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馬車を乗り継ぎ、夕方にはキャンプができる村に到着できた。今日はここで宿泊だ。
早速マイルとジェリコがテントを張り、他のメンバーは手際よく夕食の支度をしている。久しぶりだが、さすがシェアハウスの仲間たち。ペースは変わってないな。
俺は自分のテントを張ってから、夕食づくりの様子を見にいった。お、今日は鶏肉のココナツミルクシチューか、セレチャルト風だな。
「ココナツを少し買ってきたんですよ、傷む前に使ってしまわないと。」
ジェリコがカレンに教わったという料理か。
「これ美味しいよね。クヌルギでも食べられるかなぁ?」
「うーん、似たような果物でも作れるかもね。」
メイリンの質問にマイルが答えていた。まあジェリコなら何でも作れそうだ。
「「いただきまーす!」」
久しぶりの、焚き火を囲んでの夕食だ。
「フィルマルト王国楽しかったね。」
ヒマリが言うと、皆口々に話し始めた。
「聞いてはいたけどあんなに暑いなんて思わなかったわ。でも水遊びには最高ね。」
メイリンがいつもの早口で言う。
「僕は馬車の作りが面白かったです。通気性が一番考慮されていて。」
無口だったユアンも、だいぶ自分の思ったことを言うようになった。
俺とマイルは皆の話を聞いて返事をしたりしていたが、ジェリコはほとんど口を開かなかった。俺はマイルに目で合図して、食事後ジェリコを散歩に連れ出した。
「ジェリコ、大丈夫か?なんだか様子がおかしい気がするんだけど。」
「そうですか?いつもと一緒ですよ。」
前を歩きながらそう言うジェリコの肩を掴んだ。
「ジェリコ。マイルと俺はお前のことを心配しているんだ。何かあったのなら話してくれ。」
ジェリコは振り返った。黙って俺を見てから、傍らにあった岩の上に腰を下ろした。
「エイトさん、俺のつまらない話なんか聞いてくれるんですか?」
「うん。俺はジェリコの話が聞きたい。」
俺も近くの岩に腰を下ろして言った。
ジェリコは星を見るように上を見ながら話しだした。
「俺がシェアハウスにいるのは、実家の米農家を継ぐための勉強に来てるからって話はしましたよね。」
「うん、聞いてる。」
「俺はそのことだけ考えてたんです。農業に関する科目だけ取って満足してた。でも、シェアハウスの皆は、俺とは違って、自分の学びたいと思っていることをやってる。」
そうだ。ジェリコは今年の受講を終えたら、実家に帰ると以前言っていた。
彼は視線を落として、俺を見ながら話を続けた。
「この旅でさ、俺の世界はなんて狭かったんだというのも分かったんですよ。専門だった米のことも、クヌルギとこの南部では育ち方も味も全然違う。今まで勉強してたと思ってたのは何だったんだろうって。」
「そうなんだ。それで悩んでいたのか。」
俺の言葉に、ジェリコはかすかに笑みを浮かべた。
「ねえ、エイトさん。ウィンベルトさんが言ってたように、家や大人の都合なんて放っておいて、好きなことやっても良いんですかね?」
「そうか、ジェリコ。お前何かやりたいことがあるんだな。」
彼は頭をかき、ためらいながら言った。
「そうですね…まだはっきりとは分からないけど。料理の道に進むか、エイトさんみたいに旅をしたいと思うようになりました。」
「ジェリコ、それならまず親と話しなさい。」
「マイル!?」
ジェリコは突然聞こえたマイルの声に驚いて立ち上がった。俺はマイルがこっそりついて来ているのに気づいていたが。
「いや…なんかまだ漠然としているから……」
口ごもるジェリコにマイルは笑いかけた。
「僕も家を出て好きなようにさせてもらっている身だから偉そうなことは言えないが、ジェリコがしたいことがあるなら応援するよ。ジェリコの親にも一緒に話しに行こう。だから旅が終わるまでによく考えて。」
「そうだな。マイルの言う通りだ。ジェリコ、まずはこれからどうしたいか、はっきり決めるとこからだな。」
俺たちはテントのところまで無言で戻ったが、ジェリコの顔は悩みを打ち明けることができたせいか、ずいぶんと晴れやかになっていた。
「あれ〜どこに行ってたの?」
メイリンがテントからひょこんと顔だけ出して言ってきた。その様がなんだかおかしくて、俺たちは笑い転げた。




