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page.127

俺とリッチは隣のダンジョンに移動した。


「ふむ、この辺りでよかろう。」


「ここでいいんだな?」


リッチは12階層を拠点にするようだ。俺は彼の荷物を地面に下ろした。こんなの持って歩くには重すぎたので、途中から風魔法で浮かせて運んだわ。


「ここは仮住まいだ。夜が来たら他のダンジョンに移動する。我はこのエリアの元締めなのでな。良さそうなところを皆が用意してくれるだろう。」


エリアの元締めってなんだ?ダンジョンボスの組合でもあるのか?

俺の困惑をよそにリッチは嬉しげにいそいそとマットレスを広げ、その上にちょこんと座った。


「どうぞここへ。お前も座ると良い。」


マットレスをぽんぽんしながらそう言われても、さすがにリッチと一緒に座る気は無い。俺はそこにあった岩に腰を下ろした。


「荷物を運んで貰ったのに、何のもてなしも無くてすまぬな。」


「別に良いよ。困った時はお互い様だ。」


いや、何のお互い様だろう?俺は言いながら変な感じがした。


リッチは俺をじっと見て言った。


「……噂よりも、まともな奴に思えるのう。」


「噂?噂って何だ?」


「いやなに。勇者エイトという奴は、ダンジョンの中でいきなり叫び出してはばったり倒れたりするという、かなりの奇行があると言う話でな。皆、気味悪がっておるよ。」


ダンジョンの奴らに気味悪がられるって何だよ。俺、こいつらに怪しい奴と思われてんのか。そもそもそれは全部アドのせいなんだぞ!


「そうだ。礼と言っては何だが、何か我に聞きたいことは無いか。リッチと話すなんて珍しかろう。」


「聞きたいことなんて……あ、そうだ。最近この辺りのダンジョンでなんか変な事無かった?」


ダンジョンに魔族が出たら、さすがにこのリッチは気づくだろう。彼がもし何か知ってたら助かる。


「変な事?いきなり人間が100人も来たことかのう。何故我の居る場所が分かったのだ。お前、知っているかの?」


「なんで質問返しされてるんだよ!?俺は通りすがりだっただけだ。」


リッチは首を傾げていた。なんかリアクションが普通すぎて調子狂うな。


「お前は変な事を探しているのか?ふぅむ、なら手下に頼むか。ゴーストとスケルトンで地上を探らせれば何か分かるだろう。」


「いやそれお願いだからやめて。」


ん、地上?


「なんで地上を探るんだ?」


「我々の世界では変な事など無い。なら、それは地上にあるのでは無いか?まあ、お前の言う変な事と、我の言う変な事は違うかもしれんが。」


うーん、リッチの言う事も一理ある。

俺はダンジョンに異変があると思い、ひたすらダンジョンの探査をしてきた。しかし、それが見当違いだとすると……


「いや、探らなくていいよ。ゴーストやスケルトンがウロウロしたら皆怖がるから。じゃあ帰るからゆっくり寝てくれ。」


「そうか?また用が有ったら来るがよい。この都市の、どこかのダンジョンで声をかけてくれたらすぐに迎えをよこそう。皆にお前に手を出さないように言っておくが、出会い頭に倒さんようにな。」


「ああ、分かった。ありがとう、おやすみ。」


俺はダンジョンを出て、森の中を歩いていた。異変は地上に、か。何か変わったことって……


『今年はジェルフィッシュがやけに多いみたいだ。』


そう漁師たちが口々に言っていた。宿の主人もだ。


まさか!これがあのワーウルフ大量発生事件の再来なのか?あの事件は、俺をあのダンジョンに呼び寄せるために魔族が引き起こしたことだった。


嫌な予感がする。まずは冒険者ギルドに情報が入っているか聞かなきゃ。俺は森から街の中心部に向かって走り出した。



俺は走ったままの勢いで、ギルドに転がりこむようにして飛び込んだ。皆びっくりしているがそれどころじゃない。


「チェスター!ジェルフィッシュだ!!」


受付にいたギルド職員に叫ぶように言った。


「エイトさん!?あ〜びっくりした。何です?ジェルフィッシュがどうかしたんですか?」


「ジェルフィッシュに何かおかしなことは無いか?」


俺の剣幕に彼はびっくりしている。ジェルフィッシュなんて湖畔のこの都市じゃ珍しくはないからだ。


「確かに今年は数が多いと聞いていますが。どうやらファルナートの方で大量に発生して流れてきてるみたいですよ。」


「ファルナート!?」


ファルナートには皆が居る。シュノーケリングをする予定だと、ウィンベルトが言っていた。


にわかにギルド職員たちが騒がしくなった。他のギルドから連絡が入っているようだ。


「何!?レッドヒルだと!!」


レッドヒル?あれは危険だ。ほぼ透明な身体に赤いスジが入っているモンスターで、人に取り付いて血を吸い、命を奪うこともある。


話を聞きにいっていたチェスターが戻ってきた。


「……エイトさん。ファルナート沖でジェルフィッシュに紛れたレッドヒルが確認されたそうです。ファルナートのギルドが応援を要請していますが、あの辺りには今ほとんど冒険者が居なくて……」


俺はそれを聞くなりギルドから走り出た。

皆が危険だ!早く行かなきゃ!!


俺はエルフの指輪を取り出し、指にはめてハクを呼んだ。


「ハク、来てくれ!皆が危ない!!!」



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