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翌朝、朝食後に森へ行きハクを呼び出した。
シェルナートまで行くのに馬車にするかハクに送ってもらうかを皆に聞いてみたら、全員一致で「ハクがいい!」だったからだ。
皆は久しぶりに会ったハクに大興奮して、リンゴやオレンジをあげまくってた。ハクはジェリコが大好きなようで、彼の姿を見つけて頭をすりすりしに行った。
「おーハク!お前は俺が好きか!」
ジェリコは大喜びでハクの顔をガシガシ撫でまわしている。
「あ~ジェリコ、ズルい!」
「ぬははは!ハクは俺のものだ!」
いつものように楽しそうな皆につられて、俺も笑顔になった。
「よし、皆。シェルナートへ行くぞー!」
「「おー!」」
皆の元気な声が森に響き渡った。
はりきったハクのおかげで、あっと言う間にシェルナートへ着いた。皆でまたリンゴをあげてハクを見送り、俺たちはシェルナート入りした。
「よし、さっそく港へ行くぞ。」
俺たちは馬車を拾い、そのまま湖にある港へ向かった。
「わ〜広ーい!船がいっぱいあるよ!!」
いつもながら一番に声を張り上げるのはメイリンだ。
ここはファルナートと同じように湖に面した都市だが、あちらのような浜辺は無く、代わりに多くの漁船が停泊している港がある。
ここでは漁船から直接魚を買うこともできるし、アクティビティとして掴み取りや釣り堀もなんかもある。
皆は口々に船の大きさや色について話をしたり、船から手を振ってくれる人に手を振りかえしたりしていた。
「よし、まずお昼はレストランで食おう。その後、宿に荷物を置いていっぱい遊ぶぞ。」
ここでは漁師たちがやっている宿が多い。新鮮な魚料理を出してくれるし、取ってきた魚貝類を調理もしてくれる。
その漁師宿に荷物を置いて、ひと息ついてから、俺たちは港に遊びに出かけた。
まずは魚の掴み取りだ。
「ええ…僕、できないかも……」
ユアンの腰が引けている。生きた魚を触るのは初めてだそうだ。
「ユアン大丈夫だって。私、先にやってみる!」
メイリンが水の中に入って狙いをつけている。赤くて掴みやすい魚を見ているようだ。
「メイリン、頑張ってー!」ヒマリが声をかけている。
「任せて!……えっあれ、こいつ早い!よし、捕まえた!……あ~ダメ!ぬるっとして逃げられる!!」
「よし、こっちだ!」
ジェリコが網を差し出して、逃げようと魚をうまくキャッチした。
「メイリンとジェリコ凄ーい!」
「じゃあ僕もやってみます!」
ユアンが水の中に入っていって、黄色い小さめの魚を掴もうとして逃げられた。
「難しい〜〜〜。」
凹むユアンに、ジェリコが変わるよと言い、ヒマリも入っていった。
「お魚さん取れたよ〜。」
すぐに大きな魚を抱えるようにして捕まえて、ニコニコしているヒマリに皆で唖然とした。
「ヒマリ、意外な才能あるんだな。」
「わあ、ヒマリ褒められた〜。でもユアンがヒマリのほうに追い込んでくれたんだよ。」
ヒマリはユアンににっこり笑いかけて、ユアンが真っ赤になっていた。
「どういたしまして……」
うんうん、若い者はええのう。俺はあたたかい目で彼らを見守っていた。
取った魚は一旦宿に置きにいって、次は貝掘りだ。ここは生で食べても美味い貝がたくさん取れるのだ。
皆、掘るのに夢中になった。俺なんて制限時間ギリギリまで掘って掘って掘りまくった!
「エイトさん、時間ですよ。」
はっ!ジェリコに声をかけられ我にかえった。俺の横には貝の山。見るともう皆は帰る準備をしている。
「兄さんが一番真剣だったね」と係の人に苦笑されつつ、代金を支払った。
その貝も宿の人に預けて、皆で近くを散歩した。
いつの間にやら夕方だ。夕日が湖にキラキラと反射していて、皆でその美しさに息を飲んだ。
「きれいだね〜。」
その光景にヒマリが目を輝かせて言うと、皆も頷いていた。
近くの温浴施設に行ってから宿に戻ると、俺たちが取った魚と貝がきれいに調理され盛り付けられていた。
うわ!これ舟盛りってやつだ。
「上手に飾られてますね。」「食べるのもったいないね。」
そう言いながも食欲旺盛な若者である我ら、早速いただくことにした。
「いただきまーす!」
「そこの君!ちょっと待ったぁ!」
魚を皿に盛り、口に運ぼうとしたジェリコに待ったをかける。
「なんですかエイトさん、いきなり。びっくりしたぁ。」
「ふっふっふ。今日は皆の食事に魔法をかけてあげよう。」
俺は颯爽と、高級品の塩と、醤油に似たジャイアントビーの蜜を取り出した。念のため、蜜はマイルに加熱殺菌してもらっている。この場に彼は居ないのが申し訳ないのだが。
俺は皆の小皿にそれぞれ塩と醤油を入れた。
「諸君、これをつけて食べてみたまえ。」
「じゃあいただきます!」
ジェリコが一番に、魚の切り身に塩をちょんちょんとつけて口に入れた。
「なんだこれ!うっま!!」
「私はこっちをつけてみようっと。」
メイリンが貝を醤油につけて、言葉を失っていた。あのおしゃべりで早口のメイリンがだ。
皆夢中で食べている間に、俺は海鮮丼の用意をして、醤油をかけて皆に振る舞った。
「俺もいただきまーす!」
ああ…
刺身だ……
海鮮丼だ……
美味さに涙が出そうだ。ワサビがあれば完璧だが、そこまで贅沢は言わない。
皆で満腹になるまで食べて、行儀が悪いがそのまま寝っ転がった。
「あー俺もう食えない。」
ジェリコが幸せそうに呟いている横で、ユアンが俺に尊敬するような目を向けてくる。メイリンとヒマリも同様だ。
「さすがエイトさん。いろんな食べ方を知っているんですね。」
「ほんとー、マイルにも食べさせたかったね。」
「今度はマイルも一緒に来ようね。」
俺たちは寝る前までいろいろ話をした。
「図書館にはダルメル王国には無い本がたくさんあるのよ。だからついつい私たち読みふけっちゃったの。」
メイリンがそうしていた理由を教えてくれた。
「皆、それは分かるけど、せっかく違う国に旅行に来ているんだ。本は夜に読んで、昼間はあちこち散策したほうがいいよ。街を歩くだけでも、国の違いは分かるんだ。」
「そうだな。エイトさんの言うとおりだ。皆、帰ったら地図を見ながら首都の探検をしよう。レポートにも書けるしな。」
ジェリコが皆にそう言ってくれたので安心した。先日はちょっと様子が変だったけど、いつものジェリコだ。
おしゃべりはそこでお開きにして、俺たちはそれぞれゆっくりと眠りにつくのだった。




