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翌朝、俺たちはハクに送ってもらい、ダルメル王国の首都ビンスタスに到着した。
「じゃあ、とりあえず僕の家に行きましょうか。そこで落ち着いて、ここからのルートを確認しましょう。」
「……いや、あの豪邸、落ち着けるとかそういうレベルじゃないけど。」
俺のツッコミはともかく、俺たちはまたマイルのご実家、魔導家リヴァリエルにお邪魔することになった。
「マイルーーーーーー!」
門のところで、またマイルの双子の兄のアルトが走ってきたが、マイルは抱きつかれる前にすっと下がって、アルトの腕はすかっと大空振りしてた。さすが双子、思考パターン読まれてるな。
思わず大笑いする俺たち。アルトはマイルを恨めしそうにひと睨みしてから体勢を立て直した。そして何事もなかったかのように俺たちに挨拶した。
「やあ、君たち久しぶりだね。また会えて嬉しいよ。メイリン、書庫に新しい本が入ったから見るかい?」
しかし何度見てもマイルにそっくりだな。双子って面白い。
玄関まで行くと、ふたりの父であるリヴァリエル卿が出迎えてくれた。三大魔導家の当主の出迎えとは恐れ多い。
「マイル、お帰り。君たちも入りなさい。フィルマルト王国はどうだったかな。」
「お父様、ただいま戻りました。また数日お世話になります。」
「数日か。まあ、ゆっくりしていくといい。別館の部屋を用意させる間、庭園か書庫で待っておいてくれるかね。」
そう言ってリヴァリエル卿は去っていった。ふぅ、やっぱり緊張するな。
「アルトさん。私、書庫が見たいわ。」
「メイリンはそうだろうね。皆も来るかい?」
俺たちはアルトについて書庫へと向かった。
うわぁ…広い。凄い本の数だ。書庫っていうより図書館だろう。
皆は前回立ち寄った時にここに入ったらしいが、俺は全く初めてだ。こんなの一生かかっても読み切れないだろうに。
「ねぇねぇアルトさん。新しい本はどの辺り?」
興奮して話すメイリンにアルトは優しい目をしながら、こっちだよと案内していた。しかし、メイリンはやけにアルトに懐いているな。前からあんな感じだったかな?
彼らを見ていた俺を見てたらしいマイルと目があった。何か話があるのかな。
「マイル、どうした?何かあったか?」
「あ…いいえ。また後で良いんですけど、今回は何日滞在にしようかなと。夏休み終わりギリギリに戻るのも良くないですので、2〜3日ですかね。」
「せっかくの実家なのに、マイルはそれで良いのか?」
「僕は構いませんよ。ただ、会っておきたい人はいますが、すぐには会えないので。」
あ…エルのことだよな。彼女はもう出産してるはずだよな。でも王宮に居るから、今日すぐにって訳にはいかないだろうし。
俺の表情に気づいたのか、マイルが言葉を続けた。
「大丈夫ですよ。きっと今頃、父が謁見の手配をしてくれてますから。エイトさんも一緒に行ってくださいね。」
本棚にヒマリの手が届かないのに気づいたのか、マイルはそちらに向かっていった。
皆が思い思いに本を手に取り読んでいるので、俺も適当に取ってみた。うえぇ、文章ぎっしり。マンガみたいに絵がたくさんあればいいのに…俺はそっとそれを本棚に戻した。
そういえば、アドこと、このアドベンチャーゲームブック《魔王の微笑とドラゴンの息吹き》は、ドワーフの話に入るんだよな。彼らをクヌルギに送り届けたら、いよいよドワーフの国に向かうクエストが始まる。
皆といられるのはあと少しの間か……そう思うと寂しくなってくるな。俺は彼らの姿を見ながら、先のことに思いを馳せるのだった。
「え〜!2〜3日の予定なの?オペラとか観劇とか一緒にしようと思ってたのに〜。」
……俺たちの帰路の相談会議に、なんでアルトがいるんだ?
別館のそれぞれの部屋に落ち着いてから、応接間に集まった俺たちにアルトが乱入してきた。
「アルト、僕たちは忙しいんだよ。帰ったら提出用のレポートまとめなきゃならないし、新学期の準備だって多いんだ。」
「でもさ〜……あ!メイリン。君はオペラ聴きたいよね?」
アルトがメイリンを仲間にしたそうにしている。
「アルトさん。それはとても聴きたいけれど、マイルが言うように私たちあまりゆっくりしてられないの。ごめんなさい。」
アルトはメイリンに逃げられた。
「じゃあ明日!明日はまだ出発しないよね。皆、明日は予定空けといて!」
そう言い残して、アルトは急いで去っていった。
「なんだったんだ……」呆然とする俺。
「じゃあ、皆、今後はこのように移動しよう。」
マイルが地図を広げて説明を始めた。
行きはハクに送ってもらい、実質8日でフィルマルト王国へ行けたのだが、帰りは徒歩と馬車の利用を往路より追加する。
せっかく季節が変わりゆく時期だ。ゆっくり我が国の風景を見ながら戻ろうということだ。
「そうね。ヒマリもゆっくり見てみたいな。」
「長期休みはいつも実家に帰っていたから、考えたら他の風景見てないですもんね。」
ヒマリに続きジェリコがそう言うと皆が賛同していた。
また申し訳ないくらい豪華な食事をいただいて、滞在する部屋へと戻った。ベッドにごろんと寝転ぶ。
「なあ、アド。」
『はい、ご無沙汰でしたね』
「うん、なんとなく声かけにくくて。」
『ふぅん。何かありましたか?』
いつもと変わらないアドの態度に安心しつつ、俺は語りかけ続けた。
「俺、アドにヒントを貰っていながら、全くそれを活かせなかったよ。ごめんな。」
『なぜ謝るのです?私は単なるナビゲーターです』
「俺はお前のこと、単なる、なんて思ってないよ。一緒に過ごしてる相棒みたいなものだと思ってる。だからお前の言葉は大事にしたいんだ。」
『……ふぅん。まあどう思っていただいても良いですが』
「そんな感じか。まあとにかく、これからもよろしくな。もうすぐドワーフの国に行かなきゃだし。」
『そう、またふたりっきりですね……ふふふ』
「その言い方は怖いからヤメて。」
皆には帰る場所があって、これからの生活がある。
俺はストーリーを進めて自分の世界に帰るんだ。帰らなきゃ。
今の皆との生活にどうしても未練を感じつつ、俺はその気持ちを新たにした。




