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「別に難しいことを頼もうという訳ではない。」
教授ことキースは、俺たちにソファに座るよう勧めた。
「私のライフワークである研究の協力だ。私は、全ての亜人種はひとつのものから派生した存在ではないかと考えている。」
「えっ!まさか…俺たちとあのモンスターたちの祖先が同じってことですか?」
俺とゴブリンやオークが親類ってこと?やだなそれ。仮説だとしてもそんなの発表したりしたら、世界がひっくり返るんじゃないのか?
「そうだ。それを証明する物をダンジョンで拾ってきてくれ。」
「いや突然無茶振りが過ぎる!!!」
俺は思わずつっこんだ。そんな物が都合良く落ちている訳がない。キースは俺の剣幕に少し眉をひそめた。
「何故だ?エイト君は冒険者だろう?ならダンジョンにはどんな物があるか、どこに落ちているか分かるはずだ。」
「それどんなイメージ。」
プロならなんでもできるってか。無論そんな訳がない。
俺のツッコミにキースは納得できないという風に、ソファにもたれかかり両手を広げた。
「エイト君はわがままなんだな。」
「いやいや、無茶言ってるのはそちらでしょ!」
何だこの話の通じなさ……キースの頭の中には彼女の中の常識しかないのか。俺は頭を抱える。もしアドが人間だったらこんな感じなんだろうか?
「ではエイト君こうしよう。何でも良いから普段落ちていない物があれば拾ってきてくれ。それを見て、こちらで要不要を判断する。もちろん何も持って帰れなかったといって、追い出したりはしないから安心してくれ。」
「……まあ、それくらいなら。」
俺はため息をついた。やっと通じる話になった。
「エイト君、世界は神秘に溢れているんだ。私はその欠片だけでも解き明かしたい。」
「あの〜教授?それが何か役に立つんでしょうか?」
俺は恐る恐る聞いた。するとキースは俺をぎろっと睨んだ!怖っ!?
「そんなもの分からん!研究とはそんな基準では無いのだ!役に立つ立たないで切り捨てていっては、世の中面白くないではないか!」
いや、これ研究というよりオタクの趣味じゃないのか?
黙って話を聞いていたマイルが口を挟んだ。
「エイトさん。疑念を持つことは一概に無駄とは限りませんよ。人にも魔力の有無、その大きさが違うということもあります。我が一族リヴァリエルがそうです。何故、魔導家の我らの魔力が多いのか?我らの血を引く者しか魔力を持たないのは何故なのか?」
マイルは俺をちらりと見た。そして続ける。
「僕はそれを知りたいとは思いますが、知ったからと言ってどうなるとも思いません。たぶん、教授が言っているのも同じことなのかと推察します。」
俺は風魔法が使える。ということは、俺は三大魔導家のどこかの血族となる。しかし、俺はどこかで拾われた子らしい…というのが俺の中にある勇者の記憶だ。
まあそれは考えても仕方がない。
「分かりました……というかまだ分かりませんが、何か変わった物が有ったら拾ってきます。ということで良いですね。」
俺はキースを見て言った。キースは何故かきょとんとして俺を見返したが、ふっと笑顔を見せて言った。
「ああ、頼む。後で君の入館許可証と部屋の鍵を渡そう。マイル君の部屋で待っていてくれ。」
俺たちは教授の執務室を退出し、マイルが住んでいる部屋に移動した。
「あの教授、強烈だな〜。」
俺はベッドに腰掛けて、天を仰いだ。
「研究者は大なり小なりあんな感じですよ。まあ、教授があんな考えを持っているとは思ってなかったですが。」
マイルは俺の隣に腰をかけて、苦笑しながら言った。
「エイトさんは信頼できる……そう思って話した。僕はそんな気がします。」
「そうかな〜?」
そういえば、以前キースと呑んだ時どんな話をしたっけ?なんか彼女は落ちこんでいたような気がするけど。
名前も知らない彼女に付き合い、記憶が無いほど呑みすぎたあの日……気づくとベッドの中、横で眠っていた彼女を思い出してしまい俺は瞬間赤面した。
「エイトさん、どうしました?」
「いやいやなんでもない。なんでもないから!」
はぁ~、厄介なことを引き受けてしまった気がするけど、とにかく明日からダンジョン探査だ。
ここは早くきり上げて、とっとと都市北部へ移動しよう。




