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マイルと一緒にシンラ教授の執務室に行った。マイルの研究資料を渡す為だ。
「書類はともかくとして、サボテンはどこに置きましょうか?」
俺は教授に尋ねた。なんせ20鉢以上もあるんだ。この執務室に全部置く訳にはいかんだろう。
「ああ。ふたりともこちらへ来てくれたまえ。」
シンラ教授についていくと、立ち入り禁止とチェーンの張られている階段があった。へ〜、ここには地下もあるのか。
教授は普通にチェーンを外して、階段を降りてゆく。彼が降りてすぐの扉を開けると、そこは様々な植物が生息している、まるで森のような空間だった。
ええ……ここまでやる?
俺はちょっと、いやかなり引きながら教授の後をついていった。
「ああ、ここだ。ここに出してくれたまえ。」
そこにはいくつかサボテンが生えていた。これが教授とマイルが研究しているものか。
「分かりました。」
俺はまず小さなものから置いてゆく。大きなものはマイルに手伝ってもらい、マジックバッグから取り出した。区画を埋め尽くすように置かれてゆくサボテンの鉢はなかなか壮観とも言える。
「おおっ!これは素晴らしい!!」
シンラ教授が感極まってその様を眺めているが、いや…見てるだけじゃなくてあんたも手伝え。
「シンラ教授。これで全部です。資料は先程、教授のデスクに置いたものにまとめてあります。」
マイルがタルスのかけた保護魔法を外しながら言った。この魔法のおかげでサボテンに傷みや形の崩れはない。さすが専門と言っていただけのことはある。
「ではマイル君、後期が始まったらまた研究を手伝ってくれ。よろしく頼むよ。エイトさん、ご苦労だった。本当にありがとう。」
……いや、あんた。サボテンに目を奪われてるのはいいが、こっち向いて言えよ。
俺はシンラ教授と話をしてから戻るというマイルと別れて街へ行った。
道具屋からメンテナンスが終わった旅道具一式を引き取り、食料品店でパンや米、ベーコン、チーズ、乾燥野菜などを買う為だ。
ああ、またひとり旅の実感がわいてきたな。
買い物も終わったので温浴施設でのんびりしてきた。大きな街には温浴施設はあるが、旅の途中は身体を拭くだけということもある。
風呂好きな日本人の俺は、ゆっくり浸かるのが好きなのだ。
結構シェアハウスの風呂は使わなかったな。順番に使う皆の邪魔はしたくなかったから、ずっとここに通ってた。
アマルガリタたちが来た時に、彼らの話に入れず、手持ち無沙汰であの風呂を磨き上げていたのがずいぶん前のことのようだ。
シェアハウスに戻ると皆が待っていた。
「まさかエイトさん、夕食食べてきてないでしょうね。」
そう言いながら俺の腕を掴んだメイリンに引っ張られてダイニングルームに入ると、テーブルいっぱいに食事が用意されていた。
「エイトさんが来た時は、歓迎会なのにご馳走になっちゃったから、今日は私たちだけで作ったのよ。」
得意げにメイリンが言うと、ジェリコがツッコんだ。
「そうだよ。珍しくメイリンも頑張ってくれた。」
「珍しくって何よー!」
皆が大笑いする中、マイルが言ってきた。
「さあ、エイトさん座って。いっぱい食べてくださいね。」
「皆……ありがとう。」
俺は胸がいっぱいで、それ以上言葉が出なかった。
「じゃあ……いっただっきまーす!」
ジェリコがその言葉と同時に食べ始めたので、メイリンが驚いていた。
「ちょっとジェリコ!乾杯とかやらないの!?」
「ふぁ…ふぁふれてふぁ。ほへん。」
口いっぱいにポテトサラダを頬張りながら言うジェリコに皆で爆笑した。ああ、こんな賑やかな彼らと過ごすのは楽しかったな。
食後のデザートの時に、マイルが立ち上がった。
「エイトさん、これ、皆から。」
「えっ?」
少し大きな包みを受け取り、俺はその場で開けてみた。
皮の手帳とペンだ。
「エイトさんはこういった物をお持ちでなかったようなので、皆で相談して決めました。使っていただけると嬉しいです。」
先日荷物を広げていた時か。マイルはよく見ているな。
「皆、ありがとう。大切にする。」
「エイトさん、しまい込んじゃダメよ!ちゃんと使うのよ!」
「分かったよメイリン。ちゃんと使うよ。」
皆、本当にありがとう。




