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研究施設を出発する前に小さな事件があった。
キース教授と蒼のエルフのタルスが結婚した―それを朝に皆に伝えると、ヒマリが涙をポロポロこぼしたのだ。
「違うの…ヒマリ、タルスさんは優しいからちょっとだけ憧れていただけなの。」
そういうヒマリは、出発前に見送りに来てくれた教授とタルスに笑顔でおめでとうを伝えていた。
「ヒマリさん、またお会いしましょう。あなたの学業も捗るといいですね。」
「はい。タルスさん、お幸せに。」
ふたりは笑顔で握手していた。
それから俺たちはハクに首都まで連れて帰ってもらった。ハクの馬車の中で、ヒマリはあと数日のフィルマルト王国の滞在で何をしたいか、やたらおしゃべりしていた。
皆をウィンベルトの宿に送ってから、冒険者ギルドに顔を出す為に歩いていた。この国の王から呼び出しがかかっているんだ。行くしかないか。
「あ〜やだな〜。」
「何がイヤなんすか?」
「フィルマルト王に呼び出されたんだよ。あ〜めんどくさい。」
「へー、それは大変っすね。」
「そうなんだよ……って、バイナ!?」
いつの間にか横を歩いていた男、それは主にムツヨミで仕事をしている、冒険者で盗賊のバイナだった。
「ええっバイナ!久しぶりだな!出張してきたのか?」
相変わらず愛想の良い、小柄なバイナは俺を見あげるようにしてニッ!と笑った。
「まあここは隣国っすからね。たまに仕事を請け負ってるっす。今日はかーちゃんとチビたちの土産を買おうとこの辺りの店を見てたら、エイトの旦那が居たからびっくりしたっす。」
ギルドへ向かうのを一旦やめて、バイナと話す為に飲食店に入った。
「エイトさんのおかげで褒賞たくさん貰えたっす。かあちゃんも喜んでくれたっすよ。」
「いやいや、こちらもバイナの言った通り、エルフの姫がダンジョンに居たんだよ。」
「そうなんすか?正直当てずっぽうだったけど、変わったエルフだったんすね。」
冷たいジュースを吸い上げながらバイナが言う。
「そうだ!お礼に白銀のエルフの王から色々貰ったんだよ。良ければバイナもひとつ持って帰って。」
俺はテーブルに、王に貰ったアイテムを広げた。
「うーん、エルフのアイテムっすか。あんまり興味ないっすね。」
「えっ、そうなのか?」
意外だな。盗賊ならこういう古い物が好きかと思ったが。
「今、おいらがメインに取り扱ってるのが、ドワーフの製作品なんすよ。最近粗悪品ばかりで、昔ながらの良いドワーフ製品が手に入りにくい。盗賊仲間にも探して貰ってるんすけどねぇ…」
「バイナ、お前、ドワーフ製品なんて欲しいのか?」
「あ、おいらじゃなくてコレクターっす。高い金出しても欲しい好事家って方々っすよ。エイトさんも何か情報有ったら教えてくださいっす。」
「分かった。覚えておくよ。」
バイナは立ち上がった。
「じゃ、買い物に行ってくるっす。エイトさん、またっす。」
俺はバイナと別れて、仕方なくギルドへと向かった。ああ、逃げたい。
ギルドへ行くと、王と王妃は外遊に出たので褒美だけ王宮に取りに来いとのメッセージが届いていた。
なんだ…来いと言っといて本人居ないのかよ。まあでも、会わずにすむならいいかな。
俺はこの都市の中央にある王宮に出向いた。
事務官から貰った王のメッセージは、俺が褒賞を受け取る代わりに怪我人や冒険者に与えて欲しいと言ったこと、それに非常に感心したとのものだった。
そして王からの気持ちの褒賞を受け取って欲しいと。それはこの国の意匠が施されたマントと500ゴールドだった。
うん…ここ南国だから、だいたい着る物が派手なんだよね。ハワイのアロハ的模様の真っ赤なマントっていつ着るの……?500ゴールドはもちろんありがたく受け取っておこう。
この国で過ごすのはあと3日か。
貰った褒賞で皆に服でも買おうかな。似合いそうな物を探して。彼らは貰ってくれるだろうか?
そんなことを考えながら、俺は宿への道を急いだ。




