖か…おばばの居た島はここから見えるかな?
そう思った時、おばばの家から俺宛のメモがついた箱を持って帰っていたのを思い出した。
俺はマジックバッグから、その箱を取り出してみた。
「エイト、なんだいそれは?」
「おばばの家にあったんだ。俺にとメッセージ付きで。」
少し重いその箱を開けて見た。
「……石?」
入っていたのは握りこぶしくらいの、どこにでもあるような石だった。
ザガールドが不思議そうに言った。
「なんで石なんかを箱に入れてあるんだ?」
「さあ……?」
アルトが手をぽんっと打って言った。
「ドワーフ国で見てもらえば良いじゃないか。預言者イグナの持っていたものだろう?何か意味があるかもしれない。」
「そうだな。まあ、おばばのイタズラかもしれないけどね。」
俺は石を箱にしまい、バッグに入れた。
「じゃあ3日後の朝に出発だな。エイト、よろしく頼む。」
差し出されたザガールドの手を、俺はしっかり握り返した。




