↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

142/186

page.142

翌朝、俺は王宮に行くことになった。

ダルメル王から、約束の物が用意できたとの連絡を受けたからだ。


「おお、勇者エイトよ。久しぶりだな。」


初めて会った時の愛想のなさはどこへやら。謁見の間で王は嬉しげに迎えてくれた。まああの笑い上戸の酒に長々付き合ったからな。


「お前が欲しがっていた、ドワーフの国への自由通行証だ。これを見せればいつでも入国できるぞ。」


「ダルメル王、本当にありがとうございます。感謝致します。」


事務官がお盆に乗せて持ってきたそれを、俺は恭しく受け取った。


「うむ。ただ、入国する前に、こちらに立ち寄ってもらえるか。ドワーフ王に渡してもらいたい物があるのだ。」


「分かりました。すこし先のことになりますが、必ず立ち寄らせていただきます。」


王はあごを触りながら言った。


「……しかし、本当に褒美はそれだけで良いのか?第八妃と姫の命を救ってくれたのだ。欲しい物があれば遠慮なく言うがよい。本当に、金や女はいらんのか?」


あんた前同じこと言って、王妃に肘鉄くらってただろ。でも俺が同じようにツッコむ訳にはいかない。


「はい、俺はこれだけで充分です。ありがとうございます。」


「うむ、無欲なお前はきっとそう言うと思ってな。おい、あれを持て。」


王はニヤリと笑って、事務官に合図をした。事務官はお辞儀をし、俺にまた違うお盆を持ってきた。何だ?


「それはクルーズ船のチケットだ。人数分ある。それで皆で遊んでくると良い。」


「ええっ!」


ホロウサで乗れるクルーズ船の!?行きに皆で内部見学したやつだ。俺も一度乗ってみたかったんだよね。しかもこれ、最高級のプラチナチケットじゃないか!


「王様、ありがとうございます!凄い!これは皆喜びますよ。……あれ?1枚多いようなのですが。」


「ああ、それはアルティウスの分だ。弟が長らく不在で寂しい思いをしていたようだからな。リヴァリエル卿にも話してあるので、一緒に行ってやってくれ。」


「そうなのですね、ご配慮ありがとうございます!」


「うむ。……まあ余ではなく、王妃の発案だがな。エイトよ、また会おうぞ。下がってよい。」


わ、これは凄い。皆、絶対喜ぶぞ。

俺はウキウキしながら、リヴァリエル邸に戻った。




クルーズ船のチケットを見せると、皆大興奮だった。チケット代が高額なこともあり、学生がなかなか乗れるものではない。


「俺も一緒に行けるの!?やった!」


皆と一緒になって、アルトも大喜びだ。


「でもアルト。ホロウサまでは、ハクで行っても1泊はキャンプ場か野宿になるけど、それでもいいか?」


アルトは三大魔導家の次期当主だ。そんな人を野宿させても良いのだろうか?


「キャンプ!?野宿!?やったことないよ、それはぜひともやりたいね。」


「アルト。僕や皆に無茶とかわがままは言わないでくれよ?キャンプには皆の協力と協調性が必要なんだ。」


「大丈夫。言われなくても分かってるよ。」


マイルもアルトの狂喜乱舞に呆れながらも嬉しそうだ。


「じゃあ、俺たちはクルーズ船に乗った後はそのまま帰る。アルトはそこからビンスタスに戻る。それでいいかな?」


「いいよ。俺は迎えを手配しておくから。」


さすがリヴァリエルのお坊ちゃま。それじゃもう心配は無いな。


「じゃあ明日朝に出発しよう。皆準備してね。」


マイルがそう言うと、皆は「はーい」と良い返事をした。帰りに楽しみが増えたな。




翌朝、俺たちはお世話になったリヴァリエル卿夫妻に見送られ、リヴァリエル家の豪奢な馬車で、ビンスタスの出入り門まで送ってもらった。


2台の馬車に別れて乗り、俺はアルトとマイルの双子と同じ方だ。


「マイルと旅行なんて、子どもの時以来だな。」


ウキウキしているアルトに、質問してみた。


「へえ、何歳の時?」


「うーん、6歳くらいかな?なあ、マイル?」


アルトは横に座っているマイルに話しかけたが、その時マイルは窓の外に見える宮殿の方を見ていた。アルトの言葉にふっと我にかえったようだった。


「え?ごめん、何か言った、アルト?」


アルトは黙ってマイルを見ていたが、ギュッと抱きしめて背中をぽんぽん叩いていた。マイルは驚いて目を見開いていたが、静かに目を閉じて言った。


「なんだか子どもの頃を思いだすね。あの時みたいだ。」


「そうだろう。俺は良いお兄ちゃんだからな。」


あの時がどんなことかは分からなかったけど、双子には何か通じるものがあるんだろう。そんな感じがした。



馬車は門に到着し、俺たちは街から出た。


「さて、これからどうするんだ?」


「うん、まずは森まで歩いてハクを呼ぶんだよ。」


俺の返事にアルトは目をキラキラさせた。


「噂のエルフのユニコーンだな!あの勇姿を生で拝めるとは!さぞかし繊細で優美な姿に違いない!!」


吟遊詩人の大仰な歌の内容を信じているんだな。いいえ、ばん馬サイズの脚ぶっといユニコーンです。まあ見てもらえば分かるか。


森に到着し、俺はいつもの通りエルフの指輪をはめてハクを呼び出した。


「…………なんか思っていたのと違うな。」


呆然とアルトが呟いた。目の前に現れた巨体が信じられないのだろう。まあ彼がこれまで見てきた馬といったら、大体サラブレッドサイズのものだからな。


「アルト、これがエルフのユニコーンのダイハクリョクだ。俺たちはハクと呼んでいる。可愛いやつだからよろしくな。」


「ああ……触ってもいいか?」


「どうぞ、って言うより、皆もうとっくに触ってるだろう?」


皆、我先にとハクにリンゴをあげようとしていたり、顔やおなかをなで回している。


そっと近づいていったアルトに気づいたメイリンが、彼の腕を掴んでハクのところに連れて行こうとした。


「ほら、アルトさんもハクに触ってあげて!」


急に引っ張られて、木の根に躓いたアルトがよろけると、ジェリコが咄嗟に支えていた。


「こら、メイリン!森の中は足元が危ないんだから気をつけるように言われてるだろ!」


「あ、ごめんジェリコ。ごめんなさいアルトさん。ちょっと興奮しすぎました。」


ペコリと頭を下げるメイリンに、アルトは微笑みかけた。


「いいよいいよ。それより俺もハクに触りたい。どうすれば良い?」


メイリンはアルトに笑顔を向けて、一緒にハクに触ろうと言っていた。最近仲良いよな。


アルトがハクに触れようとすると、何故かハクはすっと顔を背けた。そしてアルトのことをじっと見つめている。


「あれ?ハクどうしたの?」


メイリンが驚いて言った。確かにハクがそんなことをするなんて見たことないぞ。


「あれ?俺は嫌われているのか?」


アルトは腕組みしながら首を傾げた。マイルがハクをなでながら彼の兄に言う。


「思ってたのと違うなんて言ったから、嫌われたんじゃない?」


「うーん、そうか。繊細なのは繊細のようだな。」


「アルト、少しずつ仲良くなれば良いよ。ハクは優しいユニコーンだからさ。」


俺は励ますようにアルトに言った。


馬車を呼びだして皆で乗り込んだ。さあ、ホロウサに向けて出発だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。