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俺はキースの馬を借り、ダンジョン巡りを開始することになった。
「この馬の名はコンヴィという。大人しいから扱いやすいぞ。」
キースは俺の前に馬を連れてきて、手綱を俺に渡した。黒い馬か。キリッとした佇まいはキースのイメージにぴったりだな。
「じゃあ頼んだぞ、エイト君。」
踵を返し研究施設に戻って行くキースの後ろ姿を見ながら、マイルが俺に話しかけた。
「エイトさん、お気をつけて。お昼には帰ってきてくださいね。」
「マイルは相変わらず世話焼きだな。大丈夫だよ。昼は一緒に食おう。」
俺が探しているダンジョンは、魔族が門番をしていると思われるところだ。意外とこの世界の一番南に居るかもしれない。その可能性にかけてコンヴィを走らせた。
「うーん、ここじゃないか。また、この都市じゃないとかなら嫌だな…」
俺はシェリマルトの時と同様に、マップにバツ印を付けながら考えていた。
「なあ、アド。どう思う?あの魔族が大人しく待っているだろうか?」
『エイト、ズルは駄目です』
「ズルって……ねぇアドちゃん、ヒントプリーズ!」
『ズルは駄目です』
「そうか、答えられないことなんだな。ごめん、無理言って。」
アドはしばらく無言だったが再び語り出した。それは俺にとって予想外の内容だった。
『エイト、ヒントならもう出ています』
「えっ、アド!出てるってどういうこと!?」
『ズルは駄目です』
「またそれか〜。むー分かった、自分で考えてみるよ。」
俺はマップをバッグにしまった。俺の目の前にはまさにダンジョンという入り口がぽっかりと開いている。
「じゃあさ、とりあえずキースの依頼で何か探さなきゃだからこのダンジョンに入るよ。」
『あの変な人間ですね。視点は嫌いじゃありません』
「なんかお前に似てるしな。」
俺が笑いながら言うと、アドの奴、最後にこう言いやがった。
『ふぅん。やらかした相手にですか』
「ちょっ…それ言うな!だいたい、やらかしていたとしても俺じゃないし……あれもどうだか分からないんだから!!」
とりあえず俺はダンジョンに入り、1〜5階層まで見て回った。
ゴブリンが出てきたのでバッサバッサ倒したが、キースの説だと俺たち親類かも知れん。だったらごめんな、と雑に謝っておいた。
アドはここでは選択肢を出してこないのか?まあ今までも毎回では無かったか。
俺は冒険者の落とし物と思われる銅硬貨を数枚と刃の欠けた短剣を拾い、保管用と渡された袋に入れた。
しかしこの国は世界の南にあり日常的に暑いのに、ダンジョンの中は暑くない。というか、どの国のダンジョンでも同じような温度な気がする。なんでだろう。
あ、あれは何だ?
ランプの灯りに照らされた先には、スモモくらいの大きさの黒い物が落ちていた。なんか見たことある物に似ているような。俺はそれも袋に入れて持ち帰った。
施設に戻り食堂に行ってみたら、ちょうどマイルが食事中だった。
「あ、エイトさん。お帰りなさい。」
いつもの穏やかな笑顔だが、なんだか疲れているようだ。
「マイル、大丈夫か?」
定食のおぼんをマイルの向かいに置きながら座る。
「大丈夫です…ただ、シンラ教授の仮説が思ったほど合致しておらずで、また数値の取り直しになりました。やはりダルメル王国で入手できたサンプルとは違いますね。」
「でもサボテンだろ?そんなに違うのか。俺にはさっぱり分からないけど。」
「そうですね。でも効能を有効化できるよう、少しでも研究を進めてから帰らないと。」
真面目過ぎるマイルは、なんとか研究を完了させて帰りたいようだ。
「マイル、完璧を目指すとキリが無いよ。マイルは教授とは違う。できる範囲で頑張ろう。サボテンなら俺のマジックバッグでいくらでも持って帰ってやるから。」
マイルは俺の言葉にふっと力を抜いたようだ。
「ありがとうございます。エイトさん。そうですね、できる範囲で。」
「そうそう。気楽に行こう。」
俺たちはキースの執務室へ行った。ダンジョンの収穫物を渡す為だ。
「キース教授。とりあえず拾ってきた物を渡しておくよ。」
「ああ、早速ありがとう。」
俺は落とし物と何かの黒い物を机上に置いた。
「なんだ、これは?」
キースはその黒い物を手に取って真剣に見ていた。
「なんだか分からないけど拾っておいた。まずい物か?」
「いや…これは良い物だな。新たに研究チームを準備しなければならない。たぶん、これは何かの生命体だ。」
俺は嫌な予感がした。あの形状…まさか……
「教授、マイル。それ何か箱に入れて出さないようにして!俺ちょっと行ってくる。すぐ戻るから!」
俺は近くの森へとダッシュし、ハクに来てもらい、彼の主人であるエルフに呼びかけた。
「ムルーア!聞こえる?」
『エイト殿、お久しぶりです。聞こえてますよ。』
「ムルーア悪い、急いでいるんだ。誰か蒼のエルフと連絡つく?もしかすると、きゅうりと同類の植物モンスターの種かもしれないものがあったんだ。」
『なるほど、それは危険かもしれませんね。少々お待ちください。』
しばらく待っていると、ハクの後ろの空間が歪んで、見知った顔が見えた。蒼のエルフのタルスだ。
彼は押されたように出てきてよろけてた。
……エルフってよろけるんだ。
「ちょっと長!思いっきり押さないでくださいよ。」
やっぱり押されてたんだ。
『あっはっは!あたしゃ今忙しくてね。タルス頼むよ。エイト、タルスに聞いてみな。』
「アマルガリタか!ありがとう。タルス、久しぶりだな。」
タルスはなんとか転ばずにしっかりと立ち、俺に向き直った。
「エイト殿、お久しぶりです。なにやらきゅうりのような種があったと?」
「まだ確証は無いけど。悪いけど見てくれるかな。」
「分かりました。どちらですか?」
俺は急いでタルスを研究施設へと連れてゆくのだった。




