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シェアハウスに戻った皆は、もうすぐ始まる後期の講座の準備で忙しそうだ。
「後期は少し減らすことにしたの。前期は取りすぎだったのがよく分かったわ。予習復習の時間が大変だったもの。」
ダイニングルームで、メイリンがジェリコ作のクッキーを食べながら言っている。
「僕は船の動力に関する講座を追加しました。魔導馬車の研究にも役立つかもしれません。」
ユアンもお茶を飲みながら話していた。フィルマルトで買ってきた柑橘系のいい香りする紅茶だ。ユアンはやっぱり柑橘系が好きなんだな。
「そうか、ふたりは初年度?ってことだったのか。」
俺が会話に参加すると、ふたりはクッキーを勧めてきた。
「そうよ、私たちは今年このシェアハウスに入ったの。ジェリコは昨年からかな。後期が終わったら帰るはずよ。」
「僕たちは本当にラッキーでしたね。ここに来てなかったら、あんなに楽しい夏休み旅行はできなかったんですから。」
「この旅行でユアンもよくしゃべるようになったわね。来た時には、はいといいえしか言わないからもうどうしようかと思ってたわ。」
相変わらずの早口で、あははと明るく笑うメイリンを見て、俺もふふっと笑った。
そう言えばジェリコはどうするんだろう。旅の間に悩みを打ち明けてくれたけど、もう決めたんだろうか。
「いや、決まってないですよ。」
ダイニングで自分の夕食を作っていたジェリコにそう答えられ、ちょっと拍子抜けだった。
「そうなんだ。じゃ、まだ考えてるんだな。」
「ん~、考えてはいるんですけどね。1回家に戻ってから決めます。俺、結構浮気性なんだなって分かりました。またすぐ違うことやりたいってなったら困るじゃないですか。」
「なるほど、そういう感じか。」
「ええ。でも後期は農業だけじゃなくて、別の講座も受けます。あーでもこれも皆の影響か〜。」
そう言いながら頭を抱えているが楽しそうだ。
夜にマイルにその話をしたら、マイルは頷いていた。
「それで良いんだと思いますよ。共同生活をしていると影響を与えあうのが普通です。ジェリコの世界は広がった…それをどうしていくかは彼が決めることです。」
「楽しそうでいいよな。俺は冒険者でしか無いからな。」
「それなら、エイトさんもどこかでしばらく入学しては?」
「いや…俺はやめとく。」
この世界でまで勉強なんてしたくない。
「あ、そうだ。マイルこれちょっと見てくれないか?」
俺はダイニングのテーブルに地図を2枚広げた。ダンジョンで見つけたものだ。おばばはこれを持ってドワーフの国へ行けと言ったが、どこの地図なのか全く分からないのだ。
「なんですかこれ?……地図?古そうなものですね。」
マイルが覗き込みながら言う。
「ああ、ダンジョンで見つけたんだ。地図らしいんだけど。マイル、どこだか分かる?」
「こんな地形は見たことないですね。少なくとも大都市の形ではないから、僕の知らない小さな村とか?いや、それにしては広そうだ……」
マイルはあごに手を当てながら考えこんでいる。そうか、マイルでも分からないか。
「いや、いいよ。これを持ってドワーフの国に行ったら何か分かるらしいんだ。」
「そうなんですね。彼らは地質には詳しいから分かるかもしれませんね。もしどこなのか分かったら僕にも教えてください。」
マイルは笑顔を浮かべて言った。マイルの知識欲を刺激してしまったか。
「そういえばマイルは来期の講座が終わったら、フィルマルトの研究施設に行くといってたな。もう話はしてあるのか?」
「あ、いいえ。先にシンラ教授に会って話をしてからです。たぶん問題はないと思います。」
「そうか、楽しみだな。」
俺はキース教授と働くなんてまっぴらだが。
「そうですね、とても楽しみです。」
満面の笑顔で言うマイルに、俺の心は温かくなるようだった。




