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その夜、俺とマイルはここまでの経費の精算をした。
まず、俺たちは皆に、この旅に参加する条件として一旦3ゴールドずつ預かることにしていた。宿泊費と食費としてだ。
この世界、学生に対して異常に待遇が厚い。学生証があれば、なんでも大人の2割でいけるのだ。
例えば、俺が一般食堂で食べる定食の値段は銅貨5枚。それが彼らは銅貨1枚でOKだという。
俺もここの学生証欲しい!入学しようかしら。
「エイトさんのおかげでほとんど減ってませんね。ひとり50シルバーも使っていません。この国に1カ月滞在しても、彼らのお小遣いも心配ないでしょう。」
基本的にキャンプと自炊だ。ハクのおかげで移動日数が少ないことが一番の節約理由だ。素晴らしいぞ、ハク!
「特にビンスタスではマイルのご実家にすっかり甘えてしまったからな。帰路に寄る時にはお土産持っていかないと。」
「別に良いですよ。あれはアルトが楽しんでいたんですから。」
俺はアルトの顔を思い浮かべた。といっても、マイルと見分けつかないくらいそっくりなんだけど。
「でも、1カ月か…遊んで暮らすには長いよな。皆には何かすることを見つけてやらないとな。」
宿題としてレポートの提出は義務付けられている。しかしそれでは数日を使うだけだろう。
「すみません。なるべく早く研究を切り上げるようにしますから。」
マイルがすまなそうに言うがそれは違う。
「ちょっと待て!それは本末転倒だ。ここにはマイルの仕事の為に来ているんだからな。」
そうなのだ。元々これはマイルの研修・研究の為の旅。シェアハウスの面々は便乗した夏休み旅行なだけだ。
「俺もここでは用事があるし、彼らに付きっきりという訳にはいかない。まあ、友人にも考えてもらうさ。何が良い案があるだろう。」
思い出してみると、夏休みって何してたっけな?宿題して、たまにバイトして、映画見に行ったり、カラオケで友達と遊んで……
うーん、この世界の学生の夏休みの行動が分からん。俺の勇者としての記憶にも特にないな。気にしたことがなかったんだろう。
「マイルは気にせず勉強してきてくれ。……サボテンだったっけ?」
「エイトさんは相変わらずサボテンの話は苦手なようですね。何かトラウマでもあるみたいだ。」
冗談ぽく言って笑うマイルだが、その通り、あれはトラウマなのかも知れん。
「まあ、明日は友人の宿に案内するよ。そこでまた相談しよう。」
俺たちはおやすみを言って、それぞれの部屋に戻った。
「なあ、アド。」
俺は脳内にいるアドに話しかけた。
『エイト、どうしました?』
「これからはこの国のダンジョン巡りだ。ナビゲートよろしくな。ほんと頼りにしてる。」
『そう言っておけば、選択肢が手加減されると思ってます?』
「バレたか。」
俺は苦笑しながら続けた。
「またあの魔族に会うんだ。正直怖いよ。でもお前が居てくれると思ったら、大丈夫な気がする。ヤツもこの本の中の登場人物なだけだと、お前が言ってたから。」
『……そうですね。大丈夫ですよ、エイト』
「あ、なんだか優しい。」
『気のせいでしょう。私はこの本のナビゲーターですから』
アドにもおやすみと言ってから、ランプの灯りを消した。
明日から俺にもまた冒険の日々が始まる。
期待と不安の中、俺はいつの間にか眠りに落ちるのだった。




