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夕食後、俺たちは言われた通りキースの執務室へ行った。
マイルがノックして部屋に入ると、執務室の椅子に座っているキースと、その横に立つタルスの姿があった。何か話をしていたようだが、タルスは帰らなくてもいいのか?
「ああ、君たち。そこに座ってくれ。」
執務室内のソファに座るように促された。キースとタルスが座るその向かい側に、俺たちは座った。
「君たちを呼んだのは、まず、サボテンの運搬についての打ち合わせだ。マイル君、どのサボテンを持ち帰るかは決まったかな?」
「はい。シンラ教授の研究に必要なタラハイ種、それに関連したマツミ、他に小さめでわが国では手に入らないこれらをいただければと思います。」
マイルは手元の資料をキースに渡した。キースはそれを確認して言った。
「うん。妥当だな。もうひとつ、ムコヤイも入れると良いだろう。あと持ち帰る方法についてだが、エイト君のバッグに入れると言っていたな。」
「俺のマジックバッグは、ほぼ無制限で物を保管することができます。なのでそれで全て持ち帰ります。」
キースは俺の言葉を聞いて、タルスを見た。タルスは頷いてマイルに話し始めた。
「サボテンを持ち帰る為には、特殊な鉢に植え替えなければなりませんね。それはこちらでやりましょう。加えて、貴方がたがスムーズにバッグに入れられるよう、形を保つ保護魔法をかけておきましょう。こういう作業は我々のほうが得意ですので。」
なるほど、それでタルスはここにいた訳か。ほんと良い人、いやエルフだ。
マイルはタルスの言葉に安心したようだ。たくさん持って帰れることに感謝し、深く頭を下げた。
「タルスさん、ご配慮ありがとうございます。よろしくお願い致します。」
キースはそんなマイルを満足気に見ていた。
「マイル君は本当に優秀だ。ここで真剣に学び、それを持ち帰ることでシンラ教授も喜ぶだろう。どうだ、またここに来るというのは?君ならいつでも大歓迎だよ。」
キース、大絶賛だな。マイルもそこまで認められたら嬉しいだろう。俺はうんうん頷きながら聞いていた。
キースはマイルの資料を机上に置き、俺たちをひたと見据えて言った。
「ところで、君たちに一応報告だ。私事で申し訳ないが、私はここにいるタルスと結婚した。」
……
…………
………………けっこん?
なんだ?今、結婚と言ったか?
人間と!?
エルフが!?
結婚!?!?
そんなの今まで聞いたことないぞ!ほら見ろ、あのいつも冷静なマイルも目を見開いたまま固まってるじゃないか!
そんな俺たちを気にする風でもなく、キースは続けた。
「結婚と言っても、もちろん別居婚だ。お互い生活があるからな。期限は私が死ぬまで。」
「いやいやいや、人間とエルフが結婚なんて聞いたことないんだけど!!!」
硬直が解けた俺は思わずつっこんだ。キースは表情も変えてない。むしろいつもの厳しい表情のままだ。これが本当に結婚というものの報告なのか!?
「ああ、知っている。だがこのタルスが、私の態度が面白いからずっと側に居たいというんだ。それなら私としてもエルフの子を産むという研究をしてみたく思ってな。しかし、今からだと高齢出産だからそれもチャレンジだ。」
「貴女なら大丈夫ですよ。私がついていますから。」
キースの手を取り優しく微笑むタルスに、彼女は冷たく言い放つ。
「別に研究の時にだけ居てくれればそれでいいんだが。プライベートまで過剰な邪魔をしたら蹴り出すぞ。」
「もちろん分かっています。マイレディ。」
キースの手の甲にキスをするタルス。いやお前、こんな変人で傲慢な奴のどこが良いんだ?
「教授、おめでとうございます。どうか末永くお幸せに。」
いや、マイルもなんで目が潤んでいるんだ。
「まあ、そういうことだ。じゃあ明日朝にまたここで。」
俺たちはキースの執務室から退室した。
……なんか疲れたんですけど。
「エイトさん、お祝いは何がいいですかね?」
「別に要らないんじゃね……?」
「でも、エイトさんがおふたりを取り持ったんですよ?」
「ゔっ………」
いや、そうなるのか?
それはまた明日考えようと、俺たちはそれぞれの部屋へと戻るのだった。




