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page.128

街中に突然現れた巨大なユニコーンに、皆驚愕の声を上げ、視線を向けていた。しかし今はそんなこと気にしてる場合じゃない。


「ハク、こんなところで呼び出してごめん。でも皆が危ないんだ。ファルナートへ急いでくれ!」


俺の必死な様子を見て、ハクは大きな声でいななき前足の蹄を鳴らした。早く乗れと言っている。俺はハクに飛び乗り、すぐさまハクは駆け出した。


いつものような、のんびり道草しながら目的地へと向かうハクじゃない。その巨体で大地を踏み鳴らし、息を上げて走っている。ハクの大好きな仲間のことを心配してくれている。


普通の馬なら全力で休みなく走ってまる2日かかるような距離を、ハクはいつもよりも早く、30分くらいで走破した。森を突き抜けるように飛び出すと、そこはファルナートの湖岸だった。


……なんだこれ……


遥か沖から砂浜の辺りまで、ジェルフィッシュが埋め尽くしていた。その中に赤いスジを輝かせるレッドヒルも大量にいる。


「お前、エイトか!」


誰かの叫びに振り返ると、冒険者のゲルンドたちが居た。


「ゲルンド!どうなってる!」


「結界が張られているんだ!砂浜に近づけない!」


砂浜には逃げ遅れた人たちが居る。なのに冒険者たちは救助に近づけないのだ。



「うわぁ!来るな!あっちへ行け!!」


「ジェリコ!早く逃げて!」


聞こえてきた大きな声にそちらを見ると、ジェリコが棒を振り回しながらレッドヒルを追い払おうとしていた。レッドヒルは徐々に大きく形を変えながら彼に迫っている。


ジェリコはメイリンたちをかばうようにしている。ウィンベルトは少し離れているが、同じように棒を手に取って陸に上がってくるレッドヒルを追い払おうと戦っていた。


ジェリコの前にいたレッドヒルがジャンプした!彼を覆い尽くそうとするかのように、それは大きく身体を広げていた。


「ジェリコ!」


俺が彼の名を叫んだ瞬間、ハクは加速した。結界を突き破り、レッドヒルとジェリコの間に割って入り、レッドヒルを弾き飛ばす。


「ハク!エイトさん!」ジェリコたちの声が聞こえる。


ハクは銀のたてがみを逆立て、そのユニコーンの角は震えながら強い光を発し始めた。


俺はハクから飛び降りて、皆に駆け寄った。良かった、全員無事なようだ。


「エイトさん!怖かった……」


泣いているヒマリを、ユアンが庇っていた。

皆に下がるように言い、俺はハクの元へと戻る。

ハクはユニコーンの力で、レッドヒルが陸に上がらないよう抑えこんでいるようだ。


「ハク、大丈夫か!?もう時間が……」


ハクが人間界に顕現できるのは1時間が限度と聞いている。もうあまり時間がない。

俺は鋼のソードをウィンベルトに渡し、銀の剣を手に持った。


「ウィンベルト、皆を頼む。」


「分かった、剣があればこっちのものだ。」


そう言いニヤリと笑うウィンベルトだが、服が大きく破れて血がにじんでいる。レッドヒルに襲われたのを無理やり引き剥がしたのだろう。顔色も悪い。


ハクはたてがみと角から光が消える直前、湖に向かいまっすぐ強い力を放った。大きく水が割れ、それは沖の小島までの道を開いた。

そしてハクは力尽き、その場にどう!という大きな音を立てて倒れた。


「ハク!ハク!大丈夫か!」


俺は倒れたハクに駆け寄った。息が荒い。全力を使い果たしたようだ。


その時、俺たちの側に彼らが現れた。


「ダイハクリョク、よく頑張ったな。帰って休め。」


彼が指を鳴らすと、ハクの姿はかき消えた。


「ムルーア!皆!」


そこに居たのは、戦いを司る紅のエルフたち10数名。彼らのルビーのように輝く髪がまるで燃えているようだ。


「エイト殿。ダイハクリョクがあなた方の危機を伝えてきました。ここは我々に任せてください。」


エルフたちは結界を解除し、逃げ遅れた人たちを逃がすと同時に、大量のレッドヒルの駆逐を始めた。


そして俺はハクが力を放った先を見た。皆でこの国に来た初日、宿泊した貸別荘から見えていた小島だ。

それは今、ハクが開いた道の先にぽっかりと大きな口を開くように見えている。まさか…あんなところにダンジョンの入り口が!?


ムルーアが側に来た。


「あれはダンジョンでしょうか。湖の下に入り口があるとは……」


その時、レッドヒルの駆逐をしていたエルフたちの中からひとり、ダンジョンに向かい駆け出した。


「おい待て!私たちはダンジョンに入れないのを忘れたのか!」


ムルーアが呼び止めるが、そいつは止まらない。ちらりとこちらを振り返ったその紅蓮の髪。あの魔族の顔だ!

紅い髪のエルフたちの中に紛れ込んでいたのか!!


俺は奴を追って走り出した。俺をおびき寄せる為だけに皆を傷つけようとしたこと。絶対に許せない。



俺たちの姿は、そのダンジョンの中に吸い込まれるように消えたのだった。


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