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昼食に食堂でビュッフェを堪能したジェリコは、部屋のベッドで寝っ転がっていた。
「エイトさ〜ん、俺もう食えない〜。」
そんなことを言うジェリコだが、しばらくしたらまた食堂へ向かうのだろう。ユアンは食事後、ヒマリたちとミニコンサートを聴きにいったようだ。
アルトとマイルは涼しい顔をしてリビングルームでくつろいでいた。
「もちろん僕もたくさん食べましたよ。皆ほどじゃないですけど。」
「俺は前にも来てるから。また夜にも行くしね。」
なんか余裕のふたりだな。俺も傍らのソファに座り、彼らと雑談しようとした。
その時、扉をノックする音がした。何だろう?スタッフさんかな?
「はーい。」
俺は返事をして立ち上がり、扉を開けた。
すると、そこに居たのは全く予想外の人物だった。
「こんにちは。入ってもよろしいですか?」
「………んなっ!?メイロード様!?!?」
そこに居たのは、紫のエルフの長であるメイロード。一体なんでこんなところに……?
アルトとマイルも立ち上がっている。
「エイト殿、お久しぶりです。ああ、君たちがリヴァリエルの双子のアルティウスとマイレウスですね。」
メイロードはアルトとマイルに優しく微笑みかけた。マイルは驚きながらも何とか声を出した。
「その紫の髪……あなたは慈愛のエルフなのですね。」
「はい、私はメイロードと申します。紫のエルフの長です。」
メイロードはそう答えると彼らに近づいた。いや、正確にはアルトの方へだ。
「あなたがリヴァリエルの次期当主ですね。ダイハクリョクが教えてくれました。貴方の力は正しく育っているとね。」
え…ハクがなんだって?ハクが教えた?
いや、そう言えばハクは前に紅のエルフ部隊を呼んだりしたし、あんなに可愛いのに実はとてつもなく偉いユニコーンだとか?
声をかけられたアルトは驚いてしまって声も出ないようだ。そりゃいきなりエルフなんてものが目の前に現れると、普通固まっても無理はない。
「メイロード様、立ち話もなんですし、どうぞ座ってください。」
俺はメイロードに声をかけた。このまま立って話をするのはエルフの長に失礼だろう。俺たちはソファに座り、メイロードと話を続けることにした。
「エイト殿は、何故三大魔導家があるのかをご存じですか?」
「いいえ。マイル、知ってる?」
メイロードの問いをそのままマイルに振ったが、彼は首を横に振って答えた。
「何故かと言われると分かりません。昔からそうだとしか思っていなかったです。何故魔導家と血の繋がりを持つ者だけが魔導士になれるのか、それを疑問に思ったことはあります。」
メイロードはマイルの返事に微笑んだ。
「三大魔導家は私たちエルフが作ったのですよ。」
作った?どういうことだ?俺たちはメイロードの次の言葉を待った。
「作ったというより、用意した、でしょうか。人間が自分たちの力で人間界を守れるようにと我らが力を与えた。それが最初の3人の人間でした。」
「え、じゃあ、リヴァリエルって……」
俺はアルトとマイルを見た。彼らは真剣な顔をしてメイロードの言葉を聞いている。
「はい、リヴァリエルは慈愛のエルフが力を与えた者です。他の家のこともお分かりですね?」
じゃあ、他のふたつの魔導家は、蒼のエルフと紅のエルフの力を受けたということか。
メイロードはマイルを見つめて言った。
「マイレウス、貴方のことはアマルガリタから聞いています。彼女は貴方の知識と向学心をとても褒めていましたよ。アマルガリタの言うように、貴方はその知を深めるべき時なのでしょう。」
アマルガリタは叡智を司る蒼のエルフの長だからな。そりゃマイルのことを気に入るだろう。
メイロードは今度はアルトを見つめた。
「アルティウス、貴方は私が力を与えた最初の者に良く似ています。その強さも、優しい心も。貴方は良きリヴァリエルの当主となるでしょう。そして、その時、私はまた貴方の前に現れます。」
メイロードは立ち上がった。
「アルティウス、また会いましょう。マイレウス、元気で過ごしてください。」
俺は扉から出てゆくメイロードを見送ろうと一緒に廊下に出た。彼は俺を見て微笑んだ。
「エイト殿、私がここへ来たのはマイレウスの為にでもあります。」
「え、どういうことですか?」
「マイレウスはアルティウスに自由に生きろと言われても、やはり迷い続けているのです。私があのように言えば、マイレウスは迷いなく動けるでしょう?」
「ああ…そうですね。俺もそう思います。」
俺の返事にメイロードは満足したように頷いた。
「エイト殿、楽しみではないですか?私の慈愛の心を持ち、蒼のエルフから叡智を受け取る存在となるマイレウスの将来の姿は。彼はその両方を得て、リヴァリエルに戻る事になるのです。」
「そうか。メイロード様はふたりのことを考えて来てくださったんですね。」
メイロードはふふ、と笑って空間に溶けるように消えていった。
あ、しまった!ハクのことを聞くのをすっかり忘れてた。
部屋の扉を開けると、ふたりはソファに沈み込むようにぐったりと座っていた。メイロードの言ったことは彼らにとって衝撃の内容だったようだ。
「アルト。メイロード様のお墨付きの次期当主ですね。」
「マイル、俺ちょっと緊張してきた。うわ〜プレッシャー……」
いつもの余裕がどこかへ行ったアルトの姿に、俺とマイルは思わず笑ってしまった。




