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楽しかったクルーズもまもなく終わりだ。
これは一度では楽しみきれない。だからリピーターが多いんだよ、とアルトが言っていたのも良く分かる。
降りる前にと、皆でビュッフェのブランチをしにいった。同じ考えの人が多かったようでなかなか混んでいたが、俺たちは隣あっている大きなテーブルをふたつ陣取ることができた。
昨夜の女性はいないのかな、と少し周りを見てみたが見つからなかった。
ユアンがお気に入りになったという柑橘ソースのパスタを食べながら言った。
「こういう大きな船の動力がどんなものなのか、スタッフさんに聞いたら教えてくれたので、レポートにまとめてみます。」
「うえ〜、ユアンはもう勉強の話?凄いな、俺はもうちょっとこの雰囲気を堪能する!」
「ジェリコが堪能しているのは食事ばかりじゃない。」
「おいメイリン。俺だって他にも見たからな。あの鳥の島と、貝殻だけで出来たという島は凄かったな。あんなの見られるとは思わなかった。」
「そうね、ヒマリは鳥が多くてちょっと怖かったけど、綺麗な鳥も多かったわ。」
皆のそんな雑談を聞きながら、このクルーズのチケットを用意してくれた王と王妃に心の中で改めて感謝した。皆が喜んでいたことも伝えなきゃな。
充分食べたというヒマリとユアンは、最後に船の地下に行くと言い、食堂を出て行った。俺も昨日ちょっと行ったけど、透明になっている区画があってて、まるで湖の中を歩いているみたいに見ることができるんだ。見たことないような魚もいて面白かった。
「メイリン、向こうのデッキでジュースでも飲まないか?」
アルトがメイリンに声をかけた。
「ええ、行くわ。」
メイリンが立ち上がり、アルトとふたりで出て行った。
「あのふたり、ほんとに仲良くなったよな。なあ、マイル。」
俺はマイルに話かけた。マイルもふたりの姿を見ていたようだ。
「ええ、そうですね。でも……」
「でも、何だ?」
「あ、いいえ。なんでもありません。」
ふっとマイルが目を伏せた。どうしたんだろう。
船は降り場に到着し、楽しかったクルーズが終わった。
「あ~もう1回乗りたい!」
「もう、ジェリコったら。今降りたばかりじゃないの。わがまま言わない!」
いつものジェリコとメイリンの掛け合いが始まったので、皆で笑った。
アルトの迎えの馬車が来ていたので、皆で見送ることにした。
「皆、楽しかったよ。またビンスタスに来たら、ぜひ寄ってくれたまえ!」
そう言って大仰なお辞儀をするアルト。そして彼はマイルに近づき、何やら耳打ちした。マイルはっとした表情だったが何も言わなかった。
アルトを乗せた馬車が遠ざかってゆく。なんだか寂しくなるな。まあ俺はビンスタスにはまたすぐ行くことにはなるから。
皆で手を振りながら、俺はこれから先のことをぼんやりと考えていた。
そして翌日、俺たちはクヌルギのシェアハウスに戻ってきた。約一ヶ月半の旅が終わったんだ。長いようで短かったな。
皆はハクにお礼をたくさん言って、リンゴもたくさんあげていた。ハクがいなきゃこんな旅はできなかった。俺も後で目いっぱい労おう。
「楽しい夏休みだったね。ヒマリ、こんなに外で遊んで日焼けしたの初めてだよ。」
「確かに。いや、マイル!お前なんでそんなに白いんだよ。」
「え?だって僕はだいたいフィルマルトの研究施設にいたじゃないか。」
「あ、そうだった。なんかずっと一緒に居た気がしてた。」
ジェリコのその言葉に、マイルが苦笑しつつ嬉しそうだった。
とりあえず旅行の荷物を片付けなきゃと、俺は皆から預かっていた荷物を次々とマジックバッグから取り出していった。
あ、これはヒマリの……
俺はヒマリから預かっていたエルフに関する書物を取り出して、彼女に渡した。
「エイトさん、ありがとう。」
ヒマリは明るい笑顔を見せてそれを受け取った。良かった、ふっきれたのかな。
皆が荷物を持って部屋に引き上げたので、俺も自分の部屋へと向かった。
マイルのあの大荷物をどうしようかと考えながら。




