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俺たちは宿の扉のところで皆に見送ってもらった。
森まで来ると、また戻るのが遠いからだ。
「来週の始め、この子らを連れてファルナートへ行くからな。3日間居るから、間に合うようなら来いよ。」
いつものように、ニヤリと人の悪そうな笑みを浮かべながら言うウィンベルトに、俺もできるだけニヤリと笑い返した。
「ああ、分かった。できるだけ行くようにするよ。」
1週間後か、急がなきゃな。
ウィンベルトには俺の分としてたっぷり宿代を渡してある。それをさも当然のように全額受け取りやがった。相変わらず遠慮というものがない奴だ。
そこから彼らのリゾート費用も払ってもらうからいいんだけど。
俺とマイルは街外れまで馬車に乗り、森に入ってからハクに来てもらった。
「ハク!会いたかったよ。」
マイルもハクにメロメロだ。そりゃもうハクは可愛いから仕方がない。ハクも久しぶりに会うマイルに嬉しそうだ。
「今日はふたりだから馬車は要らないかな。このまま乗ろう。」
「いいですね。一度ハクの背中に乗ってみたかったんです。」
俺たちは魔法でハクの背中に飛び乗った。よじ登れる高さじゃないからな。せっかくなのでマイルに前に乗ってもらうことにした。
「凄いですね。エイトさんはいつもこの光景を見てるんだ!」
マイルは初めての体験に嬉しそうだ。
セレチャルトに近づくと、森の様子が変わってくる。この辺りだけ熱帯雨林のようになっているのだ。
雨がぽつぽつ降り出したかと思うと、一気にスコールになった。
「わは、すげー!」
ハクの背中でずぶ濡れになるかと思いきや、ハクのおかげで雨まで避けていく。俺たちは周りに降っている豪雨を見ながら、その不思議な光景に笑い声をあげていた。
あれ…まてよ。俺はこの辺りのダンジョンも探査しなきゃならないんだ。後で雨グッズのチェックをしておこう。
熱帯雨林を抜け普通の森のエリアになると、セレチャルトはすぐだ。
俺たちはハクから降りて、お礼のリンゴをあげた。
「エイトさん、ぜひ研究施設に来てみてください。」
マイルが笑顔で誘ってくれた。
うーん、なんか堅苦しそうだし、こ難しいことを言われてもやだしなぁ。
「そう言わずに。教授もエイトさんに会ってみたいと言ってるんです。」
「うーん……マイルがそういうなら、挨拶だけしに行くよ。」
「良かった!じゃあ行きましょう。」
「待った!先に冒険者ギルドだけ寄らせて。」
危ない危ない、最新の都市マップとダンジョンマップを貰うのを忘れるところだった。
俺はマイルが呼び止めた馬車に乗り、初めてこの国の研究施設へと向かった。
馬車が向かう先にあるその場所は、噂通りこの国の西南の端にある砂漠地帯に寄り添うように建てられていた。2階建てかな、広そうな建物だ。
その白い建物に、マイルの入所許可証で入る。彼は俺を教授の部屋へと案内した。
あのシンラ教授と共同研究してる人だ。彼みたいに研究しか頭に無い変人だろうか……
「教授、マイルです。戻りました。エイトさんも一緒です。」
微かに「どうぞ」という声が聞こえた。ちょっとドキドキしながら、マイルに続いて部屋に入った。
立ったまま読んでいたらしい書類を片手に、教授はこちらを振り向いた。
「君がエイト君か。初めまして、私はキースだ。……ん?君とはどこかで会ったかな?」
……この顔!そしてこの男前な話し方って……
俺は完全に硬直していた。
この目の前のスタイル抜群の超絶美人は、以前首都の酒場で意気投合して酔いつぶれ、目が覚めたら宿のベッドで隣で寝てた人!!!
……と俺の中の勇者の記憶が焦りながら言っている!
「いいいいいえ!人違いです!!」
ぶんぶん首を振る俺。だって実際俺じゃないし。キースは目の前まできて、俺の顔を覗きこむようにしてきた。やめてヤバい近い!
「……そうか、そうかも知れないな。改めて、私はここの研究施設の施設長のキースだ。よろしく、エイト君。」
笑顔を浮かべて手を差し出してくる。俺も手を差し出して握手した。あ、手…柔らかい。
「マイル君に聞いたが、君はこの国のダンジョン探査をしているようだな。マイル君が帰るまでに探査を終えるのは厳しいだろう。」
キースはマイルを見て頷いた。なんだ?
「君はここに滞在するといい。マイル君と同じように2階の部屋を使えばいいし、食事は職員用の食堂もある。移動には、私の馬を貸してやろう。」
「ええっ、いいんですか?ありがとうございます!」
なんか話がうますぎる気がするけど、これはありがたい。何故ならこの都市は、研究施設がある南側の方がダンジョンが多い。
こちら側から始めて、残った北側をチェックするのが効率が良い。
「構わんよ。その代わり……」
彼女は艶やかな唇を笑みの形につり上げた。
えっ、怖っ!!何を言われるんだ!?
笑みを浮かべてはいるが、目は笑っていない。
俺はキースに見つめられたまま、また身動きが取れなくなっていた。




