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俺はその夜、シェリマルトの酒場で軽く呑んでいた。
「旅の方ですか?珍しいな。」
振り返ると、そこにはグラス片手の中年男性が立っていた。服装見ると仕事帰りの採掘作業員かな?
「ああ、ダンジョン探索でね。」
俺はレタンと名乗るその男と呑むことにした。
「何か変わったこと?いや、ここではいつも同じですよ。もう鉱石もほとんど見つからないところを調査して掘り返して…もう掘り尽くしたんじゃないかな。皆そう言ってる。」
レタンはぐいっとグラスをあおり、おかわりを頼んでいた。
「一時期はドワーフも協力して採掘していたけど、全然来なくなった。見切ったのか、それともあちらも大変なのか。」
「大変って、ドワーフの国に何か起きているってことか?」
そのレタンのひとりごとのような言葉に、俺は尋ねてみることにした。
「ん?いや、何か揉めてるらしいとは聞いた。生産品のことでどうとかこうとかって。」
ドワーフの中でもあれを良しとしない奴がいるんだろうな。だってなんかヤワな作りでさ。数年持つか持たないかって気がするんだよな。
「ともかく、ここではもう仕事も無いってことさ。ダンジョンなら腐るほどあるがな。違う仕事を探しに皆出て行っちまったし、俺もそろそろ潮時かと思ってる。」
そうか…あの魔族がここを舞台にすることは無いような気がする。アイツは芝居がかったことが好きだ。寂れゆく街を選ぶことはないだろう。
「レタン、この辺りでオリハルコンが取れたってことある?」
「オリハルコン?ああ、昔は取れたこともあるそうだぞ。と言っても100年は前の話だろうよ。今見つかったら一攫千金だ。」
なんとなく聞いた俺の言葉に返答し、「じゃあな」とレタンは去っていった。
彼の話もあり、あの魔族が現れるのはきっとここじゃないだろうと言うことが納得できた。明日移動しよう。
俺は家に戻って地図を広げた。
うーん、ファルナートは後回しだな。あそこは浜辺で遊ぶしかないリゾート地だ。ダンジョンもあの辺りはほとんど無かったはずだから。
「一旦サルティオルトに戻るか。皆の様子も確認しなきゃだし。」
首都に戻って、それからセレチャルト、シェルナートの順に探査するとするか。
しかし、この都市名ほんとイヤ。似たような名前でややこしすぎるだろ。いっそ略して覚えておくか。ファルとかシェルとか…変わらんやろ!
翌日俺はサルティオルトの拠点であるウィンベルトの宿に戻った。
「わー!エイトさんだ!皆、エイトさん帰って来たよ!!」
メイリンが抱きつかんばかりに喜んで大声を上げている。5日しか離れていなかったのに。
「エイトさん!お帰り。仕事は終わったの?」
ジェリコがそう言い、皆も嬉しそうにしてくれる。
「いや、まだだ。ちょっと戻ってきただけ。」
「なーんだ、そうかー。」
ウィンベルトが入ってきた。賑やかになったから気になったらしい。
「おう、エイト。戻ったか。すまんがちょっと来てくれるか。」
「ああ、すぐ行く。」
俺はウィンベルトの部屋に入った。さすがは元剣士だ。彼の使っていた剣が数本壁に飾られている。いかにも年季の入ったものばかりだ。
「彼らのことだが、2日ほどはこれまでのレポートをまとめていた。その後、図書館に入り浸って勉強ばかりしているんだが……」
彼は眉間を揉みもみしていた。理解できないという感じだ。
「せっかく旅行で来ていてそれでいいのか?彼らは、マイルが勉強しているなら自分たちもすると言う。でもそれが図書館ごもりではな。」
「え?まだ観光もしていないのか?」
「ああ、そうなんだよ。エイト、休みで戻ってきたなら、彼らをシェルナートへ連れていってはどうだ。あそこは彼らの国には無い漁港があるだろう。来週には俺とカレンがファルナートでシュノーケリングとか考えている。どうだ?」
「確かにそうだ。ありがとう、じゃあ明日は彼らを連れて1泊してくるよ。」
ウィンベルトは安心したようにため息をついた。
「エイト、お前もゆっくりしろ。仕事で来ているとはいえ、根を詰めたら倒れるぞ。まあ、子守も疲れるがな。」
「おい、彼らはしっかりしてるぞ。もしかすると、俺よりしっかりしてるかも。」
「ははは!違いない。お前は勉強嫌いだしな。」
「なんだと!……まあ確かに勉強は好きじゃないけどさ。」
俺は明日から1泊旅行だと皆に告げた。
「嬉しいです。」
嬉しそうに言ってくれるユアン、少し日焼けしたかな。
「じゃあヒマリ、お泊りの用意するね。」
ヒマリとメイリンはウキウキと部屋に戻っていった。
さあ、俺も2日間、皆と遊ぶぞ。




